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170.思わぬ発見

 足を進めた先にあったのは地下室。それも、まだまだ記憶に新しい場所だった。

(ここは確か、さっきこの場所に潜り込んだ俺達が見た……)

 あの実験施設らしき場所じゃないか? と考えながらニールがその先にあるドアを開けてみる。

 が、そこには確かに水路が繋がっているものの、どうやら別の場所に出て来てしまったらしい。

(あれ、ここは違う場所みたいだな。そう言えばここの部屋には1か所しかドアが無いし……と言う事は、こっちが別のルートになるのか!!)

 記憶違いの場所に辿り着いたニールだったが、それでもこの魔術研究所と地下水路が繋がっている事は照明出来たので、後は魔術防壁を解除するだけだと意気込んでとにかく引き返そうとする。


(ここの何処かに魔術防壁を解除するスイッチみたいなのがあると思うんだけど、まだ上の方を見ていないからな)

 研究所の外でまだ気を逸らし続けているのかどうかは分からないし、怪しい奴等だと思われて騎士団にでも通報されたらそれこそまずい。

 ドアの先の水路の向こう側には、あの変な穴が横にあるドアが見える。

 そこに辿り着く為のルートも見ておきたいものの、頭の中で優先事項を決めたニールは逸る気持ちを抑え込んで一旦ドアを閉め、クルリと振り返って1階に戻ろうとする。


 しかし、その彼の目にある物が飛び込んで来た。

「……あっ!?」

 思わず声を上げてしまうのも無理は無い。

 何故なら、その視線の先に見た物は……。

(これ……あの時の剣と盾じゃないか!!)

 以前、イルダーとエルマンとバトルしたあの国立図書館での出来事。

 戦いが終わった後にユフリーが本性を表わし、ニールの目に指を突っ込んで逃げてしまった。

 そして、それまでの旅路でせっかく集めたロングソードと盾、更に図書館で回収したばかりだったあの謎の破片も一緒に持ち去って逃げられたあの苦い記憶を思い出してしまった。


 それがまさか、こんな所で再びお目に掛かれるとは思わなかった。

 何故こんな場所にこれがあるのかと疑問に思いつつも、すぐに自己解決するニール。

(帝都にある魔術研究所だからだろうな。これだけ広いとなると、それなりの規模で研究をしている筈だし地下に水路まであるんだし……ってそれは余り関係無いか。どちらにしてもここに運ばれて色々と研究をする為に保管されていたみたいだけど、この乱雑な置き方はもっと何とかならないのかな……)

 ロングソードと盾は無造作にテーブルの上に置かれており、その盾の下に破片が隠れる形になっていると言う雑な保管方法に、ニールは眉間を揉む。

(まぁ……とにかくここにあると分かっただけでも良かったじゃないか)


 ディルクから奪い取ったあのペンダントはこうして首から下げていても何とも無いのだが、このアイテム達がペンダントの仲間とは限らないし、またあの大きな音と光と痛みが出たらこの研究所の中に居る魔術師達に気付かれてしまうかも知れない。

(くそ……触っても良いのか、これ……)

 ここに来て躊躇する姿勢を見せるニールだが、迷っていても仕方が無いし意を決してロングソードから手に取ってみる。

「…………っ…………!?」

 思わずギュッと目を閉じて、来るかもしれないその衝撃に耐える姿勢を見せるニールだったが、その柄を握ってみても何も起こらない。


(あ、あれ……まさか大丈夫なのか?)

 パッと手を放し、もう1度ギュッと柄を握ってみるが……やはり何も起きない。

 もう1度、更にもう1度握って離して、握って離して。

 それでも何も起こらないので、目を見開きつつ口元に笑みを浮かべるニール。

「やった……」

 そんなセリフが無意識の内に自分の口から出てしまう位、今までの出来事を全て振り返ってそれをひっくるめて衝撃的な嬉しい体験である。


 しかし、このままでは回収出来ない。

 盾は自分の手に持てば良いし、破片はズボンのポケットにしまえば良いのだが、ロングソードだけはもうズボンのベルトが限界なのでどうにも出来ない。

 ただでさえハンドメイドのショートソードとロングソードを2本ずつ、合計で腰に4本ぶら下げているので何時ベルトが千切れるか分からないのだ。

(うーん、困ったな)

 何か使える物は無いかと周囲をキョロキョロと見渡してみるが、目に入るのは妙な液体の入っているビンだったり実験器具だけだ。

 仕方が無いので右手にそのロングソードを持ち、ソードマンスタイルで回収してしまう事で妥協する。

 それでも無事にアイテムを回収出来ただけでニールは嬉しかった。


 だが、その嬉しさを前に味わっていた事を思い出してテンションが下がる。

(あ、そう言えば俺……あの2つ目の遺跡でヒルトンとか言うあの女2人から、盾を普通に取り返して手に持っていたんだっけ……)

 そうだ、その時も何も自分の身に起こらなかったじゃないか。

 自分の記憶力の悪さに再び眉間を揉みながらも、とにかくこうして回収するのに成功して自分の手に戻って来たんだから結果的には良かったじゃないか、と半ば強引に自分を納得させたニールは階段の上に向かって再び用心しながら歩き出した。

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