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178.試練を超えた先で

 28メートル×15メートルのバスケットボールコートがすっぽりと入りそうな広さが、戦闘スタイルをかなり自由に出来て勝利に繋がった要素の1つになったかも知れない、と思いつつ倒れたセバクターの元に駆け寄る。

『見事だ』

 ニールが勝ったのを見て、納得した表情でナスティアが頷いた。

「さぁ約束だ。この扉を開けて先に進ませて貰うぞ」

 自分が今しがた倒したセバクターを抱え起こしてやりつつ、ニールはナスティアに約束を守る様に言う。

『勿論だ。ここの扉を開けたら、後は自分が何をすべきなのかがそなたには分かる筈だ。我はこれで消える。久し振りにこの世界の住人の元気な姿も見られて良かったからな』

 そう言い残し、部屋の中からスーッとナスティアは姿を消した。

 それと同時に扉の方からカチャリとロックが外れる音が聞こえて来たので、ニールに抱え起こされたセバクターがエリアスとミネットに治癒魔術を掛けて貰って、回復してから先に進む。


「何だか凄く長かった様で……短かった様な、そんな気分だ」

 ニールはそう呟きつつ、ロックの外れたその扉を開けて先に進む。

 彼に続いて他の6人も足を進めてみると、またしても広い部屋がそこにはあった。

「ここは……と言うかあれは壁画……?」

 その部屋は今までニールとセバクターのバトルが繰り広げられていた部屋よりも半分位の広さしか無いものの、7人が踏み入れるだけなら十分な広さである。

 そして扉を開けて正面の壁に大きく鎮座しているその壁画が、何よりも7人の目を引くものであった。


 奥の壁に何か奇妙な壁画がある。

(ディルクと戦ったあの部屋にも壁画はあった。だけどここから何か出て来たりしないだろうな? ファンタジーなこの世界だけに、地球では考えられない様な事があっても不思議では無い)

 そのデザインには、ニールを始めとするパーティメンバー全員が何処と無く気持ち悪さを感じていた。

「変な点が並んでいるな」

「見てると何だか気持ち悪くなって来るね、この壁画……」

「そうね。この絵に意味ってあるのかしら?」

「さぁ……ここに描かれているって事は、それなりに意味があって描いてあるんじゃないのか?」

「この地下が「カンバジール」って名前の遺跡になっているって事は、やっぱり古代の何かが関係しているんじゃないのかな?」

「俺には絵の良し悪しなんてさっぱり分からねえけど、これって絵って言うより模様みたいだよな」


 セバクター、エリアス、ミネット、シリル、イルダーは口々に疑問を漏らすが、最後にポツリと放ったエルマンのその一言がニールには引っ掛かった。

「エルマン、あんた今……何と言った?」

「え? いやほら、絵って言うか何だか模様みたいだなって……」

 模様。

 その単語に、ニールは「まさか……」と呟きながらゆっくりゆっくり壁画から離れて全体を見渡せる様に自分の立つポジションを調整する。


 すると、視野を広げた事によってその壁画が何を意味しているのかが理解出来た。

「あ……こ、これは!!」

「何だ、何か分かったのか?」

 明らかに様子が変わったニールにセバクターが問い掛けてみれば、彼は腰のミドルソードとロングソードが揺れる位にブンブンと大きく首を縦に振ってリアクションする。

「これ……QRコードって言って、俺の世界ではかなり見られる暗号みたいな奴だ!!」

 ハイテクの現代では当たり前になりつつある、QRコードがそこにあった。

 例えば、フランスのボルドーにある郵便ポストにはQRコードがついており、それをリーダーで読み取ってみるとボルドーのローカル情報が表示される。

 中国ではバイクシェアリングと呼ばれる、シェア自転車のアプリをダウンロードしてレンタルする時のロック解除にQRコードが使われていたりする。


 日本で生まれ、海外でも普及しているQRコードが、何故こんな異世界の壁画として描かれているのだろうか?

 そう思いながら再び壁画に近づいて行くニールだったが、その瞬間いきなりさっき自分達が入って来た、ロングソードを差し込んでロックが解除されていたあのドアが開いた。

「っ!?」

 パーティメンバー全員が一斉にそのドアを振り向けば、そのドアが開け放たれた場所に見えたのはまず2人の男のシルエット。

 その2人の内、1人は見知った顔の男だ。


「……色々と立ち回って、結果的に個々の封印を解除してくれたみたいだな」

「ネズミがこそこそしやがって……しかも、宝まで勝手に持ち出すとはふざけた奴等だぜ」

 そんな2人のセリフに、ニールを始めとしたパーティメンバー7人は壁画に向いていた足を完全に2人の方へ向ける。

「そっちこそ、俺に付きまとったって何の得にもならないだろうに。あの女までそっちの味方だったと言う訳か。人を安易に信用なんかするもんじゃないって良く分かる奴だったよ。何処で人と人の繋がりがあるか分からないから、迂闊に異世界の事を話した俺も悪かったがな……」

 ニールはそう言って、背後に大勢の騎士団員や魔術師を引き連れているこの帝国の騎士団長とギルドトップの男を睨み付けた。

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