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167.急激過ぎる方向転換

 ミネットに治癒魔術を掛けて貰い、気絶状態から回復したシリルは素直に負けを認めた。

「負けたぜ。今回も俺が勝つ気満々だったのに、何処かで油断があったんだろうな」

「いや……かなり強かったよ。最初の不意打ちが無かったら俺は負けていた」

 結果的にリベンジは成功した形になったものの、シリルに勝ったからと言ってこの先の戦いに勝てるとは限らないのが現実だ。

 それでも、今回こうして勝てた事はニールの自信に繋がったので何とかなりそうだと思える様にもなった。

「さて、それじゃ今度こそ飯を食おう」

「そうだな」

 こうしてリベンジマッチも幕を下ろし、セバクター達が再度情報収集して戻って来るまで4人は宿屋の中で色々な……主にニールによる地球の成り立ちや文明等について話をしながら時間を潰していた。


 だが、宿屋に戻って来たその情報収集部隊から思いもよらない話が告げられる。

「戻ったぞ」

「おお、お疲れ。どうだった?」

「それが……ちょっとまずい事になってるんだ。さっさと動かないと手遅れになるかも知れない」

「え……何で?」

 イルダーの報告に疑問の声を上げるエリアスの前に、スッとセバクターが歩み出る。

「帝国騎士団とギルドの連中が既に動き出しているらしい。裏切ったって言う英雄の彼女のユフリーって言う女が、何時まで経ってもこっちに戻って来ないし何の報告も無いから、調査部隊をタワーに送り出して調べたらしいんだ」


 世間話を装いつつ巧みに聞き出したと言うその報告を聞き、ニールの脳裏にあの投げ落とした時の記憶がフラッシュバックして来た。

「そ、そうなるとまさか……」

「ああ。あの女が死んだと言うのがバレるのは時間の問題だろう。少なくともあそこに居た敵の騎士団員達は殲滅したから、こうして今までバレる事は無かったと思う」

 しかし、そのタワーの封印であるあの赤いスイッチは再び押していないので、今は誰でも中に入れる状態になってしまっている。

 プラス、その中には調査部隊のリーダーのユフリーを始めとする騎士団員達の遺体を残して来たままなのだ。


「……俺達がやったって言うのが、そこから足が付くかも知れないのか?」

「可能性としてはゼロじゃないだろうな。ユフリーは足を滑らせて落下したって事も考え付くかも知れないが、他の連中は俺達が殺している訳だからあの英雄様の考える事として……」

「だから早めに行動した方が良いだろうね」

「良し、それじゃ今から早速……」

 エルマンとイルダーもニールの心配そうな表情にそう返答し、丁度今は夜なので忍び込むなら今からでも遅くは無いだろうと考える待機組。


 しかし、情報収集組の3人の意見は違った。

「ちょちょちょ、待て待て……確かに今は夜だけどまだこの帝都ランダリルの町中にはそれなりの住民が居るんだよ」

「そ、そうか……」

 今度は武器を忘れない様に手に持ち、宿屋から出て行こうと立ち上がりかけたニールはエルマンに制止される。

 そんな2人を見て、シリルも腹をさすりながらまだ待った方が良いと告げた。

「そういやさっき飯も食ったばかりだし、少し身体を休めてからにした方が良さそうだ。御前達も飯を食って早めに寝た方が良いぞ」


 こうして、下の食堂で情報収集の3人組が夕食を摂っている間に残りの4人は寝る準備をする。

「いよいよだな……」

「ああ。これが最終決戦になるのかは分からないが、あの騎士団長や英雄様に出会わない様に願いたいもんだ」

 緊張した面持ちのエリアスに対し、なるべく敵と出会わない方がスムーズに調査を進められる筈だと考えるシリル。

「上手く行くと良いのだがな」

「そうね。でも辺に気合いが入るとそれが空回りしちゃう事もあるから、油断せずに力を抜いて行きましょう」

「……難しいな、それ」


 ミネットにそう言われて戸惑うニールだが、夕飯を終えて戻って来た3人の内、セバクターから思いもよらない質問をされる。

「そう言えば、ディルクと戦ったのはあんただったよな?」

「ああ、そうだけど」

「その戦った時に、そいつの弟子は居なかったか?」

「……ん? 弟子?」

 ここに来て更に戸惑う様な事を言わないで欲しいと思いつつも、どんな容姿の弟子なのかが分からないと答え様が無いので質問に質問で返すニール。

「すまないが、その弟子とやらがどんな格好なのかとか、顔とか性別とか先に教えて貰わないと俺は答えられない」


 その返答に「ああそうか、すまん」と謝ったセバクターは改めて質問をぶつける。

「ディルクよりも短い黒髪の若い男だ。背格好はその師匠のディルクより少し低い程度。服装はかっちりとした貴族の正装みたいなもので、服の色も同じ様な暗めのものだった気がする。今も変わっていなければの話だが」

 今度こそ容姿を細かく伝えて貰ったのだが、ニールは首を横に振った。

「いや……知らないな。そもそも俺はディルクと戦う事で精一杯だったし、そんな若い男は俺の記憶に限っては見た事が無い。他のみんなはどうだ?」

 2人のやり取りをそばで聞いていた、あの階段から一緒に戦った3人にニールが同じ質問で聞いてみるものの、3人も首を横に振った。

「そもそも、その弟子とやらは何時も一緒に居るのか?」

「ん……いいや、あいつに最後に会った4年前に一緒に居たのを見ただけで、それ以降は……見ていないな」

 セバクターのセリフを聞き、ニールは「じゃあ知らないな」とだけ言ってさっさと寝る準備に入った。

 決戦の時はすぐそこまで迫っている。

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