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34.イノシシのポーズ

 鉱山の町グラルラムへと無事に戻ったギルドのメンバーとニールとユフリーは、ニールが採集したその薬草と依頼達成の報告書をギルドへと届けた。

 それから酒場で昼飯を奢ってやるとシリルから言われたので、ここは素直にお言葉に甘える形で御馳走になるニール。

 だが、魔力が無いと言う時点で何も隠し通す事は出来ないので「絶対にエジット達に口外しない」と約束をさせた上で、ニールは自分がどうやら違う世界からやって来たみたいだ、と話した。

「へぇ、違う世界か」

「にわかには信じられないけどね。だけど貴方の身体からは魔力を感じられないから、確かにそう言われてみれば妙に納得出来るわね」


 シリルもミネットもニールの言葉を否定する事無く受け入れてくれたのだが、その2人のニールへの関心はもっと違う所にある様だ。

「ところで、あんたはあれだけのスケルトンの大軍をたった1人で全滅させたんだろう? 何かそれなりに戦う術を持っていると思うんだが、どんな事をやっているんだ?」

「ああ、俺はカラリパヤットって言うのをやっている。古代の武術だ」

「カラリ……パヤット?」

「へえ、何だか変な名前の武術ね」

 素直な感想を口に出すミネットだが、さして気にした様子も無くニールは続ける。

「俺の世界の最古の武術って言われていてな。どんな武術でもそのルーツを辿れば最後には絶対このカラリパヤットに行き着くって言われてるんだ」

「そうなのか。だったら飯食ったら外で少しだけ見せてくれよ」


 と言う訳で、昼食を終えたニール達は町の片隅の広場でカラリパヤットのショーをする事に。

「すぐ出発するから、2つのポーズだけ見せる」

「ああ、それで良いぜ」

 その2つのポーズの1つ目……この世界に来てからトレーニングする6つ目のポーズはイノシシ(ワイルドボア)のポーズだ。

 非常に独特な動き方をするこのポーズであるが、使い所としては相手に肘打ちをするのに使うのである。それも、ただ単にムエタイの様な肘を繰り出すのとはまた違ったものになり、肘を前に突き出して下から上へとえぐる様な肘打ちを繰り出す。

 そしてこの突き出した肘が何処に当たるのかと言えば、対峙している相手の股間、もしくはみぞおちと言った急所マルマを攻撃する事が出来る。

 ポーズはシンプルな動きであるが、熟練したカラリパヤットマスターのイノシシのポーズはそれは速いものであり、実際にニールが今やっているイノシシのポーズは最初の構えからおよそ1秒で肘を前に突き出す程のスピードで攻撃が可能になっている。


 では、そのポーズは一体どの様にやれば良いのかと言う事についてなのだが、最初に手で耳をガードをするのは基本的にどのポーズでも一緒だ。

 そこからイノシシのポーズでは、右肘を前に出したいなら左足をまず前に出し、左肘で攻撃したいなら逆の足を前に出す。

 前に足を出す時は大きくステップを踏み出しがちだが、ここでは1歩だけ前に足を出す感じの小さいステップを踏む。

 次に前に出した方の足と「同じ方の手」を逆の肩に当てて、フリーな逆の手を後ろにスイングさせながら身体を反らす。

 ここは象のポーズの背中の反らし方と同じで、手の動きだけが異なる。

 そのスイングさせた手を頭の上に持って来て、そこから持って来たその手の甲を耳に当てる位の気持ちの距離まで横顔に近づけつつ、前に出している足を次のポーズがしやすい様に外側に少しだけ向ける。


 そこまで出来たら象のポーズの時と同じ様に頭から上半身を丸めつつ同時に膝を曲げ、顔の横に持って来た腕の肘を突き出しつつ、後ろに置きっ放しだった足を自分の前に「真っすぐ」移動させて前に踏み出す。

 この時にさっき前に出していた足を少し外側に曲げておく事で、この後ろから前に足を持って来た時に股関節が自然と開きやすくなって、足の踏ん張りが利く様になる。

 肩に置きっ放しだったもう一方の手は、肘を前に突き出した腕の内側に自然と入る様になっているのでそこで上腕二頭筋の部分に添えても良いし、自分の方に向いているもう一方の手の指を掴んでも良い。

 それよりもここで重要になるのは、この肘を前に突き出した時に肩が横を向いてしまって自然と身体全体も横向きになってしまうので、肩の向きを意識して真っすぐ前をなるべく向く様にする。

 目前の敵を狙っている筈なのに、横に肘を突き出したって攻撃が当たる筈が無いからだ。

挿絵(By みてみん)


 そしてここから起き上がる時は象のポーズの時と同じで、両腕をクロスさせて再び耳に手を当ててガードのポーズを取り、ゆっくりと頭は下げずに腰から起き上がる。

 そこから再びイノシシのポーズのトレーニングを連続して出来る事もあるし、肘打ちした相手に立ち上がりつつ詰め寄って膝蹴りをかます事も出来る。

 つまり、最初の手の動きで相手の攻撃をブロックしつつ下に避け、そこからカウンターアタックで肘打ちを相手のみぞおちや股間と言う様な急所に叩き込む事が出来る、防御もしくは回避と攻撃がセットになった一石二鳥のポーズなのだ。

 ストレッチとしての効果も勿論あり、背中を反らす事で腰と背中と胸のストレッチが出来る。

 そこから肘打ちを前に突き出す事で足を踏ん張るので、足のストレッチと筋力アップ、それから脇腹も突っ張るのでそこのストレッチにも効果がある。

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