30.象のポーズ
「出発は明日の朝だって言ってたな。何でだ?」
どの道、今までずっと走って来た馬を休ませなければならないのでそれは良いのだが、昼なので今からでも別に向かっても良いんじゃないか? と言う疑問を宿屋に着いたニールはユフリーに聞いてみる。
「色々と準備しなきゃいけないんでしょ。それこそ武具屋で武器とか防具の手入れをしたり、魔物が沢山居るって言うならどんな魔物が居るのかリサーチしてから向かった方が良いでしょうしね」
「ああ……それもそうか」
警察や軍の特殊部隊が事前に計画を立てて敵地に乗り込むのと同じ様なもんだろうな、とニールは感心して頷いた。
「私だって今までずっと馬に乗って来たんだし野宿だってしたんだから、少しはしっかり休みたかったしね。馬も休ませてるからここから身動きは取れないし、明日の朝に依頼を済ませたら馬を引き取ってそのまま出発しましょう」
「そうだな。それじゃ俺は象のポーズのトレーニングをするよ」
部屋の中でも出来るコンパクトなポーズなので、ニールは忘れない様にここでポーズのトレーニングに入る。
カラリパヤットの基本8つのポーズの後半1つ目、この世界に来てトレーニングし始めて通算で5つ目のポーズは象のポーズだ。
象のポーズと言えば、実はカラリパヤット以外にも古式ムエタイにも存在しているポーズである。
だが、カラリパヤットの象のポーズは特に下半身の筋力アップに効果が期待出来るとされており、ポーズを取っている時の足と背中の苦痛は慣れていないと結構大変なのだ。
そんな象のポーズであるが、まずは自分の歩幅と同じ距離に足を広げる所から全てがスタートする。
まずはカラリパヤットのいつものガードのポーズ、つまり腕を身体の前でクロスさせ、手の甲を両方とも反対側の耳にくっつけるあのポーズを上半身で取り、両足はぴったりとくっつけて直立不動の状態を保っておく。
次に自分の限界まで足を両側に開く。
180度開けるのであればチャレンジするのも良いが、足首の関節がそこまで柔らかくない人は決して無理をせずに、しかしここは自分の限界まで足を開くのがポイントになるのでそこだけは決して忘れない様にしなければいけない。
そうして足を開いたら、自分の限界まで開いた両足の膝を軽く曲げ、それと同時に今度は膝を曲げているのでその反動を使う。
まずは膝を伸ばして勢いをつけ、そこから「つま先だけ」で今度は超内股にターンをする。
そうするとかかとだけが外側にターンして結果的に足が開くので、そこでかかとをつけてかかとだけで足が真っすぐになる様に内側から外側に足をそれぞれターンさせれば、自然と自分の歩幅と同じだけの足の広さまで足を広げる事が出来る。
勿論、これと同じ動作をしたからと言って普段の自分の歩幅よりも狭く足を広げる事しか出来ない人も居る。
その場合には素直に足をもう少しだけ広げてみると良い。ただし、広げ過ぎてしまうのはNGだ。
自分の歩幅まで足を広げたら、次にクロスさせている両腕を精一杯まで自分の後ろ斜め下まで広げていき、それと同時に背中を一杯一杯まで反らして顔は上を向く。
そこから今度は広げた腕を頭の上に持って行き、そこで両手をで合わせる。
だが、ここでは出来る事であれば頭上を通り越して自分の髪の毛のてっぺん辺りで合わせるのが望ましい。
この時に手を合わせたら、絶対に忘れてはいけないのが肘を閉じる事である。
肘を開いたままにしてしまうとこの後のポーズがきつくなってしまう為に、絶対にここでは肘を閉じておく事が大切だ。
そうして肘を閉じた腕を手を合わせたまま胸の辺りまで下ろして来ると同時に、背中も徐々に真っすぐに戻しつつ腕を開いて行くのだが、この時に自分の手を見ておく事で格段にこの動作がやりやすくなる。
胸まで手を下ろしたら、もういっその事ここでは合わせた手を胸にくっつける位の気持ちで行こう。
そして腕を下ろす時に、合わせている手の指を曲げて、第2関節同士で人差し指から小指までを合わせる。
それと同時に親指はグッドのポーズと同じ様に両方とも真っすぐ立てる。
この時に腕を閉じたままだと腕が結構きついと思うので、手は合わせたまま肘を外側に開きながら下ろして来る意味がここにあるのだ。
胸まで手が来たら、今度は「自分の手を見ながら」親指が真下に向く様に「手首から」手を回転させる。
それと同時に、自分の股の間に落ちてしまった物をかがんで取る様なイメージで頭を丸め、背中も丸めて腕を下ろして行く。
そしてまたここで絶対に忘れてはいけないのが「腕を閉じながら下ろして行く事」なのだ。
腕を閉じる事でやはりこの後のポーズがやりやすくなるので、基本的にここの動作は「腕を閉じて、腕を開き、腕をまた閉じる」と言う一連の動作になっている。
そうしてここも自分の限界まで頭から上半身を前に曲げる。
次に肘を床にくっつける位の気持ちで、今度は股の間から頭を先に上げながら胸を反らしつつ、肘を曲げて手を鼻の前に持って来る。
そのままの姿勢で正面をしっかりと見る様にすれば、カラリパヤットの象のポーズの出来上がりとなる。




