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61.無駄な労力と新たな事実

「やっぱりか……」

「やっぱりって?」

「あのドアの横にレバーがあっただろう? 今、俺はそれを一旦上げて来たんだ。そうしたらさっきの物凄い音がしたんだけど、こっちの状況はどう変わった?」

 シリルとミネットにニールが尋ねると、2人は見たままの状況を話す。

「さっき、あんたがそのレバーを上げた時だと思うけど……俺とミネットの目の前でこの穴にどんどん水が貯まっていったよ」

「ええ。それから奥の方から何かが動く様な音も聞こえて来たんだけど、あれはおそらく水門が開く音か何かだと思うわ。カラカラカラッて滑車が回る様な音が聞こえたからね」

 それを聞いてニールも頷く。

「じゃああのレバーは下げっ放しにしておこう。手動で水門を操作出来るんだったらここの調査も出来るだろうしな」


 もう1度レバーの所に進み、再度レバーを下げて水門を操作(?)してから地下2階の捜索を始めようとした3人。

 しかし、その前に上の階に居た筈のエリアスが下りて来て合流した。

「あ、居た居た……ちょっと上に来てくれるか?」

「あれっ、どうしたんだ?」

「ああ、上の方で俺とユフリーが不思議な物を見つけてね。それを俺達と一緒に見て欲しいんだよ」

 どうやら地下1階でも何かを発見したらしいので、導かれるままに3人はエリアスと一緒に上の階へ。


 その辿り着いた先では、背中越しでも十分に分かる程にユフリーが腕を組んで首を傾げる姿があった。

「あ……ニール、無事で良かったわ」

「俺はまだ生きているよ」

「無事で何よりだ。それはそうとユフリー、何か分かったか?」

 エリアスとユフリーは何かを相談していたらしいのだが、ユフリーは首を横に振って溜め息を吐いた。

「ううん全然。この箱……ビクともしないわね」

 ユフリーの視線の先には、シングルベッドサイズの大きな木箱がデーンと鎮座している。

 これだけの大きな箱ならば中に何かがあるだろうと思い、エリアスとユフリーはさっそく開けてみようとしたのだがカギが掛かっている様でフタがビクともしないのだ。


「だったら壊してみれば良いんじゃないのか?」

 開かない金庫を壊してでもこじ開ける時と同じ感覚でそう提案するニールだが、既にその類の方法は同じ事を考えてエリアスもユフリーも試したらしい。

「もうやったんだよ。だけど防壁魔術……それもかなり強力なものが掛かっているみたいで、殴っても蹴ってもダメだし魔術でもビクともしないんだ。だからシリル、あんたのその怪力で何とかならないか?」

「え……」

 その為に呼ばれたのかと話が繋がって困惑するシリルだが、彼の困惑の原因はそれだけでは無い。

「いや、多分俺でも無理だと思うぞ。魔術防壁が掛かっているんだったら物理攻撃は無意味だろうからな……一応やってみるけどよ」


 そう言ってバスタードソードを背中から引き抜き、風を切りながら木箱を切断しに掛かるシリル。

 中に大事な物が入っていたら困るので出来るだけ端を狙ってみたのだが、途中で不自然にバスタードソードが弾かれてしまった。

「えっ!?」

「ああ……やっぱりだよ。これは防壁魔術って言って、相手の攻撃を無効化してしまう魔術だ。1番オーソドックスなのは物理攻撃を無効化するタイプのもので、他にも魔術を無効化してしまうタイプとか両方を無効化してしまう厄介なもんもあるけど、恐らくこれは物理も魔術もどっちの攻撃もダメなタイプだろうな」

 残念そうにバスタードソードを背中の鞘に収めながらシリルは防壁魔術の説明をするが、こんな目の前にあるのに諦められる訳が無いだろうとニールが木箱のフタに手を掛ける。

 一見するとそのフタにはカギが掛かっていない様に思えるので、何か引っかかりでもあるだけなんじゃないのかとニールはフタのフチに手を掛けてグイっと上に引っ張ってみる。


 すると、呆気無くそのフタが上に持ち上がってしまった。

「……おい、開いたぞ?」

 フタを持ち上げたニールが4人を振り返りながらそう言うが、今までこの木箱に対して何をやってもダメだった4人は困惑の表情しか浮かんで来ない。

「はっ……?」

「う、嘘でしょ?」

「あれ、何でこんな簡単に開いたんだよ?」

「そんな馬鹿な……あっ!!」

 4人がそれぞれ呟きを漏らすものの、その中でエリアスが思い出した事があるらしい。

「何だ?」

「もしかしたら、魔力があんたの体内からも感じられないってなると……前にやって来たって言うその2人の無魔力の人間も防壁魔術が無意味だったってエピソードを聞いた事があるんだ、俺は」


 そう言われても、魔術と言うものにこの世界で初めて触れたニールは訳が分からないので説明を求める。

「それが俺もそうだってのか?」

「ああ。しかも防壁魔術だけじゃなくて、攻撃魔術も聞かなければ姿を消せる筈の魔術も意味を成さずに自分の姿がはっきり見えてしまっていたらしいんだ」

「となれば、その魔術を無効化する能力を元々あんたは備えているって事になるのか!?」

 それならこの木箱に掛かっている防壁魔術も無意味だと言うのに納得が行くこの世界の4人だが、ニールにとってはさっぱり話が見えない。

「元々この身体で、俺は今まで35年間生きて来たからな。理由はどうであれ木箱が開いたんだから中身をチェックしよう」

 冷静にそれだけ言って、ニールは今しがた自分が開けた木箱の中を覗き込んだ。

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