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31.象のポーズ(後編)

 こうして出来上がった象のポーズだが、結果的に尻を後ろに突き出す様な体勢になっている。

 この時に腰を落として座ってしまわない様に気をつけつつ、背中を反らせる事でよりしっかりとしたポーズになる。

 この象のポーズでは背中を反らす事による背中から腰にかけてのストレッチの効果、それから中腰の体勢を維持する事で足の筋力アップにもなる。

 何より体勢を維持するだけの持久力も身につく。

 ちなみにここから起き上がる時には再び最初の手をクロスさせて耳にくっつけるガードのポーズを取り、頭から背中を丸めて「ゆっくりと」起き上がって足を閉じれば象のポーズの動きは終了だ。

 慣れない内に、ここで余りにも速く起き上がってしまうと腰を痛めてしまう危険性があるので気をつけたい。


 更に戦いの中においても、この象のポーズでは最初に行った上半身の腕を閉じて、開き、そしてまた閉じるあそこの一連の動きを使う事で相手を突き飛ばす事が出来る。

 まずは最初の腕を開く動作で、自分に接近している相手の頭の後ろを抱え込む。

 次にその抱え込んだ頭と一緒に、自分も下へと身体を下げて相手を首から押さえ込む。

 最後に背中を反らせて起き上がる所で、手の動きは相手を前へと突き飛ばす物に変わる。

 ここから突き飛ばして隙が出来た相手に対して膝蹴りを叩き込んだりする事も出来るし、パンチでぶん殴る事も出来る。

 それから突き飛ばすだけでは無く、後ろから両腕を羽交い締めにされた時も最初の身体を後ろに反らすポーズを使って相手の首を取り、そこから前に向かって投げ飛ばす事が出来る。

 馬のポーズの時とは違って、相手の頭が自分の頭に近付いてくれている時で無ければ腕が届かないのでそこは臨機応変に対応するしか無いが、意外と力技で後ろに手を回してしまえば相手の頭を掴めてしまう事もある。


 また、連続して象のポーズを行うトレーニングもある。この時にはまずガードの直立ポーズの状態から左足を右足に向かって一旦閉じる。

 そこから今度は左足を自分の斜め左前に出し、続いて右足をその斜め前に出した左足にくっつけて閉じ、もう1度自分の歩幅まで開いて再び身体を後ろに反らし……と言う様にして連続して象のポーズをトレーニングするのだ。

 ここで重要なのは、最初に足を開いた時に設定した自分の歩幅と同じ広さの歩幅をずっと意識して、それを移動した後に維持する事である。

 せっかく自分に最適な歩幅を設定してトレーニングを始めたのに、その次の移動をしたときに最初の歩幅よりも狭かったり、逆に広かったりして最適なポジションを取る事が出来なければスムーズな連続した象のポーズのトレーニングは出来ない。


 なので、左足を前に出す時は常に最初の自分の左足の広さを意識し、右足をくっつけてもう1度開く時も同じ様に、自分の右足が移動する前に何処にあったか、と言う事を頭においてスムーズな移動とトレーニングを心がける様にしたい。

 ニールも最初は上半身の動きばかりを意識してしまっていた為、歩幅の広さや足の動きが疎かになりがちだった。

 しかしこの足の動きでスムーズな動きのトレーニングが出来る様になると共に、向かい合う相手の後ろに回り込んでそこから首投げを行う為の動作のトレーニングにもなると言う事を知り、足の動きと歩幅を意識する様になって行ったと言うエピソードがある。

 実際に今トレーニングしている宿屋の部屋の床においてもスムーズな動きが出来る様になっているのが、ニールが象のポーズのトレーニングにおいていかに歩幅を意識しているかと言う証拠なのだ。


「うわ、これって結構きついわね」

「そうだろう」

 ニールのトレーニングを見ていたユフリーが何時の間にか乗り気になって「やってみたい」と言い出したので、1から象のポーズを教えてみたニール。

 そして実際に彼女がやってみた感想がこれだった。

 下半身の筋力アップがメインなのだが、普段の生活では使わない様な場所の筋肉を使って踏ん張らなければならないので自然と全身に力が入る。

 今のユフリーの額にもじっとりと脂汗が浮かんでいるので、それなりの力が入っているのは見て分かる。


 宿屋の部屋のスペースには若干の余裕があるので、そこから腕を大きく平泳ぎの様に広げて前に移動してみる。

 更にかかとを上手く使って90度向きを変えるターンをしてからまた象のポーズ、更にそこから270度ターンして元に方向に戻りつつ象のポーズと言う感じで、自分の身体が最後に向く方向を自由自在に変化させる。

 また、ユフリーに実際に相手になって貰って象のポーズを使った対人戦のトレーニングも少しだけやってみる。

 だが、ニール曰くこのポーズの動きは実戦では余り使わないらしい

「他の道場ではどうかは知らないが、俺が習っていた所ではこのポーズを格闘戦で使った記憶は無いな。あくまでもこう言うやり方がある、とその概要だけ頭に入れる様にしていたんだ」

 このポーズでは下半身の筋力をアップさせて強い足腰を作るのが目的なので、実戦の中で使えるかどうかはまた別物だとニールはユフリーに補足説明をしておいた。

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