表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

65/186

64.必殺技・その1

 その遺跡に続く登山道の近くには、登山客や冒険者達で賑わうと言う小さな村があるらしいのでそこで準備を整える計画を立てた。

 それは良いのだが、ニールには1つの不安要素が。

(武器を手に入れたのは良いが、使いこなせないと意味が無い)

 そう、幾ら強力な武器を手に入れたとしてもそれを使わなければ宝の持ち腐れだし使いこなせないと逆に戦闘の時に自分の身を危険に晒す事になってしまう。

 カラリパヤットで長年の武器の経験を積んで来ているとは言え、ある程度は自分専用の武器の扱いに慣れておきたいニール。

 実の所、カラリパヤットでは剣術、棒術、ナイフ術、槍術、体術と言った様々な武器のトレーニングをするのだが、その武器術の中にメイスのトレーニングも含まれているのだ。

 なので棍棒の経験も一応あるものの、小振りな二振りの棍棒スタイルで振るうのは初めてだ。


 ニールが棍棒に目を落としてじっと黙っているのを見て、ユフリーが声を掛けて様子を確認する。

「ねえ、さっきからその武器を見て黙ったままだけど何処か具合でも悪いの?」

「え? いや別に……ただ、俺はこの武器を上手く使いこなせるのだろうかって不安になっただけだ」

 それを横で聞いていたシリルが呟く。

「あの地下2階に居たでっけえのに勝ったってんなら、多分大丈夫なんじゃねえのかな。それにあんたは色々な武器を使うトレーニングもして来てんだろ? 剣とか槍とか。だったら別に心配する必要も無えと思うがな」

 シリルとは1度手合わせしているのだが、機会があればもう1度……今度はお互いに武器を持った状態で手合わせを頼みたいものである。


 そう思っていたニールだったが、ここであのドベリンコ遺跡に入る前に必殺技がどうのこうのとエリアスと話した記憶が唐突に蘇える。

「あっそうだ、エリアス!」

「何だい?」

「確か俺、あの貯水施設の遺跡に入る前に約束しなかったっけか? 必殺技を見せてくれるって」

 そう聞かれたエリアスも、ついこの前の話なのですぐに思い出して対応する。

「ああ、そう言えばそんな約束をしていたね。忘れてた。だったら今日の野宿の時にそれぞれの必殺技を見せるとしようか」

 それで良い? と他の2人に問い掛けるエリアスに、シリルとユフリーも頷きを返す。

「俺としては、ユフリーの必殺技って言うのが気になるな」

「ふふ……それは見てのお楽しみよ」

 エリアスの呟きに何処と無く不敵な笑みを浮かべるユフリーを見て、ニールも少なからず期待する。


 そしてその日の夜、馬車を停めて野宿の準備を終えた一行はニールにこの世界の武術を披露する事に。

 ミネットも必殺技を持っていると言うので、まずはそのミネットの弓捌きと必殺技から見せて貰う。

「私の必殺技はツインヘブンショット。2本の矢に最大限の魔力を込めて、通常の数倍以上の威力のその矢を同時に2本放つの。それで相手の身体を貫通させて、その後ろの壁に穴を開けた事もあるわ」

「うわ……」

 ニールは思わず言葉を失う。

 地球で言えばそれこそ銃火器の様な物で、大口径のマグナム辺りがそれになるんじゃないかと当てはめてみる。


「じゃ、じゃあ実際にやってみて貰えるか?」

 怖くもあるが同時に見てみたくもあるので、ニールは戸惑いながらもそうお願いしてみる。

 しかし、ミネットは首を横に振った。

「それは出来ないわ。だって矢までダメになっちゃうのよ。この先まだ町に着くまでに魔物が現れるかも知れないから、何かしらの敵と戦う機会があればその時にね」

「そう、か……」

 見られないのは残念だが、矢がダメになる位の威力となれば確かにそれはいざと言う時に矢が足りなくなっても困る。


 ミネットの必殺技のデモンストレーションはまた今度と言う事にして、次はエリアスの方に顔を向けるニール。

「じゃ、エリアスはどんなのがあるんだ?」

 エリアスも確か弓だったよな、と尋ねると彼も頷いて自分の必殺技の説明を始める。

「ああ。俺はクリムゾンシルバーレインとバーニングダブルショットだな」

「……2つあるのか?」

 てっきり1つだけかと思っていたニールはキョトンとするが、エリアスはそれに構わずに続ける。

「ああ。俺は2つだけど世の中には必殺技を3つも4つも持っている人なんて山程居るさ。俺が今まで生きて来た中で1番必殺技を多く持っていたのは確か……7つだったかな」

「そんなに……」


 自分だったら7つも必殺技があったら覚え切れないかも知れないなとニールは苦笑しつつも、エリアスのその2つの必殺技の説明を改めてして貰う。

「まずクリムゾンシルバーレインだけど、これは光系統の魔術を組み合わせている。攻撃って言うよりは相手の視界を一時的に奪うものだな。矢を相手の近くに放って、刺さった場所から強い光を一定時間発して隙を作るんだ。それで相手が怯んだ所で一気に勝負を決める。仲間が居れば仲間にその隙に相手を倒して貰ったりな」

「ああ……そう言えば似た様な武器が俺の世界にもあるな」

 特殊部隊が敵地に突入する時に使うフラッシュパン、つまり閃光弾を思い浮かべるニール。

 あれは閃光と耳障りな音を同時に出して敵をかく乱するので、それの音無しバージョンか……とすぐに察しがついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ