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60.解き明かされ始める謎

(なっ、何だ!?)

 その轟音に周りをキョロキョロと見渡して異変を確認するニールだが、少なくとも自分に近い場所で起こっているものでは無いらしいと分かった。

 約2分程それが続いた後、ようやく轟音が止んで辺りに静粛が戻ったのでニールは再び歩き出す。

(な、何だったんだよ……?)

 本当ならあの窓がある場所から外に出たいのだが、あいにくそこまで上れそうな階段やスロープやハシゴの類が見当たらなかったので、先程自分が蹴り破った扉から外に出てその先の通路を歩き出す。


 それにここの主らしき魔物を倒したのは良いのだが、肝心の封印やらアイテムとやらの存在が見つからないのも気になる。

 ただの噂が独り歩きしているパターンなのか、それともここまで到達している冒険者や傭兵がいないのでそれが何処にあるかすら分かっていないからなのか。

 今の所は後者の説が有力である、とニールは考えていた。

(水に流されて死にそうな思いまでしたんだし、これで何もありませんでした……なんてなったら俺は暴れても仕方無いよな)

 少なくとも、その封印だとかアイテムだとかの情報を流した第一人者に出会って1発位ぶん殴ってやらないと気が済まないレベルの体験をここに来るまでにしているだけあって、ニールの瞳は不自然な程にギラギラしている。


 ニールがそう思いながら歩き始めた頃、2階上の1階部分ではシリル達が戸惑っていた。

「あ、あれ……水が引いたぞ?」

「良く分からないけど助かったわね……」

 レバーを引き下げたニールが穴に落ちてそのまま水に流されてしまった一方で、シリル阿知はその水の流れに巻き込まれない様に各自で距離を取ったり足を踏ん張ったり、違う部屋に避難して壁やドアをブロックにして何とか流されずに済んだ。

 その後は勿論各自でニールを捜す為に歩き回っていたのだが、時間が経つとまた足元から水がじわじわと溜まって来ている事に気が付いた。


 更に、さっきニールが落ちてしまった穴も何時の間にか塞がってしまっていたので、穴が開く前と同じペースで水位が少しずつ上がって来ていた。

 これはもうどうしようもないと思い、申し訳無いと心の中でニールに詫びつつもこの遺跡からの撤退を決定するシリル。

 他の3人もそれに同意して、止むを得ず遺跡の外に出ようとした矢先にまた事態が変わる。

 ゴゴゴ……と轟音が遺跡の中に響き渡る共に、足元からジワジワ上がって来ていた水位が下がって行くでは無いか。

 何が何だかさっぱり分からないが、ともかく水が引いてくれたのは喜ばしい事なのでシリル達はニールの捜索を再開する。


「ねえシリル、鼻は利かないの?」

 狼獣人である彼の嗅覚の鋭さに期待する人間のミネットだが、渋い表情でシリルは首を横に振った。

「ダメだ……さっきの水の流れで匂いも一緒に流されちまったみたいだし、そもそもこの遺跡の中はカビくせーから匂いなんかとてもキャッチ出来ねえよ」

「だったら手分けして捜すしか無さそうね」

「ああ。ちょうど4人居る事だし、グループを2つに分けて捜索するのはどうだ?」

 ユフリーとエリアスの提案にその2人も同意した後、この一行は地下に続く階段を1階の奥に発見した。

 それを使って地下1階、そして2階とシリルとミネット、エリアスとユフリーで2グループに分かれて探索を続ける。


 その2つのグループの内、最初に目標に到達したのは地下2階に進んでいたシリルとミネットだった。

「あっ、ニール!?」

「お、おいあんた……生きてたのか!!」

「人を勝手に殺すな……」

 キョロキョロと辺りを見渡しながら進んでいたニールと、地下2階に降りて通路を歩き回っていたシリルとミネットがバッタリと遭遇。

 これは丁度良いとばかりに、ニールは自分が先程倒した魔物の死骸があるあの正方形の部屋に2人を案内する。

「こ、こんなのが居たのかよ?」

「えっ、それでこれを貴方が仕留めたって事?」

 自分よりも明らかに大きな図体を持っているその4本腕の魔物の死骸を見て、シリルとミネットはこれをニールが倒したなんてにわかには信じられなかった。

「俺だって勝てたのは未だに奇跡だと思ってるよ。それよりも向こうに貯水池みたいな所があって、そこに俺はあの穴から流されて出て来たんだ」

「貯水池……?」


 一体何なんだと首を傾げつつもシリルとミネットがニールの後について行くが、そこには当のニールでさえも予想しない光景が広がっていた。

「あ、あれ……?」

「おいおい、水なんて何も貯まってねえじゃねえか」

 おかしい。

 さっき自分が流されて来た時には明らかに水が溜まっていたのに、今はそこにぽっかりと腐った人間の死体や魚が跳ねている縦長の穴しか無かった。

 しかし、それを見たニールはもしかしたら……とミネットとシリルにここに残る様に言い残し、自らはあのドアの横にあるレバーの元へと走った。

(もしかして……)

 そのレバーを上げてみると再び轟音が響き渡り、そして収まる。

 それからもう1度その2人の元に戻ってみると、ニールの予想通りそこには再び水が貯まっていたのだった。

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