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17.バトル終了、そして脱出

 地面に捻り倒した男を一気に組み伏せるニールだが、そこでまさかの思わぬ邪魔が入る。

「おいおい、騒ぐなら店の外でやってくれ!!」

 何とあの店主が他の客と協力して、ニールと男を数人掛かりで持ち上げて文字通り店の外へと放り出してしまった。

「うおっ!?」

「あがっ!?」

 まさかの展開に唖然として動きが固まるものの、先に我に返ったニールが再び痩せ身の男を拘束しにかかる。

「ぬん!!」

「ぐぅ……ああっ、く、くそっ!!」

 両手首を掴んで後ろ手に纏め、腹を下にする形で圧し掛かって男を拘束したニールは男に対して目的を聞くのと同時に忠告をする。


「何故俺を追い掛け回す?」

「お、御前がエジット様の邪魔をしたからだろうが!」

「だからと言って俺が御前達に追い掛け回される理由は無い。俺の事なんて無視をすれば良いだけの事だろう。俺は別に御前達に関わろうとも思っていないんだからな」

 棒読みに近い、物凄く淡々とした口調でそう言うニールから威圧感を覚えた男は力が抜ける。

「俺にこれ以上関わるな。もし御前達がこれ以上俺に関わる様なら、俺もそれなりの対応を取らせて貰うぞ。……行け」

 そんな男に忠告をしたニールは拘束を解き、男を立ち上がらせて背中を突き飛ばした。

 突き飛ばされた男はシャムシールを片手にニールの方を一旦振り向き、そのままトボトボと肩を落として歩き去って行った。


「……あ、あれで良かったの?」

 2人を追いかけて店の外に出て来たユフリーは、一歩間違えば自分の命が無くなっていたであろうニールのその対応に複雑な表情になった。

 しかし、ニール自身にも良く分からないらしい。

「知らん。俺もどうして良いか分からなかった」

「分からないって……」

「分からないものは分からない。しかし、ギルドの連中が俺を狙っているとなればそこに駆け込む事は出来ないだろうし、騎士団長もその英雄と繋がっているのだったら勿論騎士団にも駆け込めないだろうからな。だから俺もどう対処して良いか分からないが……」


 そこで一旦言葉を切ったニールは、今の自分の考えを素直にユフリーに吐き出した。

「俺だって好きでこんな事をしている訳じゃない。別に殺し合いをしているんじゃ無いし、出来る事なら揉め事を起こさずに静かに過ごしたい。あくまでも最終的な目標は俺が元の世界に帰る事だしな」

 そもそも今の状況で揉め事を既に起こしているんだし、これ以上事が大きくならない内にさっさとこの町から出ようとユフリーにニールは言う。

 しかし、彼女は彼女でニールに対して不安があるらしい。

「う、うん……それは良いんだけど、そんな恰好で大丈夫なの?」

「え……」

 彼女にそう言われて自分の格好を見つめ直してみれば、この先で旅をするのには不安が残る服装なのは間違い無い。

 何せ、今の自分の服装は赤のTシャツに青いジーンズ、それに黒のスニーカーと言う出で立ちだからだ。


 そこで旅支度として今の雑貨屋で色々と買い揃えようと思ったのだが、何と揉め事を起こす様な人間に売る物は無いと拒絶されてしまった。

 確かにそれはそうだが……と納得出来る様で出来ないニール。

 しかし、自分がもし店主の立場だったら「店とその周辺から一刻も早く消えて貰いたい」と考えるのは至極当然の考えだろうと思い直して諦めた。

「しょうがない、この町で服を買うのは諦めよう」

「それが良いわね。あの男も結局逃がしちゃったからギルドの他のメンバーに情報が回るだろうし、さっさと町を出ましょう」

 別に服だったらここじゃなくても買えるんだし、と2人で納得して町を脱出する事に。

「次は何処の町に行くんだ? それとも村か?」

「えーっと……ここから1番近い町や村って言うと鉱山の麓に広がるグラルラムの町ね」

「鉱山か……」


 そこにもギルドがあるのかと聞いてみれば、ユフリーは当たり前だとでも言わんばかりの口調で返答する。

「ええ。ギルドはこの国だけじゃなくて世界中の色々な場所に拠点があるの。そのグラルラムの町だって勿論例外じゃないわ」

「となれば、そこでもまた慌ただしくなりそうだな」

 やっぱりさっきの男を逃がさずに、何処かゴミ箱に頭から突っ込んでやって放置しておくべきだったか、と後悔するニールだが今更もう遅い。

「じゃあ、そこで情報収集をしつつ旅の支度を整えよう」

「そうね。そこまでは歩いて3日位だからそこまでの食料をまずは調達しないと」


 そう、必要なのは服だけじゃなくて食料もだ。

「調達する当てはあるのか?」

「酒場から色々と理由をつけて持って来る事は出来るわ。でも、それから先は魔物を狩って現地調達もあるわね。貴方達の世界だとそう言う文化はあるの?」

「まぁ……あるにはあるが」

「なら大丈夫ね。それじゃ行きましょ」

 しかし、ニールにとってそう言う文化は決して身近なものでは無い。

 調達してその場ですぐ食べるとなれば、それこそ果樹園のフルーツ位の物だろうか。

 ユフリーのセリフに地球の文化を当てはめるとすれば、それは恐らくハンターが獲物を仕留めてそこで調理すると言う話になるのだろう。

 それでも、その文化がメインならばここは彼女に任せて進むしか無い。

 まずはこの町を脱出するべく、覚悟を決めたニールはユフリーと共に歩き出した。


 ステージ1 完

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