表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/186

12.騎士団長と国の英雄

https://ncode.syosetu.com/n7580fb/1/

登場人物紹介にシリル・アストレイアを追加。


https://ncode.syosetu.com/n1363eo/1/

前作の登場人物紹介にも過去のプロフィールで追加。

「そうか、だったらその男に私も1度会ってみたいものだな」

 ソルイール帝国のメルサインの町の騎士団の詰め所。

 その中にある大きな執務室でひざまずくエジットの目の前で、感心した様な口調で騎士団長のセレイザが後ろ手を組んで、夜が明けたばかりの窓の外の町並みを見下げながら呟く。

 この帝国の人間は好戦的な人間が多い。

 と言うのも国のトップである皇帝が好戦的であり、それに呼応するかの様に帝国軍の士気も普段から相当に高い。

 そしてエジット達ギルドの人間も勇猛果敢な事で知られており、他国のギルドの人間の倍以上は戦果を出しているとの事で国内外を問わずに名前を知られている者も多い。


 そんな帝国騎士団のトップである騎士団長セレイザと、ギルドのトップに君臨しているエジットの次なる狙いはあの奇妙な人間の事についてだった。

「と言うよりも……その男はあんたも会ったんだろ?」

「いや、その時はただ単にすれ違っただけだ。御前の報告を聞いてようやく容姿が一致した。その男を捜すとしよう」

 セレイザはあの時、怪我人の治療の為に薬を分けて貰いに行った診療所でその茶髪の男とすれ違ったのである。

 そしてその男が自分の横を通り過ぎた時に、恐ろしい程に存在感を感じなかった違和感の理由がハッキリ分かった。

「まさかとは思うが、そんな人間が居るのであれば帝国としても放っておく訳には行かないな」

「ああ。まさか足止めのオーラの魔術を使ったのにあいつにはそれが全く効かなかった。と言うよりもはなっからその存在その物が見えていなかった様に、あいつは崖に向かって何の迷いも無くジャンプして行ったんだ。俺の長い冒険者生活の中でも初めての体験だった」


 実はエジットは、あの時崖に向かって走り出したあの茶髪の男にオーラを使った魔術を放って壁を作り出して足止めをしたつもりだった。

 しかしあの男には何の効果も無く、オーラがあの男の身体をすり抜けて行く光景がはっきりと見えたそのシーンは今でも記憶に新しい。

「もしこの世界に、魔術が通じない人間が居るのだとしたら」

「もしこの国に、魔力を感じる事の出来ない人間が居るならば」

「「そいつを捕まえて、研究材料にする!!」」


 2人の考えは声がはもる事で完全に一致した。しかも、それ以外にあの男を捕まえなければいけない理由がまだ2人にはあった。

「俺はあの時、あの山道であいつに先を越されているからな。かなりの実力者と見受けたが」

「エジットがそう言うなら間違い無さそうだ。だがそれ以上に、今回御前に託していたその盗賊団討伐の任務は、あの他国で散々被害を出していた盗賊団を私達ソルイール帝国が捕らえる事で、この世界での名を挙げるつもりだったのだ。しかし……もしあの男が何らかの手段で国外に脱出し、あの盗賊団を倒したと吹聴して回ったとしたら……?」

「それはこの国にとって、名も無き冒険者に先を越される程屈辱的な事は無い。ましてやギルドに登録すらしていない上に、見た所武器を持っている様子は無かった。となれば体術だけであの盗賊団を壊滅させたと言う事になる。そこまで吹聴されたとしたら、今まで勇猛果敢で名を売って来たソルイール帝国騎士団よりも更に上の存在が居ると言う事で一気に評価が下がる……だろ?」


 セレイザは帝国の評価を落とす危険性があると感じ、エジットはあの男に以来を潰されたと言う事でメンツとプライドも潰された。

「となれば、やる事は1つだ。少数精鋭の部隊を騎士団から人選して作り、秘密裏にあの男を探し出す。帝都から出られる前にやるしか無い。手伝ってくれ、エジット」

「分かった」

 騎士団には興味が無いが、今回ばかりは協力を惜しまないとエジットも快くその騎士団長の依頼を引き受けた。

「この町からもう出てしまったならこちらも手間が掛かるが、そうで無ければ捕まえるチャンスは山程ある。それに……ここにもギルドはあるだろう?」

 セレイザのニヤリとした笑顔に、エジットもその先の言いたい事を察して頷く。

「分かったよ。だったら俺もギルドの連中に声を掛けておく」


 少数精鋭の部隊を編成するのは良いが、エジットもエジットで今回の盗賊退治の他にもやる事があるのだ。

 そもそも今回の盗賊退治に関して大きな任務が動いているので、それをスムーズに遂行する為にも見知らぬ冒険者に邪魔をされる訳には行かない。

「とにかく、その不審な人物の行方をこの町中で捜せるだけまずは捜そう。私も協力するからな」

「ん……そうしてくれると助かる」

「とは言ってもメインの任務はあくまであれ(・・)だからな。それを忘れない様に」

「そうだな。そもそもそれが元々のあんたの依頼なんだし、俺だってその任務が成功すれば……だろ?」

「そうだ。だから盗賊を潰してくれたその男には感謝の気持ちも無い訳では無いが……どうもその男を放っておくと色々と厄介な事になりそうだからな」

「ああ。この国のギルドと騎士団の俺達を敵に回すとどうなるか教えてやるぜ……」

 邪魔な盗賊団を潰してくれたのは良いが、自分達のメンツだって色々とあるのだからここで引き下がる訳にはいかない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ