40.タチの悪い奴
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「前作の」登場人物紹介にエリアス・キーンツ追加。
ユフリーへのマッサージを終えたニールは彼女と共に再び帝都への道を馬で進み、もう1回夜を途中で明かした次の日の夕方にやっと帝都ランダリルまで辿り着いた。
「あれが帝都か」
「そうよ」
ニールとユフリーの視線の先には、最初の町で見かけた城壁よりも更に大きくて高い威圧感たっぷりの城壁で守られている町があった。
そのスケールの大きさはまさに「帝都」と呼ぶにふさわしいのだとニールは思うが、ユフリーの言う通りその街の入り口では人々が行列を作って並んでいる。
馬車も時折列に並んでいるのを見ると、確かに検問が厳しく行われているらしい。
「ああ、確かにあれじゃ俺は中に入れそうに無いな」
「でしょ? だから裏から入ってね」
そう言いながらユフリーが指を差す方向には、小さな船が2隻すれ違うのがやっと位の細い運河が帝都に向かって伸びている。
恐らく、あの鉱山の方からずっと流れて来ているのであろう。
「ちょっと逆戻りする事になるんだけど、この道を上流に向かって道なりに進んで行けばやがて船の停泊所が見える筈よ」
「分かった。後はそのタチの悪い奴に会わない様に気をつけたいものだな」
「ええ。無事に帝都に辿り着いたら、街の中に魔術師達が集まる黒曜石の神殿って場所があるからそこで落ち合いましょう」
夕方なので多少忍び込む時間には早いかも知れないが、そこは誤差の範囲内と言う事でニールは足早にその停泊所へと向かう。
しかし、どうやらユフリーの言っていた噂は真実だったらしい。
フードを被って停泊所で空を眺めていた大柄な男が、ニールが近づいて来たその足音を聞いて立ち上がる。
「おい、ここの船を使いたいんだったら有り金と金目の物を全て置いて行け」
「……例え利用料金だとしても、それはぼったくりじゃないのか」
明らかに法外な値段を請求する男に冷静にニールが突っ込むが、男も引き下がらない」
「払えないなら痛い思いをしない内に帰るんだな」
「そうか。だったら無理にでもここの舟を使わせて貰うぞ」
そう言ってニールはフードの男とのバトルをスタートさせた。
ニールとフードの男は、まずは相手の様子を窺いながらのスタートだ。
しかし愛用の大剣を振って先に飛び込んで来たフードの男を避けたニールに、思わぬ衝撃が襲い掛かって来る。
「ぐわ!?」
フードの男がニールに大剣では無く、自分の大柄な身体を活かしてタックルをかましたのだ。
しかしニールもこのまま黙ってやられる訳には行かない。素早く横を見れば大き目の石が転がっており、それを引っ掴んでフードの男の顔にぶつける。
「ぐぅ!?」
フードの男が怯んだ所で、ニールは素早く立ち上がって飛び膝蹴り。
更にローキックからミドルキックをかまし、そのミドルキックはフードの男の股間を蹴り上げた。
「がぁ!」
「おりゃあ!」
フードの男の肩を掴んで、勢いのまま膝蹴りをするニール。そのままハイキック、ミドルボディブロー、更に回し蹴り。
間髪入れずにフードの男の顔目掛けて2発右と左のパンチ。そして再び回し蹴り。
その蹴りはフードの男の腹に食い込み、フードの男は後ろの岩壁に吹っ飛ばされる。
「おらあああああっ!!」
ニールが追撃しようと向かって来るので、フードの男は咄嗟に懐の短剣を手に取って投げつける。
「うおっ!?」
そのままニールが怯んだ所に前蹴りを食らわせ、大剣を振り被る。
だがニールはカラリパヤットで培った反射神経で、逆にフードの男の腹と顔に左手で連続でパンチをお見舞いする。
それでも隙は必ず出来るので、フードの男はニールの一瞬の隙を見逃さずミドルキックを繰り出して彼を吹っ飛ばす。
「ぐは!」
今度はニールが岩壁にもたれかかって崩れ落ちる。
そのニールがふと見つけた物はさっきよりも大きな石……と言うより岩。
とりあえずそれをニールは武器として投げつけるが、フードの男は飛んで来た岩を間一髪で避け、ダッシュでニールの元へ。
立ち上がりかけたニールに向け、大剣を使うと見せかけてフェイントで強烈な前蹴りを繰り出す。
これには流石のニールも反応出来ず、もろにそのフードの男のキックを食らってしまう。
そうして地面に倒れ込んだニールの腹に、フードの男は更に蹴りを入れる。
「ぐぁ!」
そのままフードの男は間髪入れず、自分の大剣を大きく頭の上に振りかざす。
「おりゃあああああ!」
(やべ……!)
力を振り絞って何とかそれを避けるニール。
そのままフードの男に足払いをかけて倒し、マウントポジションを取って殴りつける。
「おらおらおらああ!」
成す術無くフードの男は殴られ続け、そのフードの男の襟首を掴んで強引に立たせるニール。
そして最後に、精一杯の左ストレートをニールはフードの男の顔面に叩き込んだ。
「があ!?」
かなりの衝撃で殴った為、ニールの左手にも痛みが走る。
(いってえ!)
一方のストレートパンチを食らったフードの男はそのまま力尽きで川に落ち、そのまま流されて行ってしまった。
とにかくこれでタチの悪い追い剥ぎだか野盗だかの類の男を退ける事に成功し、彼は舟を拝借して川を下って帝都ランダリルを目指した。




