表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/186

15.追う者と追われる者

「くっ……見失ってしまったか!」

「何て素早い奴だ……」

 ギルドの連中が動き出していると聞きつけたセレイザとエジットのコンビもニールの追跡をその連中の後ろから続けていたが、あのニールと言う男は裏路地から建物の屋上を伝って追っ手のギルドの連中の対処をしながら最終的に逃げ切られてしまった様だ。

「くそ……一旦下に降りようぜ」

「そうだな」

 セレイザが魔術での浮遊魔法を展開しているのだが、魔力の関係もあってそうそう長くは持たない。

 それに2人を一気に浮かせている分、1人で飛ぶよりも魔力の消費が多くなってしまうのでエジットに言われるがままセレイザは一旦地上へ向かう。


 そのセレイザは地上に降りて、血に飢えた肉食猛獣の様な鋭い目付きで辺りを見回して逃げたニールの行方を捜してみる……が。

「駄目だ、この喧騒では何処に誰が居るのか……」

 心底残念そうにかぶりを振って、腰に帯びているロングソードの鞘に自分の左手を添える。

 皮手袋越しに伝わる鞘の冷たさが、エジットがどうしても捕まえたがっていたあの人間を逃がしてしまった悔しさと虚しさを無言で伝えて来る気がした。

「手分けしてあの男の行方を追うか?」

 そう提案するセレイザに、エジットも皮の手袋に包まれた細長い指を顎に当てて唸る。

「んー……闇雲に歩いて探しても時間ばっかり食うだろうし、手分けして探しても1人ならまた撒かれちまう可能性もあるだろうし……それは得策じゃねえと思う」


 なかなか大きなこのメルサインの町のメインストリートを行き来する人の流れが、この時ばかりは恨めしく思える国の英雄と騎士団長の2人。

「これじゃどーしようもねえな……」

 またしてもあの魔力を感じる事が出来ない謎の人間に逃げられてしまったエジットは、朝日に照り付けられて輝く自分の銀髪をガーッと手袋越しに掻きむしった。

「とにかく時間の無駄にならない様に、少しずつ探してみるしか無さそうだ」

「ったく……あの野郎、捕まえたら骨の1本や2本はへし折ってやらねえと気が済まねえぜ」

 その瞳にゴウゴウと怒りの色を滲ませるエジットと、相変わらずの厳しい目つきで辺りを窺うセレイザ。


 そんな彼等の姿を建物の陰から見つめるニールは、とりあえず一旦逃げ切れた事でホッと胸を撫で下ろしていた。

 後はこのメルサインの町からさっさと退散し、他のギルドの連中や騎士団員達に通達が回る前に出来る限り遠くへ逃げようと考えていた。

(町中に逃げるか……? いや、ここは裏をかこう)

 裏路地からまずは脱出し、そのまま町の出口の方へと向かうニール。

 昨日約束したユフリーには悪いと思うが、自分の身の安全も確保しなければならないので、ここはまず裏路地でひっそりと出店している雑貨屋へと入店する。

 店内に何人か居る客や、店の主人らしき壮年の男に怪しい者だと感付かれない様に平静を装いながら。

(慌てる事は無いんだ。すぐに逃げ切ろうと思うから焦るんだ……)

 下手に周囲を伺えばそれだけで注目を浴びてしまう。

 だから自然体を装って、雑貨を見る振りをしながら時折窓の外の様子をニールは伺う。


 そんな彼の目にある物が飛び込んで来た。

(……あれっ? あれ……だよな?)

 事前にユフリーから教えて貰った、目印となるオブジェが乗っているその屋根は間違い無く彼女が居る酒場だろう。

 しかしこの包囲網が敷かれてしまっている今の状況では下手に身動きが取れないので、この雑貨屋で時間を少し経過させてからまた動こうと画策するニール。

(くそ……緊張して来たな)

 一旦逃げ切ったとは言え完全に振り切った訳では無いので、やっぱり緊張する自分に苦笑いを浮かべながら何とか気持ちを切り替えようと店内の商品に目を向ける。

 女物のブレスレットから始まり、古代ローマのグラディエーターが身に着ける様ないかついシルエットの腕輪が売っていたり、雑貨屋と言うだけあってこの世界で使われている日用品が多数並べられている。


(アクセサリーも売っているみたいだな)

 色々と売り物が並べられているので、この世界の文化に触れる良い機会だと思ってしげしげと鑑賞するニール。

 やけに腕輪が多く売られているのが気になるので、その理由をちょっと聞いてみたい……と興味が湧いて来たニールは店主らしきカウンターの壮年の男に聞いてみる。

「なぁ、ここってやけに腕輪が多く売っているけどこれって何なんだ?」

 しかし、その質問を投げ掛けられた店主の男はキョトンとする。

「え……? 知らないのか?」

「何が?」

「何が……って、それは魔道具に決まっているだろう」

 決まっているだろう、と言われてもそんなワードすら聞いた事の無いニールは当然知る由も無い。

「いや……それがだな、俺は結構な田舎から出て来たもんで良く分からないんだ……」

 これでも役者の端くれとして最大限に田舎から出て来て不慣れな男を演じるニールだが、それでも店主の違和感は拭い切れない様だ。

 しかし、お客ではあるので説明だけはしてくれるらしい」

「……それは「魔道具」と言う物だ。自分の能力を最大限引き出すとか、元々持っている能力を身体の中の魔力と融合させて、本来の自分が持っている以上に能力を引き出せる物だ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ