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145.二転三転の計画と振り分け

 そんな不安を残しつつも食事を摂って宿屋で体力を回復した一行は、翌日の朝に準備を整えてから帝都に向かう事に。

 ただし、レンタルしたワイバーンは帝都の南側にある町で返却し、そこからは馬を使って帝都に乗り込む作戦で進める。

 ワイバーンで大っぴらに近づけばそれだけで見つかるリスクが大きくなってしまうし、敵側にもこっちのパーティがワイバーンで移動していると言う情報が伝わっているかも知れないからだ。

「その町から帝都までどれ位掛かるんだ?」

「えーと……そこからだと馬を使えばかなり飛ばして大体2日って所かな。ちなみにワイバーンだと4~5時間位だろうな。徒歩だと大体1週間だ」

 意外と距離があるみたいだが、リスク回避の為なら時間が掛かってしまうのは仕方が無いだろう。


 しかし、敵から奪い取ったワイバーンまで返却は出来ない。

 かと言ってこの村に置き去りにして行くのもそれはそれで不自然なので、メンバーを馬で移動するチームとワイバーンで移動するチームに分ける作戦に変更する。

「レンタルしたワイバーンが2匹だろ? それと敵から奪い取ったワイバーンが全部で3匹の、俺が乗って来たワイバーンで合計6匹。あんたはワイバーンに乗った経験が無いから、一緒に乗って来たあんたを除くとして1人1匹ずつの計算だな。そうなるとレンタルした2匹を返して4匹になるから、まずは南の町に居る時に時間を置いて出発する」

 ワイバーンなら夜でも目が利くから、夜になって帝都に後から来てくれればそれで良いだろうと言うのがシリルの意見だ。


「じゃあそうするとして、問題はそのメンバー分けなんだが……」

 セバクターはこのパーティに参加したばかりなので、誰がメインで指名手配されているのか余り分かっていない。

 ニールが指名手配されているのは知っているんだが……とその先のセリフに詰まっていると、それを察知したシリルがセバクターに代わってメンバーを振り分ける。

「そうだな……目立つ行動をしているのは、あんたとイルダーとエルマン以外の俺達だな」

「分かるのか?」

「そりゃあ当然さ。イルダーとエルマンがこのパーティに入ったのは、あの女が裏切り者だと分かってからだからな。そして伝説の傭兵のあんたはまだ入ったばかり。その前から俺達4人はあの女と一緒に行動していたから、向こうにも俺達4人の事があの女の口から伝わっていると見て良いだろうな」

「うーん、確かにそうだね」

 ウンウンとエリアスがシリルの話に納得する。

「分かった。それならワイバーンで帝都に向かうメンバーは俺とイルダーとエルマンにしよう。俺達だったらワイバーンに乗って帝都に向かったとしても怪しまれる確率は低いから、計画を変更して……そうだな、あんた達よりも先に帝都に入って情報収集しても問題は無いだろうな」


 そこから先の事は帝都で情報が集まり次第また考えると言う事なので、また変わったその計画とそのメンバー分けで、時間を調整しつつ帝都に向かう事にした一行。

 とは言え、まずはレンタルしたワイバーンをその町まで返却しに行かなければならないので、これがネックである。

 この村でもワイバーンを返却出来れば全員が直接帝都に向かう事も可能なのだが、その返却場所が設置されていない以上は仕方が無い。

「あんたがワイバーンに乗れればそのままここから行けるんだけど……」

「すまん、俺の世界だと空想上の生き物だから無理だ」


 エリアスの不満をバッサリと切り捨てる様な形で返答したニールは、そのままエリアスのレンタルのワイバーンに乗せて貰う。

 レンタルワイバーンのもう1匹にはシリルが乗り込み、奪ったワイバーンに乗るミネットを含めて4人で南の町へ。

「それじゃそっちは任せるぞ」

「ああ、任せておけ。このままそのギルドの計画を進められたら、最終的にエスヴァリークにまで被害が及ぶかも知れないからな」

 何時か聞いた様なそのセリフで、シリルにセバクターが返答してからいよいよ作戦開始。


 とは言っても、急に決まった計画なので全てが上手く行く筈は無いだろう、と心の何処かでネガティブな気持ちが顔を覗かせるニール。

 そのネガティブな感情を払拭するかの様に、シリルにこの国の地図を見せて貰う。

「俺達の向かうその南の町ってどんな町か、あんた等は知っているのか?」

「いいや、俺達も初めて向かうよ」

「そうじゃなかったら、この村でワイバーンを返却する為のスポットが何処にあるのかを聞かないって」

「それもそうだな」

 先に飛び立って行ったワイバーン達を空に見てから、自分達が作戦を練っていた村の出入り口に視線を移すニール。


 村の住人に、この村から1番近いワイバーンの返却場所を聞いた結果がその町に初めて向かう事になったので、その時ついでに聞いた情報位しか南の町については知らない。

「ベルフォルテの町って言って、古くから栄えている港町らしい。帝都の広さには及ばないけど、南から船でやって来る旅行者とか冒険者達の玄関口になっているんだってさ」

「へぇ、それじゃそこで情報収集も出来そうな気はするけどな」

「でも余計な事はしない方が良いと思うけどね」

 ミネットが一応ニールに釘を刺しておき、こっちもいざ出発だ。

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