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74.長い、長い、なg(以下略)

 その気まずい空気を残したまま、馬車は進み続けて翌日の昼前にようやく目的の登山道近くの村に辿り着いた。

「俺が案内出来るのはここまでだ」

「ああ、世話になったな」

 馬車の御者である、淡い金色の髪が少しウェーブしている若い男に礼を言ってアクターとヒルトン姉妹は村で別れる。

「さてと、問題はその登山道の入り口が何処にあるかって事だな」

「えーと……確かこの村のもう1つの出入り口を出てから歩いて大体5分位だって聞いたけど」

「ならすぐ近くですわね。行きましょうか」


 と言う訳で食料を少し買い込んでからその登山道へと足を踏み入れる3人。

 このソルイール帝国を代表する存在のレラルツール山脈には、東西南北各方面から幾つもの登山道が作られている。

 その西側の登山道の1つがここであり、その封印が解けていない遺跡への最も近いルートになるらしい。

「ここか……結構険しそうだな」

「そうね。ところで思ったんだけど、貴方のその武器は何なの?」

「ああこれか? これは俺の手作りだよ」

 そう言いつつ、アクターは作って貰ったばかりのあの棍棒を姉妹に見せる。

「魔力が無いんじゃ迂闊に武具屋にも出入り出来ないからな。でも武器は調達しなきゃならないと思って考えた結果がこれさ」

「でも……その装備で大丈夫ですか? 防具もありませんし」

「心配するな。俺はこの手作りスタイルでもう15年近くやっているからな」


 ヒルトン姉妹の心配をよそに、アクターは登山道を進んで行く。

 こんな自然環境の中だから当然魔物とのバトルもあるのだろうと思っていたのだが、意外や意外の展開でその登山道の出入り口からおよそ10分程度でその遺跡への入り口が見えて来た。

「こ、ここ……?」

「そうです。冒険者が余りにも多く来るので立て看板もご丁寧にありますね。まぁ……それでも奥まで踏破した冒険者は居ないって話ですし、そもそも先に進むのであれば封印を解かなければどうしようも無いと思いますよ」

 落ち着いた口調で、遺跡となっている洞窟の出入り口に立てられた案内看板とその周辺に点在する足跡を見てティーナが分析する。

「でも魔物に逢わないだけ本当に良かったわよ。遺跡に入る前から無駄な体力は使いたくないしね」

 ドリスが安堵の表情を見せつつ戦闘で遺跡に入って行ったので、彼女に続いてアクターとティーナも遺跡の中に進む。

 そんな3人の背中を、今しがた自分達が進んで来た登山道から見ている鋭い視線がある事には気付かずに……。


「……なぁ」

「何?」

「だるくないか?」

「ええ……確かにそうですね」

 レカーン遺跡に進入した3人は、まさかの中の状態に疲れの色を隠せない状態で一休みしていた。

 それもその筈で、レカーン遺跡の中には3人がうんざりしてしまう状況が待ち構えていたからだ。

 その1つが、事前にアクターがミネットから聞いていた通り「かなり広い」遺跡だと言う事。

 広いと言っても最初の貯水施設であるドベリンコ遺跡の様に階層が分かれている訳では無く、むしろ出入り口から少し進んだ先に分かれ道が1つある以外は1本道なので迷う心配が無い。


 ……のは良いのだが、このレカーン遺跡の入り口の壁に掛けられていたボロボロの案内板を見る限りはかなり長い洞窟だ。

 形としては真っすぐ進んで突き当たりを左へ……また真っすぐ進んで突き当たりを左へ……と四角い渦巻き状の洞窟であり、若干下り勾配を感じられる事から少しずつ地下に向かって進んでいるらしい。

 それで大分進んで来ている筈なのに、何時まで経っても最深部に辿り着ける気がしない。

 まるで、()()()()()()()()()()()()()()()()そんな感覚なのだ。

「なぁ……これがいわゆる封印って奴じゃないのか? 封印があるからこうして何時まで経っても景色が変わらないんじゃないか?」

 このファンタジーな世界だからこんな封印があってもおかしくないだろう、とアクターは水を飲みながら額の汗を拭った。


「でも、出入り口はここを戻れば絶対あるのよ。と言う事は確実に私達は奥に向かって進んでいる筈なのよ」

 確信を持ってそう言うドリスだが、姉のティーナからは何と違う意見が出て来た。

「私はそうは思いませんわ」

「え?」

「さっきから思っていたんですけど、出入り口にこの洞窟の地図がありましたよね? 確かにあれはこの遺跡の最深部に続いているみたいですが、アクターさんのおっしゃる通りここを先程からグルグル回り続けているだけな気がします」

「じゃあ、私達はあの看板に騙されているって事?」


 ドリスの疑問にティーナは首を縦に振った。

「はい……私がこの通路を進んでいて感じたのは、時々()()()()()()()()()()んです。一部分だけ上っていて、また下り始める様なそんな感覚を覚えているんですよ」

(あれっ、それっていわゆるトリックアート的な奴じゃないのか?)

「ペンローズの階段」と呼ばれる、3Dでは表現不可能な「不可能図形」と言われて昔から有名な2Dの表現方法を使った無限階段。

 もしかしたらそれと同じ様な事が今のこの遺跡の通路で起こっているかも知れない、とティーナが言い出した事によって事態は急展開を見せ始める。

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