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146.港町ベルフォルテ

 村からベルフォルテの町までは行きで5~6時間掛かり、レンタルのワイバーンを返却してそこから今度は馬で向かわなければならないので、もしかしたらワイバーンで帝都に向かったチームがベルフォルテの町に来た方が良かったんじゃないだろうか? と今更ながら考えてしまうニール。

 しかし、こちらもワイバーンでもう出発してしまったのだから取り返しが付かない。

「上手く行くと良いけどな」

「そうだな。あの3人はそれなりの実力者だし、特にエスヴァリーク帝国の騎士団長は俺よりも強いだろうし、なかなか頭も切れる感じがするから大丈夫だろう」

(頭が切れる……か?)

 さっきの計画の立て方を見ている限りでは、何となく行き当たりばったりの感じがするのでイマイチその評価にピンと来ないニールだが、ここは特に否定も肯定もせずに黙っておく。


 その後はベルフォルテの町まで時折り休憩を挟んだり、腰に下げているハンドメイドのショートソードとロングソードによる戦い方を、エリアスを相手にしてシリルとミネットに見て貰う。

「あんた、なかなか面白い構え方をするんだな」

 ニールの2本のロングソードによる双剣術を見て、シリルの口をついて出た本音がそれだった。

「ああ、これはカラリパヤットの武器術で習得するものだ」

 双剣術の場合でも、剣と盾を使うファンタジー作品でお馴染みのスタイルでも、カラリパヤットの構え方になるとライオンのポーズが全ての基本になる。


 足を広げてドッシリとバランスを取りつつ身体を安定させた上で、右利きの場合のニールであれば自分から見て手前に位置する右手に武器となるロングソードを持ち、自分から見て奥側の左手で盾を構える。

 中腰のシルエットで相手を見据えながら、右手に持ったロングソードを手首のスナップを利かせてグルグルと縦に回し、相手を牽制けんせいしつつ出方を待つ。

 もしくは自分から左手の盾でガードしつつ突っ込んで行っても良い。

 仮にこの左手に持っている物が盾では無く、今の様にロングソードである場合でも同じ様に牽制するスタイルになる。


 そのカラリパヤットの独特のスタイルの双剣術で、一通りロングソードの方を手に馴染ませて不安を少しでも解消しようとするニールは、ふとシリルにこんな事を聞いてみた。

「そう言えば、俺達のパーティは必殺技を全員が持っている訳だけど、必殺技ってギルドに登録している冒険者が全員習得しなきゃならないものなのか?」

 随分前に、あの裏切ったユフリーも含めて全員の必殺技について説明して貰ったのだが、この世界で冒険者として生きて行くのだとしたら必殺技は必要不可欠なのでは無いか? と疑問に思ったのだ。


 だが、シリルは首を横に振って否定する。

「いいや、別に必殺技なんて持ってない奴も居るぜ」

「そうなのか?」

「ああ、そうさ。勿論その必殺技を持っていて悪い事は無いと思うけど、冒険者全員が戦うばかりの奴じゃないからな。雑用がメインでランクを上げるのに興味が無いって奴も居るし、必殺技を身に着けるのに適性が無いって自分で諦めちまう奴も居る。元々魔力の少ない奴とかがそうで、必殺技って言うのはそもそも体内の魔力を消費して出す技だからな」

「成る程なぁ」

 体内の魔力は個人個人の生まれつきで量が違う、と何時か聞いた記憶のあるニールはそのシリルの説明に心から納得した。


「でも、戦うのであれば必殺技の1つでも身につけておかないと役立たず扱いされちまうだろうよ」

「役立たず?」

「ああ。俺達冒険者だけじゃなくて、騎士団に所属している騎士の奴等は絶対に必殺技を持っている。各国の騎士団の入団試験では必殺技の習得が義務付けられているのが世界基準だからな」

 それを聞き、ニールの中に新たな疑問が生まれる。

「……なら、あのセバクターって言う騎士団長にも必殺技ってあるのかな?」

「さぁな。俺はあの伝説の傭兵様じゃないから分からないよ。合流した後に時間があったら聞いてみれば良いじゃないか」

「それもそうか」


 セバクターにも何時か必殺技……特に、あのタワーの屋上でケルベロスを一瞬で倒してしまったファイナルだかスラッシュだかの名前がついているあれは絶対に必殺技の筈なので見せて貰いたい、と思いつつシリルとエリアスとミネットと共にまた出発。

 休憩と共に食事も摂りつつ、たまにストレッチをしたりカラリパヤットのポーズをしたりで身体をほぐして、やっとの事でベルフォルテの町に辿り着いたのは昼下がりになってからだった。

「あー、やっと着いたな!!」

「本当だよ。と言うかここから馬を借りて帝都の方にまで行くとなれば、またかなりの時間が掛かりそうだな」

 やっぱり先にワイバーンで帝都に向かった情報収集部隊が、その情報収集が終わり次第こっちに来て貰うべきだったよな……とニールは過ぎた過去を後悔しつつ、他の3人と一緒にベルフォルテの町に入る。

「それじゃ私達はワイバーンを返して来るからここで待っててね」

「分かった」

 指名手配中の身であるニールは余り目立つ行動が出来ないので、景色に溶け込む様な気持ちで気配を消しつつボーッと賑わう港町の出入り口付近で他のメンバーを待っていたその時、思いもよらない人物を目にする!!

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