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131.見つかったおっさん

「逆ギレされても困る。むしろキレたいのはこっちなんだがな。御前達とあの魔術師の男の繋がりがあるのはもう調べがついているんだよ」

「怒るわよ、良い加減にしないと……」

「もう怒っているだろう。答えろ。あの魔術師と御前達の関係は何なんだ? そして御前達は何を企んでいるんだ?」

 話がループしそうだと悟ったユフリーは、ここで強引の流れを自分の方に引き寄せるべく言葉を選んで口を開く。

「とにかく、私達はその魔術師なんて知らないし、むしろ繋がりがあるのはそっちだと思うけどね。それで……私達の企み? それは貴方達が知らなくても良い事よ。私達のギルドの野望の為に、本当に良く働いてくれてありがとう」

「だからそのギルドの野望って何だよ? と言うか、この状況でありがとうって言われても嬉しくないんだがな」


 ギルドと騎士団の連合軍にとっては確かに喜ばしい事なのかも知れないが、彼女と自分が全くの偶然で出会ったとは言え、最初から相手の手の内で踊らされていたニールにとっては不愉快極まりない。

 だから礼を言われても何も嬉しくない、とユフリーを睨みつけながらニールは言うが、ユフリーはそんなニールに対してクスッと笑って続ける。

「そう……じゃあ、嬉しくなるプレゼントをあげるわよ」

「何だ、またスモーク攻撃か?」

 もうその手には乗らないぞと身構えるニールだが、それ以上の「プレゼント」をユフリーは用意していたらしい。


「ううん……ここの調査の為に一緒に来ていた騎士団員達と私で貴方達に死をプレゼントするわ!!」

 やっぱり自分達の敵であるのは間違いないらしい。

 そう考えたニールは、ジャケットの背中に背負った槍を自分に向かって突き出そうとして来たユフリーを先制攻撃で思いっ切り前に突き飛ばし、階段の下に向かって前蹴りで彼女を蹴り落とした。

「きゃああっ!?」

「くっそ、一旦逃げるぞ!!」

 下の方から騎士団員の増援が来ているとなれば、この狭い通路の中で囲まれる展開は避けたい。

 階段はそれなりに広くなっているのだが、それも限度がある。

 何より、最初にあの魔術師の男が生み出した魔物の集団と戦った時の様に、これだけの人数が階段で戦えば乱戦は必至。

 もしかしたら味方を誤って攻撃してしまうかも知れないし、それで無くても魔術で巻き込んで被害が及ぶかも知れない。


 その乱戦を避けるべく、パーティメンバーは来た道をまた引き返し始める。

「隅から隅までくまなく調べるんだ!!」

「御前達はそっちを、俺達はこっちを探す!!」

「ここに居る事だけは確かだ。見つけたら絶対に逃がすなよ!! 魔力の無い人間だから何処に居るかは分かりにくい。慎重に探せ!」

 魔力の無い人間と言えば間違い無く自分の事。

 複数の怒声が響き渡り、タワー内にバタバタと慌ただしい足音が幾つも響き渡る。

(まずいな!!)


 これは一刻も早く敵を倒して1階の出入り口を目指すべきだと思ったニールは、自分が覚えているその吹き抜けの場所へと足を進めて行く。

 これだけの高さのタワーなのに階段が1か所しか無いと言うのは明らかな設計ミスなんじゃないか? とニールは考えるものの、よくよく思い返してみれば実際はこうした1つだけの階段のビルやタワーも珍しくは無いかもしれないと思い返しつつ、先程の渡り廊下が沢山ある吹き抜けの場所に戻った。

 ここから先は階段が両側に1か所ずつあり、一部が崩れているとは言え渡り廊下を通っての移動も出来るのでバトルの展開にバリエーションを持たせやすい。


 しかし多勢に無勢なのはどうしても否めない。

「居たぞー!!」

「ちっ!」

 ユフリーの増援としてやって来た騎士団員達に早速見つかったニールは、舌打ちをして踵を返してから階段を上る。

 その階段を上る途中でストップして身体の向きを180度変え、さっきのユフリーと同じく襲い掛かって来た騎士団員を階段の下に蹴り落とした。

 更に続けて向かって来た騎士団員には、普通にしゃがんで攻撃をやり過ごし、そのまま勢い付いて真っ逆さまに落ちて行って自爆したのを見届けてからニールは先へ進む。


 その階段から繋がっている通路は余り広くもないので、上って行く時の魔物と戦った要領で今度は騎士団員達を相手にするニールを始めとするパーティメンバー。

 腰のハンドメイドのショートソードを戦う度に上手く扱える様になって来たニールも、そのショートソードとカラリパヤットで培った上がる足によるキックを駆使して戦う。

 更に斬ったり突いたり蹴ったりするだけで無く、通路から続く部屋のドアに上手くその騎士団員の身体を挟み込んだり、更に上の階に向かってそこから下に敵の身体を投げ落としたりと、地形を存分に活用して戦力差を少しでもカバーする。

 ユフリーはこのタワーを調べるのにそれなりの増援を連れて来ているらしいので、ここで減らせるだけ減らしておきたいと考える一方で、まだ気になる事がニールにはあった。

(そう言えば、ミネットとイルダーはどうしたんだ……!?)

 下の階に置いてけぼりの形になったパーティメンバーの心配をしながら戦っているニールの目に、恐ろしい程の素早さで肉迫して来る人物が映った。

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