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109.ようやく辿り着いた3つ目の遺跡

 そんな「~~だろう」の連続で推測でしか無い会話を終わらせた一行は、ワイバーンに乗り込んで空に舞い上がる。

 これから自分達が向かう3つ目の遺跡は一体どんなものなのだろうか、と不安と期待の入り混じった感情をニールは持ちながら、そろそろ夕暮れ時に差し掛かっているこの世界の景色を下に見て進む。

 現在はシリル、ミネット、エリアスの3人で乗っている1匹と、イルダー、エルマン、そしてニールの3人で乗り込んでいる1匹で飛行している。

「そう言えばあんた等なら知っているか? 俺達が向かおうとしている次の遺跡ってどんな所なのか」

 ニールがその同乗しているイルダーとエリアスに聞いてみた所、どうやら2人はもう1匹のワイバーンに乗っている3人よりも少しだけ知っているらしい。

「あー……こっちに来て色々と情報収集する内に聞いた話なんだが、それっぽい場所は王都のすぐ近くにあるにはあるんだよ。だけどそこ、どうにも空洞になってるっぽくてな」

「空洞?」


 それは何処かにポッカリ穴が開いた洞窟なのか? とニールはイメージしてみるが、実際はその更に斜め上を行くものだった様だ。

「いや……ええと、地面に穴が開いてるみたいなんだよ。それこそ底が見えない位に深い穴が。でも、そこを調べようとすると見えない物体に阻まれて一向に調査が進んでいないらしくてね」

「見えない物体か……」

 それって、見えない壁に阻まれて進む事が出来ないとか言われていた以前の遺跡と同じものなのかな、と今度は考えるニールだが、実際にその現地に行ってみなければ分からない事もあるだろうと強引に納得してみる。

「何か仕掛けみたいなものがあるのかな?」

「さあねえ。少なくとも、この国の人間じゃない僕達にとっては分からないね」


 そんなこんなで紆余曲折(うよきょくせつ)あったものの、あの地図を手に入れた一行は赤い印の地点に向かってワイバーンを進ませていたのだが、段々そこに近付くにつれて違和感を覚え始める。

「こ、これ……?」

「これが遺跡だって言うのか?」

「どう考えてもただの穴だよね、これ……」

 シリル、ミネット、エリアスのトリオが乗るワイバーンの上では、その場所の光景に思わず絶句してしまうその3人の姿。


 一方でイルダー、エルマン、そしてニールのトリオが乗っているワイバーンの上は納得の声で溢れていた。

 ……1人を除いて。

「あー、確かに僕達が掴んだ情報通りだな」

「そうだな。どう見たってここからじゃあでっかくて深い穴にしか見えねえよ」

「……おい、何を言っているんだあんた等は」

「え?」

「どう見たって、如何にも物々しくて高いタワーが目の前にあるじゃないか」

「へ? おいおいオッサンこそ何言ってんだよ?」

「ん?」


 何だか会話が噛み合っていないので、一先ず穴から少し離れた場所にワイバーンを着陸させてパーティメンバーの6人が合流する。

 周りは見渡す限りの森で、木々の中から変な動物の鳴き声や鳥の羽ばたく音が聞こえて来る以外は葉っぱの匂いと土の匂いが風に乗って6人の鼻をくすぐる。

 しかし、そんな匂いや音に対して構っている場合では無い。

「……え? ここにでっかい塔があるだって?」

「ああ。俺には物凄く高い塔が見えるんだが……あんた達5人には見えないのか?」

 イルダーとエルマンからまだ塔の場所の詳細を聞かされていなかったシリル、ミネット、エリアスはその話を聞いた後、改めてニールの話にイルダーとエルマンと共に耳を傾ける。

「ううん、私にはこの黒くて大きな穴が向こうまでポッカリ空いている様にしか見えないわよ」

「俺もシリルとミネットと同じ意見だよ。エルマンとイルダーもそうなんだろう?」

「ああ、穴しか見えないな」

「僕もそうだよ。あんた……一体何が見えてるんだ?」


 この世界の住人の5人から疑いと好奇の視線を向けられたニールは、腕を組んで考え込む素振りを見せる。

「え、あれ……? 俺がおかしいのか? いやでもここにこうやって俺の手にもちゃんと触る事が出来ている訳だしな……壁がさ……壁……」

 自分以外の誰にも見えていない物が、自分だけには見えている。

 その衝撃的な事実に対して、ニールはどうやって説明したら良いのか途方に暮れているせいもあって少し言動がおかしくなり掛けている。


「と、とにかくよぉ……あんたがこの目の前で見ているままを俺達に伝えてくれよ」

 そんな彼の様子を見かねたシリルが、自分の言葉で何でも良いから伝えるだけ伝えてみてくれとリクエストを出した。

「んー……一言で言えばかなり高いタワーだよ。外壁の色は若干紫がかっている黒で、円柱を横に引き伸ばした様な、言うなれば楕円型のシルエットのタワーだな。で、そこに大きくて高い鉄の扉があって多分それが出入り口だろうとは思う。窓は2階位からあるみたいだけど、四方を見る限りは1階部分に1つも無いな。肝心の高さは……1……4……11……分からん。少なくとも20階はあるんじゃないのか?」

 回数を数えていたのだが途中で分からなくなってしまい、大分アバウトに答えるニール。

 それ以外の説明もなかなかにアバウトだったが、それなりにイメージは伝わったらしい。

 しかし、肝心のタワーの姿が見えないとなるとどうすれば良いのだろうか?

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