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185(最終話).地球への帰還

 2人を倒してバトルを終えたニールの耳に、バタバタとドアの外から足音が響いて来る。

(くそ……まだ居るんだったな!!)

 こりゃ一息ついている暇なんか無いなと思って身構えるニールだが、現れたのは全く別の人間だった。

「ニール、無事か!?」

 汗をかいて息を切らしながら慌ただしく飛び込んで来たのは、パーティのリーダーであるシリルだった。

「し、シリル!?」

「良かった……無事だったみたいだな」

 安堵の息を吐いてその呼吸を整えながら、握っていたバスタードソードを背負っている鞘に戻す。


 その一連の動作を見て、ニールは前の部屋で何があったのかを察した。

「そっちも終わったみたいだな?」

「ああ、全員ぶっ潰してやったよ。他の奴等もかなり疲れているけど全員無事だ」

 騎士団とギルドの連合軍を全て倒したと言う事だが、これでまだ問題が解決した訳では無い。

「でも、これから問題は山積みだな」

「そうだな。とにかくこの部屋に全員を集めるからちょっと待っててくれ」

 そう言ってシリルが部屋に戻って行くのを見て、ニールは自分のズボンのポケットからスマートフォンを取り出して準備を始める。

(色々あったけど……どうやらここまでみたいだな)


 今までの事を回想していたニールの元に、戦いを終えたパーティメンバー達がやって来た。

「上手くやったみたいだね、そっちも」

 息絶えたエジットとセレイザの亡骸を目にして、エリアスが口元に笑みを浮かべる。

「手強かったが何とかな……。でも、まだ終わった訳じゃない」

「そうね。この国の皇帝さんにも話をつけないと」

 引き締まった表情に戻るミネットの横で、イルダーが頭を抱える。

「まずいな……僕達アイクアル王国、それからセバクターのエスヴァリーク帝国と3つの国が絡んでいるんだから、こりゃあ話を纏めるのに時間が掛かりそうだね」


 そんなイルダーの肩を1度、2度とエルマンが若干弱めに叩いた。

「でも、こうなっちまった以上もうしょうがねえだろ。俺達で後は如何にかするしか無えんだよ」

「ああ、そうだな」

 イルダーが頷いて現実を受け入れるのと同時に、ニールがセバクターに問い掛ける。

「でも、こんな事になってしまって本当に大丈夫なのか?」

「大丈夫では無いだろうな。特に俺はエスヴァリークの騎士団長だし、ここまで派手にやってしまった以上は俺達の責任追及は免れないだろうし、国同士の問題にも発展する可能性は大きい」


 ただ……とセバクターは天井を見上げて続ける。

「この地下研究施設の話については、それこそ機密事項として扱われているみたいだから、国外に流出するとまずい証拠もさぞ沢山ある事だろう。そして、俺達はそれを入手できる場所に居る……この意味が分かるか?」

 ニールは頷く。

「この騎士団とギルドの連中の企みを記載している証拠をここで集めて、自分達の国にそれぞれ持って帰る。それを元に話を纏め、この国の皇帝と話をつける……って所か?」

「ああ。そこはもう国と国の問題になるからあんたには関係の無い話だ。俺達で上手くやっておく」

「助かる」


 感謝の意を述べるニールに対し、ぬっとセバクターの後ろから現われたシリルが彼に手を差し出した。

「これ、持って行け。冒険の証だ」

「これは……ああ、さっきのか」

 差し出されたのは、ニールがセバクターに取られて部屋の隅に転がされてしまった、自分のハンドメイドのミドルソードとロングソードだった。

 それを回収してから再びここに戻って来たシリルが、ニールが自分達と一緒に居た証として渡そうと言うのだ。


 ニールはそれを素直に受け取り、自分の腰にベルトごとスルスルと巻き付ける。

「……それじゃ、少し名残惜しい気もするけど……どうやら俺達はここでお別れの様だな」

「ああ。それじゃ俺……もう行くよ」

 さっきの「持って行け」と言うシリルのその口振りからも、自分達とニールのパーティがここで最後になると言うのが感覚的に分かっている様だ。

 多くは語らない。

 語ったら、何だか寂しい気持ちになってしまうだろうから。


「それじゃ、帰る為の準備をするから一旦その壁画の前から横にずれてくれ」

 そう言ってパーティメンバー6人を遠ざけ、ドアの辺りでスマートフォンを構えたニールは、壁画になっているQRコードが上手くリーダーに読み込まれる様に場所を調整する。

(なかなか難しいけど……良し、ここだな)

 上手く枠の中に収まる様にして「ピコン」と読み取り完了の音がしたその瞬間、スマートフォンから眩い光が漏れ出してニールの身体を包み込んで行く。

「うお……!?」

 徐々に自分の身体が光に包まれるのを見て、ニールは最後の別れのセリフを口に出す。

「皆に色々助けて貰って、大した恩返しも出来なかったが……今までどうもありがとう」


 それを聞き、6人もそれぞれ別れのセリフを口に出す。

「別に恩返しなんか要らねえさ」

「そうだよ。僕達はあんたについて来ただけなんだから」

「ここまで来られたのは貴方のおかげよ」

「そうそう。もしあんたが居なかったら封印は解除出来なかったからな」

「俺達にとっては、それだけでもあんたからの十分な恩返しだ」

「後は俺達に任せて、向こうの世界でも元気でな!!」

 エルマン、イルダー、ミネット、エリアス、セバクター、シリルからそう言われて、ニールも今まで見せた事が無い様な最高の笑みをその顔に浮かべながら、光に包まれて姿を消したのだった。


「……う……ん?」

 照り付ける太陽が眩しい。

 その太陽の光に耐え切れず、腕でひさしを作って薄っすらと目を開けてみると、何やら背中がザラザラしている感触に気が付いた。

(あれ、ここは……)

 身を起こしてみると、そこは自分がたまにカラリパヤットのトレーニングの場所として使っているビーチの隅だった。

 だが太陽の光が照り付けているとは言え、向こうの世界で大活躍してくれて今は自分の右手のそばに転がっていたスマートフォンのディスプレイを見てみると、平日のまだ朝9時ではないか。

 ここは平日だと余り人気ひとけの無い場所なので、チラホラと見える利用客の誰もが自分が倒れている事に気付いていないみたいだ。


 そんなニールが立ち上がってみると、ふと自分の腰が妙に重い事に気が付いた。

「……?」

 ズボンが引っ張られる様な感触があり、視線を下げてみると確かにそこには「こりゃ重いだろう」と納得する物体がベルトにぶら下がっている。

「ああ、これか……」

 向こうの世界では、ずっとこれを自分のズボンのベルトにぶら下げて使っていたので感覚が若干麻痺しているが、ここは地球。

 こんな物騒な物をぶら下げたままだと他人……特に警察官から怪しまれるかも知れないと思い、ベルトから外しておく。

 かと言って、その場に放置して帰る事も出来ないので持って帰る事に。


 そして、自分がこれから行うべき事を口に出してみた。

「……さて、トレーニングも終わったし帰るか」

 その向こうの世界に自分が居た……自分が地球とは違う異世界エンヴィルーク・アンフェレイアにトリップして無事に戻って来た事を証明する、ハンドメイドの武器4本を2本ずつそれぞれの手に持ち、今日は仕事も両方休みなのでその武器の事で警察に止められない内に足早に自分の家に帰る事にした。

 無事に地球へと帰り着き、何時も通りの日常が戻って来た喜びを胸にして。



 ファイト・エボリューション3~35歳の元いじめられっ子のおっさんが、最強(?)のスキルと共に異世界で頑張ってみる~ 完

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。


次作(色々改稿中):https://ncode.syosetu.com/n9023df/

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