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24.魚のポーズ

「例えば、このポーズではこうして避ける事も出来る」

 実際にユフリーにナイフを横薙ぎに振って貰い、そこで馬のポーズで下にスパッと素早い動きで避けてみてポーズの使い所を説明するニール。

「成る程、ちゃんとポーズには意味があるのね」

 馬のポーズの説明を受けた後、自分の動きに対してそのポーズでどうやって対応するのかを教えて貰いながら納得するユフリー。

 更に後ろからユフリーにニールが羽交い絞めにして貰って、ユフリーの方はそこから馬のポーズデニールに下の草地にゆっくりとした動きで投げて貰う事で、ニールがやっているカラリパヤットのポーズに対しての理解を深める。


 それから一夜明け、あのメルサインの町を出発して2日目。

 本当ならメルサインの町から鉱山の町グラルラムまで3日掛かると言われていたが、ペースアップをした事で次の日の昼頃には辿り着ける予定だとニールはユフリーから教えて貰う。

 なので、その夜もまた野宿をする時にポーズのトレーニングを解説を交えながらする事にした。


 前日、馬のポーズで背中と足を伸ばしたニールが本日行う2つ目のポーズは魚のポーズである。

 魚のポーズは基本的には戦いでは使われる事は無く、自分のバランス感覚を鍛える為に使われているポーズとなる。

 その理由としてはポーズを見てみると一目で分かる通り、魚を模した片足でバランスを取ってグラグラする身体を安定させるものだからだ。

 ではその魚のポーズをどうやれば良いのかと言うと、まずは馬のポーズと同じ様に両耳に反対側の手の甲をそれぞれ当ててガードの姿勢を作り、左右どちらかの足を上に真っすぐ上げる。

 と言っても上に伸ばすのでは無く、あくまで膝だけを上に上げるのでただ単に膝蹴りを真っすぐ上にやっていると思えば良い。


 ここから今度は、上半身を前に倒しながら上げた足とは反対側の手を前に真っすぐ突き出し、反対側の手は脇腹の横に来る様に姿勢を保つ。

 足は地面に置いてある方の足で踏ん張りながらバランスを取り、上に上げている足を後ろ側に真っすぐ伸ばし、伸び切った所で上げている方の膝の関節を80度位まで曲げる。

 この姿勢の時に重要なポイントになるのが、横から自分の姿勢を見た時に上半身が地面と平行になっている……つまり真っすぐ前傾姿勢が取れているかどうかである。

 前に伸ばしている手はバランスが取れたらそこから少し曲げてバランスを取り、目線と顔の向きも常に真っすぐ前を見る様にしておく。

挿絵(By みてみん)


 ここまでで魚のポーズの前半部分が終了し、元の姿勢に戻る時にはここからゆっくりと上げている方の足を戻して行きながら、上半身も一緒に元の立ちポーズの姿勢に戻す為にゆっくり上げて行く。足は地面に下ろすのでは無く最初に上げた時の体勢に戻るので、戻った時には両手の甲がそれぞれ反対側の耳に当たっている状態で片足が上がった状態となる。

 そしてゆっくりと上げている足を地面に下ろして、魚のポーズは終了となる。

 勿論、魚のポーズは片足だけでは無く両足それぞれでバランスを取る練習をする事によって体幹がしっかりと鍛えられる。

 なので右足でバランスを取って魚のポーズをし終わったら、次は左足でバランスを取って魚のポーズをすると言う様に交互にポーズの練習をする事で効果は倍増するのだ。


 このポーズはバランス感覚のトレーニング以外にも、脚の筋肉……特に太ももの筋肉を上げている足の方で使う事になるのでその部位も鍛える事が出来るし、真っすぐ前を見る為に顔も上げなければいけないとなれば自然と背中も力を入れておかなければならないので、背中のストレッチも同時に可能になる。

 ニールの場合はやはり20年と言うベテランカラリパヤット使いである為に、多少地面の状態が悪い故にバランスが取りづらいと言う状況でも、その分は今まで培ったバランス感覚と鍛えられた体幹で難なくバランスを取る事に成功していた。

 狭い場所を歩く様な場面……例えば工事現場の鉄骨の上や、平均台の様な細い部分等でバランスを取らなければいけない様な時に身体のバランス感覚を養っておく事で、万が一そう言った場所から落ちて事故に繋がると言うリスクが軽減される事にも繋がる。


 また、身体の体幹が鍛えられると言う事はそれだけ身体の歪みも軽減されて自然とバランス良く身体を支える事の出来るインナーマッスルが出来上がる事になるので、歩く時のプロポーションが綺麗になると言うメリットも存在しているのだ。

 身体の歪みは日常生活の中で思わぬ事故を招いたり、姿勢が悪くなって腰痛や肩こり等の原因になってしまう為に、こうして魚のポーズを重点的に行う事でそうしたトラブルから身を守る事も可能になると言う、まさに一石何鳥もある身体のバランス感覚の鍛え方になっている。

 そしてこの世界に初めてやって来た時に、山道で盗賊グループと戦ったあの経験。

 足場の悪いあの状況でも、この魚のポーズで培ったバランス感覚でニールはフラットな路面状況の時と変わらずに安定した姿勢から攻撃を繰り出したりしっかりと防御をしたりして生き残る事が出来た。

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