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119.タワーは続くよこれからも

 その疑問は一切解消されないまま、ニールとシリルはあの崩壊した渡り廊下の下を潜って迂回し、その先にあるシャッターの向こう側から降りて来たと言う階段を逆戻りする形で上がる。

 そして他の4人が戦っていたと言うシャッターの向こう側へと進むと廊下に繋がっていた。

「いかにも何か出て来そうって感じだな……」

「さっきは俺達4人であらかた出て来た魔物を潰したけど、まだ居るかも知れないな」

 エリアスの言う通り、廊下の床や壁には魔物の死骸や体液がそのまま放置されていた。

 廊下の突き当たりには木製のドアが見えるので、さっきのメカチックな魔物が沢山居た大部屋の階段も気になるものの、そっちは後回しにする形で一同はドアの先へ。


 ところが……。

「あ、あれ?」

「何よ、ここってさっきの大部屋じゃない!」

 木製のドアの先には、自分達が最初に踏み込んだ金属製のドアの部屋に続いていただけだった。

 その木製のドアのすぐ横に上の階に続く階段があるので、どうやら渡り廊下で繋がれていたただの廊下、と言うだけだったらしい。

(デザイナーのセンスを疑うぜ……)

 ニールはやれやれと無意識に首を横に振り、彼を先頭にして今度こそ3階へと向かう一同。


 すると、その3階部分には2階と同じ様な部屋――広さは1フロア丸ごと――があった。

 そこでも同じ様にメカチックな魔物が闊歩しているので、2階部分と同じ様にそれぞれ役割分担をして殲滅して行く。

「良し、ここも大丈夫だな。だけどまた上もこんな感じなのか?」

 エルマンがそう呟きながら、部屋の奥にある上への階段を見据える。

 しかし実際に上に向かってみないと分からない以上、それが事実かどうかも分からないので用心しながら上へ進む。

 ……のだが、この時点で一行は何だか嫌な予感がしていた。

「なぁ、ミネット……」

「うん、感じるわね……これは明らかに殺意よ」

 肌にビリビリと感じる、突き刺さる様な圧力がたっぷりの気配の正体。

 この気配……殺意の出所は一体何処なのだろうかと、階段を上り切る手前で一行は前後左右上下に視線を巡らせる。


 そして、その気配の出所を真っ先にキャッチしたのはニールだった。

「……おい、あれ」

 ニールが階段の先を指差すと、踊り場で仁王立ちをしている魔術師(?)らしき男の姿が。

 しかし、他の5人はこのタワーに初めて来た時と同様にまたもや「見えていない」らしい。

「え? 何処だ?」

「何処って……ほら、あそこに居るだろう。魔術師みたいな痩せてる男が……」

「いや、全然そんなの見えないわよ?」

「……まさか、また僕達に見えないものがあんたには見えているのか?」

「またか……」


 ニールの魔術が通用しないと言う特異体質はこのタワーの中でも効果があったらしく、そのニールのリアクションと他の5人のリアクションの違いに魔術師(?)の男も気が付いたらしい。

「ほう、僕の姿が見えるとはね……これは驚いたよ」

 今度はニール以外の5人にも姿を見せたその魔術師の男が、感心した様子で一行の前に立ちはだかる。

 男は所々に金色の装飾が施されている紺色のローブを羽織り、その下に履いている黒い胴衣も、ローブと同じく金色の縁取りがされている。

 まつげの長い切れ長の赤い目に、ローブよりも黒い闇の色の長髪は腰に届く長さで、天井から差し込むライトに照らされている部分は青く輝いている。


 手には紫色の杖を持っているそのトータルコーディネートは、まさに「魔術師」と呼ぶに相応しい。

 ローブの袖から出ている日に焼けていない白い手には、それぞれ指に黒の不気味なリングを嵌めている。

 持っている杖と同じく、恐らくそれも魔術に必要な道具なのだろうか?

 それともただのアクセサリーなのか、パーティメンバーには判断が付きかねる物だった。

 だが、ニールが気になったのは彼の足元だ。

(……魔術師だったら、あんな金属製のブーツなんて履くかな……?)

 ローブの下から出ている足が金属で覆われているのを見て、違和感を覚えながらもニールは魔術師に向き直った。


 明らかに怪しさが満点のこの痩せ身の男だが、その男の一言を皮切りにして6人は一気に劣勢に追い込まれる事になる。

「だけど、そう簡単に行くと思ったら大間違いだからね!?」

 男がそう言うと、ニールを除く(ニールにはそもそも見えない)5人の足元に紫の魔法陣が広がり、そこからホラー映画のゾンビの如く人型のガイコツ兵士……いわゆるアンデットを始めとして、小型ではあるものの狼やライオン型の魔物も多数一緒に姿を現わした!!


「うわあああ!! 何だこいつ等!!」

「くっ! こんなトラップがあったなんて!!」

 アンデットと言えば特にニールにとってはデジャヴである。

 6人はパニック状態になりながらも、下の大部屋と同じ様に役割分担で応戦出来る事にすぐに気がついたし、階段だからと言って怯む事無く的確に1体ずつ潰して行く。

 しかし、倒しても倒しても魔物達は湧き出て来る。

 やはりここは、さっきまでニールにしか見えていなかったあの男をどうにかしなければいけない様だ。


 このままでは力尽きて殺されてしまうと考えた6人は、魔物を潰しながらも何とか男に接近しようとした。

 だが、先程の男のセリフは大口では無い様だった。

「甘いんだよ」

 魔物達の攻撃の隙を突いてエリアスが男に弓を引き絞るものの、男は魔術防壁を作ってしっかり矢をガード。

 ならばとそこにエルマンがバトルアックスで斬りかかるものの、これも同じく魔術防壁でガードされてしまう。

「くそっ、ダメだ!」

 男は自分をグルッと囲む様にしてドーム状の魔術防壁を張ってしまっている様で、武器による攻撃はおろか魔術もその男には届きそうに無かった。

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