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20.格闘戦トレーニングの証明

「あんた、それは本気で言っているのか?」

「ええ、本気よ?」

「何故そこまで自信がある? さっきは驚いていた様な口振りだったが、今とさっきじゃ全然態度が違うじゃないか」

 自分よりも年下であろう若い女にちょっと生意気な口を叩かれた位でイライラしてしまう自分もどうかと思いつつ、ニールは今までのトレーニングを否定された様でピリピリした口調で問う。

 それに対して、ユフリーにはユフリーなりの言い分があるらしい。

「私だって、ああ言う場所で長く働いているから荒事には慣れているのよ。それに魔物との戦いの経験だってあるわ。私の武器はこれよ」

 そう言いながら、自分の腰にぶら下げられているやや大型のナイフを指差すユフリー。

「だから俺に勝てる、と?」

「ええ。この世界の戦い方と貴方の世界の戦い方……どっちが強いか試してみても良いんじゃない?」


 しかし、今まで自分はこの世界の住人達と戦って来た。

 そしてそれはあの雑貨屋で彼女も見ている筈なので、ここは軽く流しておく事に決めるニール。

「ふん……そんな挑発に俺は乗らないぞ」

「あら、そう? でも貴方は本当はイライラしているんじゃないのかしら?」

「何とでも言え」

 そう、ここでいちいちカッカしている様では良くないので適当にあしらっておけば良い。

 その大人の対応をするニールはユフリーの操る馬に乗り、鉱山までの道のりの中で休憩を取る事にする。

 歩いて3日位掛かると言われていたが、今の馬のスピードと比べてみても余り変わらないと思うので何処かで野宿をするのかとニールは聞いてみる。

「ん……そうね。夜になる前に出来るだけ進んでおきましょう」


 しかし、そうそうノロノロしてもいられないのでペースアップ出来ないかと聞いてみるニール。

「なあ、スピード上げられないか?」

「え? スピードを上げて良いなら1日位は時間を短く出来ると思うけど」

「なら上げてくれ。上げられるだけ上げて、さっさとその鉱山の町に向かおう」

「まぁ良いけど……振り落とされないでよね?」

 確認する様にそう問いかけてニールが頷くのを見たユフリーは、馬に気合いを入れてスピードを上げる。

 整備もされていない街道をひた走り、ニールを乗せたユフリーの操る馬は走れる所まで走って行くのだった。


 その夜。

「それじゃ、私は食事の準備をするから薪をその辺りで拾って来てくれるかしら?」

「分かった」

 野宿の準備の為に薪を集めて来る様に言われたニールは、せっせと目的の薪集めをしながら苦笑いを浮かべる。

(そういや、何時ぞやの映画にエキストラで出た時もドラム缶の火を囲んで寒さを紛らわしてたな)

 エキストラの経験を回想しながら順調に薪を準備していたニールの後ろに、急に人の気配が現れる。

(……!?)

 何だか物凄く嫌な予感がしたニールは咄嗟にしゃがむと、その上を1本のナイフが通り過ぎて行った。

 すぐにニールがそのナイフがやって来た方を振り向くと、そこにはナイフを構えたユフリーの姿が。

 その様子を見て、ニールも臨戦態勢をとった。

「不意打ちか!」

 そのニールの言葉にユフリーは答えず、またナイフを突き出して向かって来る。

 その突き出されたナイフを避けつつ、左手でナイフを持っているユフリーの右手首を掴み、次に自分の右腕でユフリーの右腕をその左手と一緒に挟み込んでから自分の身体を前にジャンプさせて飛び込ませる。


 すると、身体の重心が右腕に掛かっているユフリーはそのまま背中から後ろに倒れ込んだ。

「がっ!」

 しかしそこで倒れたままにはならず、彼女は倒れた勢いを利用して後転で上手く勢いを殺しつつ立ち上がる。

 そこから思いっ切りニールの腹目掛けて飛び込みつつ膝蹴りを放った。

「ぐほっ!?」

 まるでカラリパヤットのニールのお株を奪う様な強烈な膝蹴りだ。

 続けてユフリーはキックを繰り出して来るが、ギリギリでそれをニールも回避。

 しかし3発目の前蹴りはかわし切れずに胸に食らってしまい、それに怯んだ所でニールの顔面にユフリーの左回し蹴りが炸裂。


「おっ!」

 痛みを抑えつつニールは立ち上がったが、今度はナイフを振るって来るユフリーのその攻撃を避け、何発目かで上手くブロックして彼女の右腕にかける関節技で固める。

「ぐー……あああああっ!」

 的確に関節を極められているユフリーは、思わずナイフを落としてしまう程の激痛を感じているのだった。

 ニールはその悶絶するユフリーの右足を両手でキャッチして引き倒してユフリーを転倒させ、ユフリーの右足にまたがる。

 そうしてユフリーの右足を足首からひん曲げ、折れるか折れないかの激痛を与える。


「はがあああっ!?」

 まさかの展開と自分の右足の痛みに絶叫するユフリーだったがそれに構わず、限界までユフリーの右足を捻り上げてギブアップを促すニール。

「うぐぅ……うぐ……」

「どうだ、降参するか?」

「あああっ……も、もうダメ……私の負けぇ!!」

 彼女の口からギブアップの宣言が出たのを耳でちゃんと聞いたニールは、極めている関節を外して彼女の身を自由にしてやる。

 その瞬間、2人の間に張り詰めていた空気が幾らか和らいでこのバトルが終わった事を告げた。

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