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174.宝と仕掛け

「さっきのってニールだよな!?」

「ああ、間違い無い!」

 1階部分を探索していたシリルとセバクターも、獣人であるシリルがキャッチした怒鳴り声と足音に反応していた。

 そしてその騒ぎの主が前方からやって来る事を察知した2人は、周りを見渡して隠れる場所が無い事を知った上で迎え撃つべくそれぞれバスタードソードとロングソードを構える。

 だが、そんな彼等の元に階段を下りて現れたのは何と、自分達が潜入の為に送り出した筈のニールだったのだ。


 彼は右手にロングソード、左手に盾を構えたスタイルでシリルとセバクターに全速力で突っ込んで来た。

 2人は咄嗟に彼を止めようと立ちはだかったものの、ニールは2人がシリルとセバクターだと判別出来なかったのか、ブンッとロングソードを横薙ぎに振り回す。

「うお……っ!?」

「くっ!!」

 斬撃を咄嗟に回避した2人の間をすり抜け、ニールは脇目も振らずに一目散に何処かに向かって駆けて行く。

 そして冒頭に戻る訳だが、彼を追おうとした2人の前に今度はニールを追い掛けていた追っ手の警備兵と魔術師達がやって来たので、その相手をせざるを得なくなってしまった。


 息を切らしつつ、前しか見ないで走り続けるニールは自分の後ろでそんな状況になっているとは知らないままで、ようやくあの地下に続く階段の扉の前に辿り着いた。

「……らあっ!!」

 気合の声を上げつつ、ドアを蹴り破ってその先に現れた階段を駆け下りて地下の水路に向かう。

 自分が今手に持っている宝を回収した部屋を通り抜け、先にある扉を抜けると確かにそこは地下水路だった。

(目的の場所はあそこだな……)

 地下水路と言うだけあってやっぱりドブ臭いのが気になるが、今はそんな事を気にしている状況では無い。


 入り組んでいる通路を走り抜け、水路が狭くなっている所はジャンプしてショートカットし、とにかく全速力で走り抜ける。

 だが、そこでニールはある事を思い出して走るスピードが遅くなって来た。

(あ……そう言えばあの扉ってどうやってロック解除するんだ!?)

 ここまで脇目も振らずに走り抜けて来たのは良かったが、肝心のロックの事が完全に頭から失念していた為、ロックを解除出来なければ扉も開いてくれないのだ。

 研究所の3階からここまで、地下の分を含めて4フロア分を走り抜けて来たニールにとっては流石にカラリパヤットで鍛えた心肺機能をもってしても、35歳と言う年齢もあってハアハアと荒い息を吐き出す状態だ。


 とにかくもう1度調べてみるべく、呼吸を整えながらニールはその扉に近付いた。

 ロックが掛かっている以上、どうにかしてこの扉を開けなければならない。

 気になるのは扉の横にポッカリと空いている、長方形の穴だが……。

(この穴が気になるんだよな。この形が妙だ……)

 カギ穴だったら長方形なのも分かるのだが、カギにしてはこんなに大きなものがあるのだろうか?

 前に何かのスポーツの特集番組で見た様な、車が副賞としてプレゼントされる際にその証明として渡されるゴールドの大きなキーじゃあるまいし……と思いつつ、ふと右手に握ったままのロングソードに目を落とすニール。


(まさか……な……)

 苦笑いを浮かべるものの、良く見てみると何だかサイズがピッタリな気がする。

 ニールはロングソードを構え、その長方形の穴に刃の部分からスーッとゆっくり差し込んでみる……が、何も起こらない。

(サイズはピッタリなんだが……もしかして?)

 もしこれがこの扉のカギだとしたら、タダ差し込むだけじゃなくてグイッとこうやって左右どちらかにグイッと捻ってみて……。


 そう思いながら車のキーの如く右に捻ってみると、鈍くて重い手応えと共にグイッと穴が回ってしまった。

「は、え、あ、あれっ!?」

 まさかの展開に若干後ずさりしてしまうニールの目の前で、ゆっくりと扉が彼を迎え入れるかの様に部屋の中に向かって開いてしまった。

(……入って良いって事か?)

 このロングソードがカギになっていたなんて……と思いながらその扉の先に足を進めようとしたニールだが、そんな彼の後ろから複数の足音が聞こえて来た。

「っ!?」

 思わず身構えるニールだが、水路を抜けてやって来た新たな足音の主は……。


「お、おいその扉……開いたのか!?」

「えっ、どうやったんだよそれ?」

「……そうか、そのロングソードがカギなのか」

 口々に驚きの声を上げるのは、研究所から彼を追ってやって来たパーティメンバー6人だった。

「ちょ、あ、あんた等何でここに……!?」

「あんたが魔術防壁を解いてくれたおかげだよ」

「研究所の人達は全員倒して来たから、調べるなら今がチャンスね」

「さぁ、早くこの先に進もうぜ!!」

 せっかく研究所に潜入してまでここに来たのだし、宝を使って扉を開ける事が出来たと言う事はきっと何かがあるに違いない。

 いや、あってくれないとここまでの苦労は一体何だったんだと思ってしまうので、シリル、エリアス、セバクター、イルダー、ミネット、エルマン、そしてニールと全員が揃った所で、何かある事を期待しつつロングソードを差し込んで開いた扉を抜けて先へ進んだ。

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