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2.見知らぬ場所と命の危機

 …………。


 待て、一旦落ち着こう。


 何故かと言うと……うーん、分からない。


 カラリパヤットのトレーニングをするために砂浜に向かい、その砂浜で目を閉じてみたら何か風を感じた。

 そして目を開けてみれば、今まで自分が立っていた筈の砂浜は何処にも無かった。

 その代わり、目の前に広がるのは雄大な大自然を眼下に見下ろす高い崖の上。

(可笑しな幻覚でも見ている……訳では無さそうだ。現に今自分が感じているこの吹きすさぶ風、見えている雄大なこの景色、地面の固い岩の感触。その全てが本物だから。……だとすれば、一体ここは何処なのだ?)

 ニールは考えてみるものの、さっぱり現実が見えて来ない。

 とにかく、ここはサンディエゴの砂浜で無い事は確かだと言う事だけは脳が理解しようとしているので、まずは自分以外の人間を探した方が良さそうだと判断。

(この崖を下りる訳にはいかないな)

 そこまでリスクの高い事をしなくても後ろには道がきちんと存在しているので、ニールはその道に向かって歩き出した。


 足元の悪い山道を歩き、ニールはとにかく他の人間を探して歩いて行く。

 こうした足元の悪い地面でもニールがしっかりとした足取りで進んで行けるのは、やはりカラリパヤットのトレーニングの成果だろう。

 それでもさっきまで自分は働いていた身なので体調は少し疲れ気味であるとニールは感じていた。

 そんな身体に鞭を打ち、自分の左側が断崖絶壁になっている山道を下りていくニールの前から足音が聞こえて来た。

(……足音?)

 人の足音だ。

 これは助かったとばかりにニールの足も無意識の内にスピードアップする。


 が、そんなニールの前に現れたのはいかにも普通の人間では無さそうだった。

(おいおい……)

 身体つきの良い、そして皮の鎧や鉄製の胸当て等を身に付けている、およそ20人位の武装した男女のグループだったのだ。

 更にその男女のグループは、ニールに向かって明らかに殺気をみなぎらせている。

 しかしこんな状況なので、ニールも警戒しながらその内の1人に話し掛けるべく1歩を踏み出し……たのだが。


「こんな所にそんな軽装とは珍しいな。だが、そんなのこっちにはどうだって良い。さっさと有り金と服を置いて消えろ」

 何だか嫌な予感はしていたが、どうやらこのグループは追いはぎの様である。

 多勢に無勢の要領で人数に物を言わせる作戦らしい。

 だけど今のニールにはそんな事よりも、まず今自分が居るこの山道が地球の何処なのかを知る必要があった。

「それはそうと、ここは一体何処なんだ?」

「……は?」

 いきなり話題を変えたニールに盗賊グループのリーダーらしき男は間の抜けた声をあげるが、ニールにとっては真面目な質問である事は間違い無い。

 しかし盗賊グループにとっては挑発的な質問である事もやはり間違いないので、痺れを切らしたリーダーは背中に背負った槍を抜いてニールに向ける。


 だが次の瞬間、武器を向けられると察知したニールの身体は瞬間的に動いていた。

 槍を完全に構えられる前にメイパイヤットの最初のステップで一気に男に近付き、そこから男とすれ違う様な形で男の背中側から自分の左足を男の足の間に入れる。

 すると相手の腰に自分の腰が当たるので、すぐに男の首をこれまた男の背中側から抱え込んだ左手でまるでプロレスのラリアットの様に勢い良く前へと押し込み、自分の腰を少し前へと曲げればそれだけで男のバランスは崩れる。

 そしてニールの歩いて来た道は片側が断崖絶壁の為、バランスを意図も簡単に崩された男は予期せぬ身体の動きに頭で対処しきれずに鎧の重さもあって足を滑らせ、そのままニールに崖下へと落とされてしまう結果になった。

 リーダーがやられたとあれば当然部下の盗賊グループのメンバーも黙っていないので、一斉に武器を引き抜いてさっき以上にニールに敵意を向けて襲い掛かって来たのである。

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