51.実験結果
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登場人物紹介にエリアス・キーンツを追加。
その話はさておき、何故武器だけじゃなく防具も使えないのかと言う予想を言い出したのかをニールはエリアスに聞く。
エリアスはそれに対してシンプルに返した。
「その魔力が無い2人も、あんたと同じ現象が出たって話を聞いた事があるんだ。まばゆい光に破裂する様な音、それから手の先から腕にかけて伝わる痺れる様な痛みがあって、武器も防具も使えなかったとね。そして2人の体内には魔力が無かったから魔術も使えない……それはあんたも同じだと思うんだよな」
自分の予想を事細かに話すエリアスだが、その一方でニールはふとこんな疑問を抱いていた。
「まぁ、それは確かにそうだと思うが……ちょっと俺からまだ聞きたい事があるんだがな」
「何だ?」
「あんた、その魔力が無い人間達の事情をやけに知っていると思ってな。思うんだが……その2人と一緒に行動していた様な口振りなんだよ、さっきから聞いていると。ただの噂話の筈なのに、そこまで詳しく知っているなんて俺はどうしても腑に落ちないんだよな」
「……」
ニールのその指摘にエリアスは口ごもってしまうものの、横からミネットが口を挟んで来た。
「ちょっと待って。それは違うわよ」
「違う?」
「ええ。だってこの話、世界中で有名だもん。魔力を持たない人間が、一国の騎士団長の恐ろしい計画をストップさせたって言う話はね。たった3年前の話だけど、だからこそ今でも語り継がれている伝説のエピソードよ」
「……ふーん……」
そうやって他の人間からも言われると、この世界の住人では無いニールは信じるしか無い。
それでも、ニールにはやっぱり腑に落ちない気持ちが渦巻いていた。
(それにしても、この男はまだ何か隠しているな?)
ニールは動物的な勘でそう思った。
ミネットの指摘が終わると、エリアスがこんな提案を持ち出して来た。
「ところで、防具を見に行くんだったな?」
「そうだ。俺の体型と動きに合う防具を一緒に考えて貰おうと思っている」
「だったらさ、甲冑のセットが俺の荷物の中にパーツごとに分けられて整理整頓されて置かれているのがあるから、それでちょっと確かめてみるって言うのはどうだい?」
「そうなのか? それじゃ試着させてくれ」
確かめられる機会があるなら是非そうさせて貰いたいのがニールの本音なので、ここはその提案を素直に受け入れる事にしてその甲冑のセットを持って来て貰った。
「これか……」
エリアスに持って来て貰った、地球でも中世ヨーロッパの世界で良く使われていた甲冑のフルセット。
その中の1つである腕当てを手に取ってみる事にしたが、前の経験もあって人間の本能と言うものがニールに若干の躊躇をさせる。
だが実際に装備出来るかどうかを試してみなければ分からないので、ニールは思い切ってその腕当てを掴んでみる。
「……お?」
何も起こらない。
どうやら防具に関しては触っても問題が無さそうなので、触るだけで謎の現象が起こっていた武器とは違う事を確認したニールも無意識の内に安堵の息を吐きつつ、自分の腕のサイズに合うかどうかのフィッティングに入る。
……が。
バチィィィッ!!
「うぐぅぁっ!?」
「え?」
「あ、あれ?」
「おっ、おいおい……」
「ちょ、ちょっと……何で?」
何故だ、何が起こった、一体どうしてなのだ。
ニールの頭の中をグルグルと疑問が一気に駆け巡ると共に、その様子を見ていた他のパーティメンバーからも驚きのリアクションが。
「ま、まさか防具の場合は……装着しようとするとダメなの?」
ユフリーの指摘にそんな馬鹿なと思いつつも今度はスネ当てを手に取り、自分の武器である足にグイッと押し当ててみるニール。
バチィィィッ!!
「ぐぅあっ!!」
どうやら彼女の予想は当たっていたらしい。悪い方向にではあるが。
そう考えてみるとこれは予想外の事態であるのでは? とニールは嫌でも思ってしまう。
「待てよ、これは私にとって非常に不利な状況では無いのか? 武器は持つ事すら出来ないし、防具は触る事は出来ても装着する事が出来ない。となれば俺は基本的に素手で戦うか、身の回りにある物で戦うしか無いと言う事になる……な?」
そう言いながらパーティメンバーを見るニールだが、気まずそうに眼を逸らす他のメンバー。
そんなメンバーの中で、エリアスは納得した表情で頷いていた。
「やっぱりか……」
「やっぱりって?」
「その魔力を持っていない2人も、これまた同じ様な事が切っ掛けで武器も防具も使えないから素手で戦うしか無かったって話を聞いた事があるんだ。もしくは身の回りにある物を使って戦い、なるべくケガをしない様に修羅場を潜り抜けなければならないって言う話もある。何故ならその2人には魔力が身体の中に無いからって言う事の他にも、その体質のせいで回復が出来ないって言う事情があったからなんだよ」
「へ?」
俺は今何を聞いたんだ?
回復が出来ないって事は、それは致命傷を食らったら現実の命と言う意味でゲームオーバーになってしまうって話じゃ無いのか?
それについて詳しく話して貰うべく、ニールはエリアスに更なる説明を求めた。




