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168.別ルート

 やっぱり、ここ数日であのタワーや町中であれだけのバトルや逃走劇を繰り広げた結果、身体がよっぽど疲れていたのであろうニールは爆睡していた。

 しかし、何とか狙い通りの真夜中に目を覚ましたのでそれは一安心である。

(結構寝過ぎたか……。でも、この時間帯なら潜入するのには丁度良い時間だな)

 窓の外は、現代の地球の様な真夜中も起きている人間が多い景色では無い。

 普通の生活をしていればやはり眠くなる夜にはきちんと眠っているのだろう、今は月明かりでしか把握出来ないものの、それでも人気が無い事が良く分かる静けさと闇が支配していた。

 むくりと起き上がったニールは、未だに眠っている他のメンバーをバシバシと起こして回る。

「んあ……何だ?」

「寝ぼけてるんじゃあ無い。そろそろ潜入の時間だ」


 が、良く考えてみれば今からこのまま潜入するのには不安しか無い。

 潜入先の内部情報も把握出来ていない上に、魔術研究所では具体的に何の研究をしているのかとの情報もまだ情報収集部隊の3人から聞いていない。

(急ぎたい所だが、今の段階で乗り込むのはちょっと無理か。せめて内部情報が分かった上で乗り込む事が出来れば……)

 ニールは眠い目をこすったり出発の準備を整える他のメンバーの内、セバクターに声を掛けた。

「ちょっと聞いて良いか?」

「何だ?」

「魔術研究所の話は聞いて来たか?」


 そう聞かれたセバクターは「聞いて来たには聞いて来たが……」と歯切れ悪く前置きしながら報告する。

「魔術研究所では表向きは名前の通り魔術の研究をしている……と町の人間は言っているが、その実態は不明確なんだ。まだ研究途中の魔術って言うのは外部に流出したら色々とまずい事もあるから、その辺りは機密情報として」

「それは分かる」

 地球でも確かに開発途中の製品についてはシークレットの情報とされるし、製作途中の映画だって外部に撮影情報は洩らせるものと洩らせないものがあるのでニールは納得する。


 しかし、納得してもいざその魔術研究所までやって来てみると「これは見つかる可能性が非常に高い」と考えてしまう。

 それに、ここに来る前にニールはとんでもない話をイルダーとエルマンから聞いていた。

「魔術防壁?」

「ああ。その研究所はセキュリティが厳しいんだ。だから不審者を入れない様に魔術防壁でブロックされているんだよ」

「でも、あんただったらもしかしたらその魔術防壁も意味を成さないと思うから、先に潜入して魔術防壁を解除してくれないか」


 前にもこんな事があった気がするな……と遠い目になりつつ、それだったら仕方が無いのかも知れないとニールは半ば諦めモードだ。

(結局、回り回ってこう言う展開になってしまったか。まぁ、考えてみればこっちの方が楽と言えば楽か)

 そう考えながら、ニールは落ち着いて見張りの動きを観察する。

 資材置き場の中には歩き回る見張りが1人、それから正面の入り口の前に直立不動の2人。

 見える範囲内ではそれだけだが、恐らく他の場所にも見張りが居るだろう。


 しかし、ここでずっとこうして居たって始まらない。要は上手く建物に近づく事が出来ればそれで良いのである。

「ステルス作戦しか無いか。それじゃそっちも頼むぞ」

「任せとけ」

 見張り達はイルダーとエルマンが話し掛けて気を逸らしてくれ始めたのだが、まだそこで終わりでは無い。

 覚悟を決めたニールはそんな彼等を横目に、まず近くに積まれている廃材の山の陰に隠れる。

 そこから積み上げられている木箱の陰に移動。

 石畳になっている地面でも音を立てない様なスムーズでしなやか、それでいて遠くまで移動出来るだけの脚のバネを利用した飛び込み前転だ。


 そこで歩き回る見張りがこちらに来たので上手く場所を移動して、彼の視界に入らない様に緊張感マックスでステルス作戦を継続。

(ここまでは順調だ)

 何だか研究施設と言うよりは、コンベンションセンターの様な雰囲気の建物だ。

 イルダーとエルマンの2人が気を逸らしてくれているのもあるが、真夜中なので自分の姿がなかなか見つかり難いと言うのが救いだろうか。

 それでも絶対に見張りに見つからないとは言い切れないし、時間が経てば経つだけリスクも大きくなる。


 なのでキョロキョロとなるべく目の動きだけで何処か潜り込めそうな場所を探すと、1つだけ何とか潜り込む事が出来そうな小窓を発見した。

(あそこからなら、細身の体躯の俺であれば何とか入る事が出来そうだ)

 見張り達に見つからない様に素早く物陰から物陰へ移動し、小窓のある建物の側面を目指す。

 側面には見張りが居ないのでチャンスだ。

 高さとしては目測よりもちょっと高かったが、それは誤差の範囲内なのでニールは助走をつけて壁に足を掛ける。

 その勢いも手伝って窓枠に上手く飛び付き、身軽にその窓を潜り抜けた。

 カラリパヤットではジャンプのトレーニングもするので、こうした身軽な動きはしなやかな身体の動きから生まれるのだ。

 そのままニールは建物の中に入る事に成功し、窓を閉めてカギを掛けた。

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