表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

178/186

177.諦めない心

 まさかの展開に唖然としているニールは隙だらけなので、自分が握っているロングソードの柄で彼の側頭部をセバクターが殴りつける。

「ぐあ!!」

 衝撃で思わずミドルソードから手が離れてしまったのをセバクターは見逃さず、2本ともさっきのベルトと一緒に放り投げられたロングソードと同じ様に、今度は足で蹴り飛ばしてまた攻撃手段を減らす作戦に出た。

 相手の攻撃手段を少しでも減らしておけば、それだけ自分が有利になるのは間違い無い。

 それにセバクターが持っているのは自らが得意とするロングソードなので、ニールと同じ様に自分もこの武器を失わない限りは、圧倒的に自分にアドバンテージがあると踏んでニールに向かって行く。


 だからと言って、武器を全て失ってもニールは決して諦めるつもりは無い。

 カラリパヤットでは素手の格闘術のトレーニングだってするし、バック転やハンドスプリング等のアクロバットなテクニックも習得するので、完全に対抗手段が無くなってはいないからだ。

 ニールは自分に向かって来たセバクターの振り下ろしを避け、パンチのラッシュで反撃に出ようとする。

 だが、セバクターも両手でしっかりとロングソードを握って叩き落とされない様にする。

「らああっ!!」

 セバクターがロングソードを突き出して突っ込んで来たので、ニールは身体を横に捻って回避。

 そこからロングソードを持つセバクターの両腕を両手でそれぞれ掴んで、そのままセバクターの顔面へ頭突き。

「ぐっ!」

 しかしセバクターもキックをニールに繰り出して腕の拘束を解除し、ロングソードを横薙ぎに振るってそのままの勢いでニール目掛けて右回し蹴りを繰り出す。

 これがニールの顔になかなか良い勢いでヒット。


 それでも何とかニールは持ち堪えつつ、次に突き出されたロングソードを寸での所で横っ飛びから転がって回避。

 だがセバクターの勢いは収まらず、今度は床にロングソードの刃が叩き付ける位に勢いの良い、上段からの振り下ろしを繰り出して来た。

 ニールは左にずれてそれを回避したが、セバクターはそのまま勢い良く左回し蹴りを繰り出して来た。

 カポエイラの様に下から上へキックが繰り出されるが、上体を反らして彼の足を回避しつつ、カウンター気味に右足でミドルキックをセバクターにぶち込むニール。

「っ!」

 まさかの反撃に若干よろけたセバクターを見逃さず、今度は勢いをつけて左のミドルキックを彼の腹に突っ込んだ。


「ぐほっは!」

 後ろに転がりながらもセバクターも上手く受け身を取り、今度は下段攻撃中心に攻める。

「うお、くっ!?」

 足を素早く動かして連続下段攻撃を回避しながら、セバクターの腹に向けて前にジャンプ。

 そのジャンプと同時に右足を突き出して自分のキックをヒットさせたニールだが、セバクターはへこたれるどころか更に勢いを増して来た。

 ヒュンヒュンとロングソードの風を切る音が響き、横薙ぎ2発から右回し蹴りをニールに食らわせて壁際へと追い詰めて行く。

「ぐ……っ!!」


 そしてまたまた横薙ぎから右回し蹴りを繰り出し、それに反応し切れなかったニールはそのキックを腹に強めに食らってしまい、壁に背中が当たった。

「ぐっお!」

 それを見て、セバクターは不敵に一瞬笑ったかと思うと両手でしっかりロングソードを構え、すぐ彼に狙いを定めた。

「……終わりだ」

 悶えるニールに、自分の得意とする高速突きを繰り出す。

 セバクターのロングソードが、凶刃となって自分に迫るのをニールはその目で見る。


 人間は、死ぬ寸前に自分のこれまでの一生を走馬灯の様に見ると言う。

 ニールも今まで生きて来た、決して全てが順調だったとは言えない35年間の、それこそ下らない様な人生が脳裏に浮かんではすぐ消えて行く。

 その浮かんでは消えて行く光景の中に、当然この世界にやって来てからのシーンも含まれている。

 それを見た時、ニールの目に強い光が宿った。

(まだだ……まだ終わってない!!)

 ここで諦めたら、今までの苦労が全て水の泡だ。


 その諦めない心がニールの身体を動かす。

 頭を左に動かして、セバクターの高速突きをニールはギリギリで避けた!!


 ……と思ったら、そのロングソードの刃の部分が壁に入っていた亀裂に挟まってしまい抜けない!

「っ!?」

「おら、おらっ!」

 ニールはそれを見て、すぐに柄を握っているセバクターの両手を右手で掴み、空いている左腕でエルボーと裏拳をセバクターの顔面へヒットさせる。

「ぐっ、あが!」

 ロングソードから手が離れて彼は後ろへよろけたので、そのままの勢いで今度は2発連続で左の回し蹴りを彼の頭目掛けて叩き込む。


 再び後ろに回転しながら倒れ込んだセバクターは、ニールの回し蹴りによる頭の痛みに耐えながらも何とか起き上がる。

 しかしニールは、そのセバクターが起き上がって来る所を見計らって両足を揃えてジャンプし、空中で前に1回転。

 重力の勢いも合わせた右の踵落としを、起き上がったばかりのセバクターの頭に全力で振り下ろした。

「がっ!?」

 それによってセバクターはドサリと力無く床に倒れ込み、ニールは受け身を取って立ち上がり決着がついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ