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135.伝説の傭兵

「良し、ここまで来ればひとまずは大丈夫だな」

 この世界の住人である6人はそれぞれワイバーンに乗って移動し、唯一の地球人であるニールはシリルのワイバーンに同乗させて貰って山脈の東にある小さな村までやって来ていた。

 山脈の東に位置している村だけあって帝都からは近いと言えば近いが、さっきのタワーから比べれば大分遠い場所にあるので、ここで態勢を整える事にする。

「さて、宿の部屋も用意出来たし村の食堂で飯を食いながら自己紹介と行こうか」

 シリルの提案で7人はその食堂に入り、隅にある8人掛けのテーブル席で腹ごしらえ。

 それと同時に、まずは突然現れてニールのピンチを救っただけで無く、シリルの口から「伝説の傭兵」と言うセリフまで出させた、エスヴァリーク帝国騎士団に所属しているセバクターと言う男について更に詳しく自己紹介をして貰う事にする。


「俺はセバクター・ソディー・ジレイディール。エスヴァリーク帝国騎士団の副騎士団長を務めている」

「副騎士団長……にしては若い気もするが、年齢は幾つなんだ?」

「25だ」

「ほう……その年齢で副騎士団長か。だったら余程才能に恵まれている上に、努力も怠らないと見える」

 若くして帝国騎士団の副騎士団長を務めていると言う彼の自己紹介に、ニールは感心する素振りを見せる。

「それで、その副騎士団長さんは伝説の傭兵とも呼ばれているみたいだけど……それはどうしてなんだ?」


「それは俺から説明しよう」

 セバクターに代わって、シリルが手を上げて彼の活躍を話し始める。

「彼はギルドに登録している冒険者の中では伝説的な存在なんだ。16歳の時から冒険者家業を始め、この世界で権力を持っている9つの国々全てで功績を残した。特にリーフォセリア王国ではかなりの功績を残し、その国の騎士団にも誘われたらしいが……その時は断ったんだったな?」

「……まぁ」

 気恥ずかしそうな顔をするセバクターだが、それでもシリルの興奮気味の口調による説明は止まりそうにない。

「それでだ、最後にセバクターが功績を残したのが今のエスヴァリーク帝国。そこでまた功績を認められ、帝国騎士団の仲間入りを果たした。そして今は副騎士団長を務めている……これで合っているか?」

「間違ってはいないな」

 寡黙な性格らしく、余り多くを語ろうとしないセバクターは何処か曖昧に短く肯定する。


「……じゃあ、この国のギルドの英雄と言われているあのユフリーの彼氏よりも凄い存在なのか?」

 伝説と呼ばれるからには英雄の彼よりも凄いんだろうな、と考えたニールはストレートにその話を振ってみるが、実際は更にその上を行っていた。

「エジット? ああ、あんなのは話にならないレベルさ」

「そうなのか?」

「ああ。あいつは確かに他国でも活動しているし、ギルドのランクもSランク。だけどあくまで英雄って呼ばれているのはこのソルイール帝国の中だけの話だからな。他の国へ行けば「ソルイール帝国の英雄」として扱われはするけど、だからと言って「世界一の冒険者」では無い。本当に世界一の冒険者なのはこのセバクターだよ」


 確かに言葉通りの意味として捉えるのであればその解釈で間違ってはいないだろうが、伝説、伝説と言ってもこの世界の住人では無いニールにはいまいちピンと来ない。

「まぁ、そっちがそう言うんだったらそうなんだろうが……もっとこう、具体的なエピソードは無いのか?」

「具体的……か。その功績が色々とあり過ぎて、どれを話したら良いか迷うんだよな」

 腕を組んで悩む素振りを見せるシリルだが、ここでセバクターからストップが掛かった。

「俺の話はこの辺りにしておこう。そもそも、今は俺の話では無くてこれからどうやって行動するか……それが本題だった気がするんだが?」

「ん、それもそうか。じゃあまた詳しい話は時間がある時に頼む」


 その流れでこれから子のパーティがどう行動するかを話し合う予定……だったのだが、まさかのセバクターが「あ、ちょっと待て」とまたストップを掛ける。

「その前に、そっちの自己紹介をして貰ってなかったな」

「ああ、俺?」

「そうだ。他のメンバーとは顔見知りだから良いが、あんたとはあの屋上で出会ったのが初めてだ。だから俺もあんたの事をある程度知らなければ、これからの行動の提案も出来ない」


 何だか話が余り進まないなぁ、とニールは思ってしまうが、考えてみれば確かに彼の言う通りでこっちの自己紹介もまだだったなと納得する。

「分かった。俺はニール・クロフォード。伝説の傭兵様よりも10歳上の35歳だ」

「ニールだな、よろしく。ところで聞きたいんだが、何か武術の経験があるのか?」

「ああ。それなりには」

 セバクター曰く、あのタワーの階段でユフリーを下に蹴り落としたのを見て「素人の身のこなしでは無い」と思っての質問らしい。

「それなり……か。それにしては動きもかなり手馴れていた様子だったが、何年位あんたは武術をやっているんだ?」

「今年で20年位になるかな。こっちの世界では見た事の無い様な動きも結構入っているってこのメンバーから言われた事はあったよ」

 ニールがそう口走った瞬間、セバクターの表情が一瞬で変化した。

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