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165.上手く行くの?

 作戦としては悪くは無いのかも知れないが、今はまだ忍び込むにしても敵の情報が足り無さ過ぎるのでもっと情報収集を頼みたい所だとニールは自分の考えを告げる。

 それを聞いた帝都の情報収集チームは、良し分かったと納得して次の日の再度の情報収集を約束した。

「今回、情報収集している時には何も無かったんだろう?」

「とりあえず今の所は追われたりとか目をつけられたりはしていないと思うが、あの地下水路の見張りを気絶させてしまったって言うのが気掛かりだな」

「ふうむ……だったらまだ大丈夫かも知れないって事か」


 セバクター達のやらかした事がどれだけ向こうに知れ渡っているかがポイントだろうから、それを考えると朝からさっさと情報収集してこの宿屋に戻って来た方が良いだろう、と考えるニール。

「じゃあそっちはそれで任せるけど、こっちの魔術師達の行動についても聞き出せるだけ頼む。シリルの働いていたその王国の魔術師はそうだったかも知れないけど、こっちの連中は違う可能性もあるからな」

「分かった。それと魔術研究所ももっと調べて来るよ」

 情報収集チームの3人にニールはそう頼み、いよいよやるべき事はこれで決まった。

 後はこれが上手く行くかどうかだ。


 顔が向こうに割れてしまっている4人はまた別行動とし、宿屋で待機する事にした。

「危ないと思ったらすぐに戻って来てくれよ」

「任せとけ」

 シリルのお願いにエルマンが片手を上げて反応し、彼とイルダーとセバクターの3人は夜の町中に消えて行った。

「さて、それじゃ俺達は先に飯を食って待つとするか」

 腹ごしらえをしなければ行動に必要なエネルギーも補給出来ないので、宿屋の中で大人しく待ってようと考えるニールだったが、思いがけない展開をシリルがもたらす事に。


「おい、ちょっと待て」

「ん?」

「あんた、これから先の状況を分かっているのか?」

「……んん?」

 そうやっていきなり問い掛けられても、何の事だか良く分からないので首を傾げるしか無いニール。

 それに対し、シリルは自分の腹の中にあるニールに対する気持ちをぶつけ始める。

「この先、俺達は帝国を敵に回しての最終決戦になるだろうと俺は読んでいる。現にもう、英雄の彼女であるあの女をあのタワーであんたが殺してしまったんだからな」

「ああ、それは分かっているよ」


 それはあんたも分かっている事だろうとニールが言うが、シリルの言いたいのはそう言う話では無いらしい。

「そうじゃねえ。あの女に勝った位で油断して貰っちゃ困るんだよ」

「は? 意味が分からん。何が言いたいのかハッキリ言ってくれ」

 別にそんなに回りくどい言い方をしなくても、そっちが俺に対して言いたい事をハッキリ言ってくれればそれで良いんだから……とさっさと結論を話して欲しいニールを見て、シリルも1つ頷いて続ける。

「それじゃハッキリ言おう。俺と勝負しろ」

「へ? いやいや……セバクターとの会話を目の前で見ていたのに、あんたは一体何をどの様に記憶してそんな申し出をしているんだ?」

 前の段階で、既に自分とセバクターとの会話をシリルは目の前で他のメンバーと一緒に聞いていた訳だし、その時の記憶が正しければ何故いきなりそんな事を言い出すのか、シリルに対して疑問が優先されるニール。


 そのシリルの方はシリルで、彼なりの言い分がきちんとあっての申し出らしい。

「もしかするとこの先、あんたはあのアイテムを取りに行く事になるかも知れねえ。もし無事にアイテムを取り返せれば良いけど、無事じゃない確率の方が高いだろうと俺は読んでいる。それにあんたは俺達みたいな戦士や騎士団員達を相手にして、向こうの世界では戦った事は無いんだろう?」

「……まぁ、トレーニングの中でならそうしたメニューはやっているけどな」

「だがトレーニングと実践はまるで別物だって言うのも、あんたは良く分かっている筈だ」

 シリルのセリフにニールは何も言い返せない。何故ならばそれは事実なのだから。

「俺に勝てなかったって言う気持ちもあるだろうし、それを差し引いてもこの先でもしかしたらギルドの英雄だったり、騎士団長だったりと戦う可能性は全くないわけじゃない。向こうがあんたを狙っているんなら尚更その可能性は高くなるだろう。だからここで腹ごしらえの前に俺と1度手合わせをして、経験を少しでも積んでおくべきだと思うがな」


 この時のニールの心情としては「面倒臭い展開になった……」と言うものだった。

 確かに彼の言い分も分からない訳では無いものの、自分としては別に勝ち負けにこだわっているつもりは無いし、今は身体を少しでも休めて来るべき戦いに備えるのが良いんじゃないかと考えている。

(……でも、ここで断ってもいずれはまた同じ様な事を言われそうな気がするしなぁ……)

 食事の後だったり、寝る前だったりのタイミングで手合わせを申し込む可能性も無いとは言い切れないので、ニールは決心して口を開いた。

「分かった……その勝負、受けて立つ」

「そうか、やるんだな?」

「ああ。ただし、この勝負はこれ1回だけ……どっちが勝ってもこれが最後だ!!」

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