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46.有益な情報

「……良し、ここまでくれば一先ず大丈夫だ」

 地下水路を走り回り、帝都の中に再び出る別の出入り口の前に辿り着いて息を整える2人。

 しかし、ニールが考えている逃走経路とはまた違った。

「おい……ちょっと待ってくれ。何で帝都の外に出ない? 帝都の外に出てしまえば幾らでも逃げ道があると思うんだが」

 ギルドの本拠地、そして帝国騎士団の団員がそこ等中に居るこの帝都から早く逃げてしまえばそれだけアドバンテージが得られるのでは無いかと考えているニールだが、シリルはその裏をかく作戦を取っているのだと言った。

「そこがポイントなんだ。帝国騎士団の連中とギルドの連中が繋がっているのは知っているか?」

「えっ……いや、全然知らん」

 その2つの団体は繋がりがあっても確かにおかしくないのだが、まさか本当に繋がりがあるとは……とニールは愕然とする。


 それについて説明する、と出入り口から出て物陰に隠れたシリルは指差しをする。

「向こうの方に騎士団の総本部があって、その先に皇帝が住んでいる城がある。ソルイール帝国のギルドの本部は騎士団の総本部と隣接しているから、文字通り繋がっているんだ」

「あ、繋がっているって建物の立地的な意味……」

「それもあるが……ギルドトップのSランクの冒険者であり帝国の英雄でもあるエジットの活躍を、ソルイール帝国騎士団の団長であるセレイザが聞きつけた事でその2人は協力し合っているんだ。エジットは騎士団に興味が無いから騎士団員になって欲しいと言うセレイザの誘いを断る代わりに、優先的に依頼を回してくれる様に何時も交渉しているらしい」

「ははあ、成る程な」

 裏取引みたいなものなのか、あるいは彼のその英雄と言う立場を利用した正式な交渉なのかは分からないが、それでも他の冒険者から見れば羨ましかったり恨まれたりしてしまう切っ掛けになるのかも知れないと考えるニール。


「で、その2人が繋がっているのは分かったがそれとこの話がどう関係があるんだ?」

 急かす様にシリルに説明を求めるニールに、自分が何故この様なルートで逃げて来たのかを交えてシリルは説明する。

「その2人が繋がっていると言う事は、あんたに自分がやられてしまった事がエジットを通してすぐに騎士団長の耳に入るだろう。そうなれば騎士団長のセレイザもその英雄のエジットには協力を惜しまない姿勢を普段からしているから、そう考えると騎士団員を動かしてあんたを捕まえに向かう事は見え見えだ」

「だからその裏をかく、と?」

 ニールの疑問にシリルは頷く。

「そうだ。どうせこのまま帝都の外に出ても、あんたとあの女だけじゃあ逃げ切るのはかなり無理がある。ギルドの人員に通達を出し、騎士団の人員に手配書を配って動かせばすぐに包囲網が敷かれる。だからその裏をかき、俺の知り合いの信頼出来る男にあんたがこの帝国から脱出出来る様にして貰うんだ」


 しかし、帝国から脱出するのは確かにそうだとしてもニールはまだやるべき事がある。

「ちょ、ちょっと待ってくれ。俺は俺の世界に帰る為の情報を集めにユフリーと一緒にここまで来たんだ。なのに着いたばっかりでもう逃げるしか無いのか?」

 せっかく帝国で1番の広さを誇っている帝都までやって来たと言うのに、何も情報が得られないまま脱出してしまうのはかなり損した気分になる。

 その話を聞き、シリルはしばし考えてから重たい口調で話し始める。

「……それなんだが、この帝都ランダリルでその話を持ち出したら厄介な事になるぞ」

「へ?」

 自分が魔力を持っていない人間だと言う事は、確かにあのエジットにもさっきの戦いでばれているかも知れないが、それよりももっとまずい事があるのだろうかと首を捻るニール。


 そんな彼を見て、シリルは更に重い口調になった。

「実はだな……その、この帝国には3つか4つだったかの遺跡が存在しているんだが、その遺跡には古代の封印が魔術で施されているらしくて。で、その古代の封印を解いて先に進んだ者が手にする事の出来るアイテムがあるらしい。そのアイテムを騎士団とギルドの連中が手を組んで探しているんだが、封印が解けなくて調査がなかなか進まないらしい。それもこれも俺のその知り合いが調べた所によるんだが、その騎士団とギルドの連中で古代の遺跡でアイテムを集めて回る部隊を編成して各地に派遣しているそうだ」

「と、すると……」

「もしかしたら、そのアイテムとやらがあんたが元の世界に帰る為の手掛かりになるかも知れない。だが……それは同時に騎士団とギルドの連中を更に敵に回す事にもなるだろう」


 かなり重苦しい口調で話し終えたシリルだが、ニールの心は対照的に軽くなった。

「そ、そうか……それだったら俺はそのアイテムを集めに遺跡を回りたい!!」

 目を輝かせてそう宣言するニールに、シリルはハァーッと溜め息を吐いて額に手を当てる。

「おい、俺の話を聞いていたか? あんたは狙われているんだぞ?」

 遠回しに、さっさとこの国から逃げ出すべきだとニールに忠告するシリルだがニールも負けない。

「それは分かっている。だが、俺がこの世界から自分の世界に戻ってしまえば追われる理由も無くなるだろう。俺だって意味も分からずに追い掛け回されるのは勘弁して欲しいからな」

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