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127.思わぬ乱入者

 図体が大きい分、余り動かなくてもニールの動きに対応出来るだけの良いポジションを獲得する事に成功したケルベロスは、更に自分のペースに持ち込んで異世界の人間を窮地に立たせようとする。

 先程からずっと吐いて来ている炎のブレスは勿論の事、野生の動物らしい特徴と言える鋭い爪が生えた前足での引っ掻き攻撃、更には図体に見合わない身軽なジャンプをしてニールを上から踏み潰そうとまでして来る。

 極め付けは、後ろに生えている短めの尻尾をブンっと上手くコントロールして振り回して来る。

 ニールの目から見てもかなり戦い慣れている様子だ。

 野生の競争を勝ち抜いて来た経験が惜しみ無く活かされているその戦い方に、ニールの限界はすぐに訪れそうだった。


(俺、ここで終わるのか……っ!?)

 この状況ではどうにも出来そうに無い。

 例えば、これが映画とかドラマの世界であれば誰かが助けてくれたり、上手い具合に隕石か何かがケルベロスに直撃したりするのだろうが、これは紛れも無い現実なだけあってニールを助けてくれる救世主の出現も、都合の良い天変地異も起こってくれそうに無かった。

 つまり自分でこの状況を乗り越えなければ、ニールには死あるのみだ。

「っ、ああっ!?」

 引っ掻き攻撃が自分の身体の横を掠める。

 考えるよりも身体を先に動かさなければ殺されてしまう。

 かと言って、自覚出来ている通りニールには反撃出来る手段が無かった。

 パンチやキックなんて効きそうに無いし、関節技や投げ技も掛けられる相手では無い。

 武器を持っているには持っているが、このケルベロスはそれを振るえるだけの隙を見せてくれそうに無いし、屋上から降りて下の階まで戻ろうと思ってもそっちに丁度ケルベロスが居るので通してくれそうにも無い。

「だああっ、くそ……っ!」


 ここで終わってしまうのかと諦めかけていたその時、ふと空の方に黒い影がポツリと見えて来た。

「……ん!?」

 空を見上げたニールがその黒い影に気が付いたまでは良かったが、明らかに尋常では無いスピードで屋上に向かって来ているのが分かったので、思わずそっちに意識を向け続けてしまう。

(おっ、おい……あのスピードはやばいんじゃないのか……!?)

 ケルベロスから大きく距離を取り、奴が近づいて来る前に今度はじっくりとその影を観察する。


 それはどうやらワイバーンらしい。

 まさか、下で待たせている筈のワイバーンが自分の意志でこの屋上目掛けて飛んで来たのだろうか?

 そう思っていたニールだが、良く見てみるとそのワイバーンは今まで自分が乗って来ていたレンタル用のワイバーンよりも一回り大きい上に、背中には誰かが乗っている。

(ま、まさか……)

 それを見て、まさかギルドの追っ手の誰かかと推測しつつ再び近づいて来たケルベロスから逃げ始めるニール。

 ここでギルドの追っ手まで来てしまったらもうどうしようも出来ない。

 そもそも、さっきの男がギルドの関係者だと言う線もあり得ない話では無いのだ。


 一方、そのワイバーンは極限状態になっているニールと余裕のケルベロス目掛けて一直線に急降下して来る。

 その動きには迷いが見えない。

 更に何者かがロングソードを片手に持って、そのワイバーンの背中から身軽に屋上に飛び降りて来た。

 乗り手を失ったワイバーンだが、良く飼い慣らされている様でそのままケルベロス目掛けてトップスピードを維持したまま体当たり。

 ドゴン、と凄い音をさせて煙を巻き上げながらケルベロスをブレーキ代わりに急停止。


 体当たりされた方のケルベロスは横倒しになりながら屋上を滑るものの、何とかギリギリで屋上から落ちずに済んだらしい。

 痛みと衝撃を堪えながら起き上がろうと踏ん張るものの、そこにワイバーンから飛び降りて来た人物が駆け寄りつつ一気にジャンプして、頭上からロングソードをケルベロスに向かって振り下ろす。

「はあああっ、ファイナルカイザースラッシャあああああっ!!」

 ニールにも聞こえる程の叫び声を上げながら、振り下ろされたロングソードがケルベロスの3つの首目掛けて叩き付けられる。


 その攻撃が首の1つに触れた瞬間、物凄い爆発と共に一気に3つの首が切断されるのをニールは見てしまった。

「うお……!!」

 首を飛ばされたケルベロスは爆発の衝撃で更に吹き飛び、屋上からスローモーションで落下して行った。

(お、終わった……のか……?)

 余りにも唐突な出来事であり、そして自分が逃げ回る事しか無かったあのケルベロスを、ワイバーンのサポートがあったとは言えこうも簡単に倒してしまった謎の人物。

 あの人物は一体何者なのだろうか?

 そもそも、何故この屋上にこうして突っ込んで来たのだろうか?

 屋上からケルベロスが落下して行ったのを見届けたその人物は、ロングソードを腰の鞘に収めてニールの元に近づいて来る。

 それを見てニールは少し身構えながらも、相手がどう出て来るのかを待つ。

 ケルベロスを一刀両断した人物は、ピンク色の髪の毛に赤い上着、水色の胸当てに肩当てにすね当て、白いズボンの若い人間の男だった。


 ステージ8:完

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