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59.連続するデジャヴ

 ブラックジャックを携えて中に踏み込んだその部屋は、円形の広場からうって変わった正方形の部屋だった。

 その正方形の部屋は横にも広いのだがかなり天井が高く、約3階部分位までの高さはあるかも知れない。

 部屋を囲む壁は途中で途切れており、そこを足場にして窓がついているのが見えるので空気の入れ替えが出来るのだろう。

(あそこの部分が地上1階だとしたら、俺の居るこの高さは地下2階部分って所か)

 部屋の中からドスン、ドスンと足音が聞こえて来ていたのは分かった上でここに踏み込んだニールではあったが、今はその音がまるで聞こえない。

(変だな……)

 まるで自分が来るのを察知して歩き回るのを止めてしまった様なその音だが、立ち止まっていてもしょうがないのでニールは正方形の部屋の中を警戒しながら進む。

 すると、その突き当たりの壁に奇妙なレバーが設置されている。デジャヴだ。

「またか……」

 これを下げたらまた床が抜けて……とさっきの事を思い出して、今度は下ろすのは止めておこうとレバーには目もくれずにその隣にあるドアを開けようとした……のだが。


 突然、後ろから異様な気配を感じてニールはバッと気配の方に振り向く。

「……っ!?」

 彼の目の前に次の瞬間、大きな黒い影がドスンと大きな音を立てて着地した。

 足元の水をバシャッと周囲に飛び散らせ、大きく咆哮を上げるのは異形の怪物である。

 背丈はニールのおよそ2.5倍。

 それだけでもかなりの圧迫感があるのに、1番のポイントはその腕が肩から生えているのが2本の、脇腹から生えているのが2本で合計4本ある事だろう。

 足こそ2足歩行で人間の自分と変わらないのだが、相手の腕が4本あると攻撃のアドバンテージは確実に自分よりもあるだろうとニールは分析する。

 飛び降りて来たのは窓のある部分かららしく、その手にはこん棒らしきものをそれぞれ持っているのでリーチの面でもかなり不利だろう。


 そして、どう考えてもこの状況は友好的な展開になるとは思えないニール。

(何でだ……何でこうも俺が1人の時に限ってこんな魔物が……)

 デジャヴを再び感じる。

 あのスケルトン軍団の時もそうだったのだが、自分が1人になってしまった時にこうやって魔物と遭遇してしまうのはついてないと言える。

 しかし、この状況で立ち向かうのは無謀なのでレバーの横のドアを開けて一旦撤退しようとするニール。

 こんな不利な状況で戦うのはゴメンだとばかりに、木製のドアを押して開こうとする……が。


「……んっ!?」

 開かない。

 もしかして押すんじゃなくて引くのか? と金属製の取っ手を引っ張ってみるニールだが結果は同じで開かない。

 どうやらカギが掛かっている様だ。

「うっそだろおい!?」

 Damnと英語で悪態をつき、ニールは魔物の方を振り返る。

「っ!?」

 その扉の事で慌てていたのが大きな隙になり、魔物が下の左腕で既に棍棒を振り被るのが目に見えた。

 咄嗟に手に持っているシャツのブラックジャックを振り回し、パワーを相殺する事に成功。

(あっぶねえ……)


 ブラックジャックの重さで何とかその場は退ける事に成功したが、もし魔物にもっとパワーがあったなら自分は打ち負けていただろう。

 それで怯んだ魔物の腹部目掛けて前蹴りをヒットさせるが、身体の大きさの違いもあって余り怯んでくれないらしい。

(くっそ、デジャヴだ!!)

 シリルと戦った時の記憶が蘇り、この遺跡に入って3回目のデジャヴである。

 しかし、手が2本だろうが4本だろうが人間と基本は変わらない事に気が付いたニールは、その前蹴りでたたらを踏んだ魔物の左膝の関節目掛けてブラックジャックをヒットさせる。


「グギャオッ!?」

 変な声を上げて片膝立ち状態になる魔物は、当然頭の部分の位置も低い場所に来る。

 その頭部のアゴ目掛け、ブラックジャックを今度は下から上に全力で振り上げるニール。

「ギャン!!」

 ボクシングのアッパーの要領で急所を打ち抜かれた魔物は、まるで尻尾を踏まれた犬の様な声を上げて背中から水浸しの床に倒れ込む。

 それでもまだ何とか起き上がろうとして来るので、ニールはブラックジャックを振り被って頭部目掛けて何回も何回も振り下ろし続ける。

「この、やろ、くそ、おら、おらあっ!!」

 2度と起き上がれない様にするべく、汗をまき散らしながらそのブラックジャックを魔物の頭に振り下ろし続けたニールの目の前で、魔物は次第に絶命して行った。


「はぁ、はぁ、はぁ……終わったか……」

 異形の魔物との死闘を自分の勝利で終わらせ、ブラックジャックとして作ったシャツを解いて中の破片を地面に撒き散らすニール。

 そして、次に彼が視線を向けた先はあの扉のそばにあるレバーである。

(これ……何なんだろうな?)

 鍵が掛かっている扉だが、良く考えてみればこんな遺跡のボロい扉なんか前蹴りの1つでノックアウト出来そうな気がしたニールは、思いっ切りその扉を蹴ってみる。

「……らあっ!!」

 気合を入れながら蹴った扉は思惑通り勢い良く開いたので、その扉があった場所に立って手を伸ばしてレバーを下ろしてみる。

 また落ちるのだけはゴメンだ……と思いながらレバーを下ろしてみるニールの耳に、次の瞬間ゴゴゴ……と重々しい音が聞こえて来た。

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