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121.上階の罠

 ミネットをそのフロアに残したまま、更に一同はそのフロアを探索する。

「当然だが、まだまだ上があるんだよな」

「ああ。ミネットを余り待たせちゃまずいから早く上に向かおう」

 メンバーが減って戦力がダウンした今、5人はタワーの最上階まで早く突き進むしか無い。

 だが、その上のフロアに向かってタワーの中を突き進む間にもまた魔物が通路で行く手を阻んで来る。

「どけええええ!!」

 シリルが先陣を切って飛び込み、その後ろから残りの4人で援護する。

 弓の使い手が減った事で後ろからのサポートが今までよりも少なくなるのは当然だが、空を飛び回るタイプの魔物に対しての攻撃手段が少なくなった方が痛い。

 幸いなのはこのフロアを始めとして、屋根のある屋内がバトルフィールドなので自由に飛び回る事が出来る環境では無い事だろうか。

 しかし、その天井が低い事が更にこの後パーティメンバーを追い込む展開に繋がるとは、この時点では誰も知る由も無い。


 基本的に、上のフロアに進む階段はそれぞれのフロアに1つだけ。

 それを見つけてしまえば上に進めるので迷う事は無いのだが、例えばパーティを分ける形で上のフロアへ進む……と言う作戦が使えないのはデメリットだ。

 パーティが固まって進めるメリット、戦力を分散出来ないデメリット。

 1か所に固まると言う事は当然纏めて狙われやすいと言う事でもあるので、フロアに居る魔物と戦う時はなるべくばらけてそれぞれが戦う様に心掛けている。

「くそ……あの魔術師みたいな奴は一体何処に行ってしまったんだ?」

 まさか自分達がタワーを上っている間に外に出てしまったのかも知れないが、元々ここに来た目的はニールが地球に帰る為に必要……かも知れないアイテムを探す事なので、あの魔術師は別に倒しても倒さなくても良い存在かも知れない。


 その「かも知れない」の予想をしながら一行は9階まで上がって来たのだが、ここで次の事件が起こる。

「ふぅ……ここも片付いたな」

「ああ、それじゃあそこの階段から上に進むぞ」

 8階も制圧して更に上に向かうべく、一行は見つけた階段を上ろうとした。

 だが、今までずっと魔物と戦って来て疲れと乳酸が身体に溜まっており、ミネットを待たせている事もあって焦りもストレスも溜まっているこのパーティは、階段を見つけた事で心に少し余裕が出来た。


 その「余裕」は言い換えれば「油断」になる。


 完全に階段の方にばかり注目していたパーティメンバーがその階段に差し掛かった時、最後尾を歩いていたイルダーが天井の違和感に気づく。

「……!?」

 階段と通路の境目の天井に、青白い魔法陣が張り付く形で唐突に展開される。

 それを見て、咄嗟にイルダーは先を行く4人に向かって叫んだ。

「おい、危ないぞ!!」

「え?」

 振り向いたエリアスを思いっ切り階段の方に突き飛ばし、その勢いを利用して自分は後ろに飛ぶイルダー。


 その瞬間、魔法陣が爆発して天井がガラガラと崩れ落ちて来る!!

「うおおおおっ!?」

 突き飛ばされたエリアスが他のメンバーも一緒に突き飛ばす様にして、まるでドミノ倒しの如く階段に倒れ込んで難を逃れた4人。

 しかし、エリアスを突き飛ばしたイルダーは……。

「お、おいイルダー!! 生きてるのか!?」

 天井のガレキの向こうに消えて行ったイルダーに対してシリルが呼び掛けると、無事なトーンの声で返事が。

「ああ……僕は何とか大丈夫だよ。でも後ろに飛んだ時に腰を打っちゃったんだ」

「何だって!?」


 腰は人体のバランスを取る為の大事な部分なので、そこにトラブルが発生すればパフォーマンスは大幅に低下する。

 とにかくイルダーの手当ての為にガレキを退けようとするパーティメンバーだが、想像以上のガレキの多さでなかなか作業が進みそうに無いのを見て、当のイルダーは作業をストップさせる。

「君達も疲れてるんだろう。それにガレキは見ての通り山積みで、そっちの階段の入り口も見えないから先に行きなよ。このフロアは殲滅したんだし、僕はしばらくここで休みながら瓦礫を撤去して行くよ」

「何言ってるんだよ、一緒に……」

「あいつに逃げられたら、ミネットも僕も悔しいんだよ!! だからさっさと行ってくれ!!」

 自分のセリフをイルダーに遮られたシリルが「分かった、無事で居ろよ」と言い残して他の3人を引き連れて階段を上り始める。

 ここに来てイルダーとも分断され、更に進むパーティメンバーが減ってしまった。


「……あれで良かったのか?」

 自分を助けてくれたイルダーを置いてけぼりにしたシリルに、若干トゲのある口調でエリアスが訪ねる。

 しかし、そこはシリルも迷っていたらしい。

「俺だって本当は連れて行きたい。だが、あいつの言い分も一理ある。ケガをした奴を無理に連れて行ってもカバーし切れるかどうか分からないし、早くあの魔術師野郎を追わなきゃならないしな」

「くそっ……このタワーの階段が、あの1階以外ではそれぞれの階に1か所にしか無いって言うのがムカつくぜ……」

 ガツンとブーツの底で床を蹴るエルマンだが、それを見て冷静にニールが呟く。

「床に当たり散らしている暇は無いぜ。とにかくあいつを追うんだ。そしてイルダーもミネットも早く助けてやらないとな」

「……ああ、そうだな」

 ニールのセリフに冷静さを取り戻したエルマンを引き連れ、残った4人はその先の階段を上がって10階へ向かう。

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