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106.正体

https://ncode.syosetu.com/n7580fb/1/

登場人物紹介にイルダー・シバエフとエルマン・マイヤールを追加。

 本来、機密書物庫には侵入出来ない様にセキュリティ対策をしている以上、もし自分達に侵入されたと分かってしまったら騎士団に突き出されるのは目に見えていた。

 そこで、機密書物庫の件に関して図書館側から事情聴取がされるだろうと踏んだパーティメンバー達はユフリーが主犯だと言う結論が望ましい、と判断してシナリオを組み立てた。

 そもそも、最終的にユフリーにああして破片を奪われてしまったのだから全部が全部嘘と言う訳でも無い。

「でも、女が1人で図書館の本棚を倒せるのかな?」

 この嘘のシナリオに関して、図書館の職員やセキュリティの騎士団員達の中には疑問を呈する者も居た。

「でもよ、それ言ったらニールだってエリアスだってミネットだって本棚を倒せる様なパワーは無えし、俺だったら倒せるかも知れねえけど俺はその騒ぎがあった後に、このエリアスとミネットと一緒に図書館の中に入ったんだし、もしかしたらあの女以外にも誰か騒ぎを起こすのを手伝った仲間が居たんじゃないか?」

 逆にシリルからそう疑問をぶつけてみれば、一応それで納得はしてくれた様で図書館側からのそれ以上の追及はされなかった。


 こうして、嘘のシナリオで何とか事情聴取を切り抜けた一行。

 だが結局、せっかく騒ぎを起こした隙に潜入出来た機密書物庫の謎の破片(?)も回収出来たと言うのに、ユフリーの目潰しと煙幕攻撃によってそれがギルドの連中の手に渡ってしまったのだから、それこそもう目も当てられない気持ちだ。

(敵を欺くにはまず味方から、とはその意味と一緒に兼山に教えられたもんだが……まさに今回はそれがピッタリ当てはまる結末になってしまったな)

 苦笑いも出そうに無い今の状況で、自分達がやるべき事がまた増えたらしい。

「とにかく、俺達はまずあの地図の赤い場所に向かおう。そこが恐らく3つ目の遺跡だと思うしな。それからあの女の行き先を突き止めて、機密書物庫から奪われたあの破片を取り返すんだ」

「いや、あれは俺が奪った奴なんだが……」

 それはちょっと語弊があるんじゃないのか、とシリルの発言にニールは思うものの、シリルを始めとする他の5人は特に気にしていない様子だ。


 しかし、それ以上に気にしている事がニールの方にはまだある。

「で……さっきの話の続きをしてくれないか?」

「ん、ああ……俺達が騎士団だって事か?」

 思い出したシリルが聞き返すその視線が、ギラギラとした目つきで睨みつけるニールの視線と絡み合う。

「ああ。あんた等はつまり、違う国の騎士団員だと言う事を隠してここまではるばるやって来たって事で良いのか?」

「ええ、それで合っているわよ」

 シリルの隣に立っているミネットが頷くが、まだまだ信用するには至らないニール。


 そのニールの信用出来ない気持ちはこの5人も分かっているらしい。

「まー、そりゃそうだろうな。俺もイルダーもギルドの冒険者だって偽って今までずっとこの王国の東から調べを進めていたんだしな」

「そうだね。僕達はエリアスから頼まれて別行動をしていたんだよ。その過程で上手くこの国のギルドの連中と接触する事が出来て、あのユフリーって言う女から情報を流して貰っていたんだし」

「何だと?」

 エルマンとイルダーの言い分、特に最後のイルダーの「情報を流して貰っていた」発言にまたニールは身構える。

 だが、それはエリアスに手で制された。

「少しは落ち着いてよ。ピリピリする気持ちも分かるけど、最後までちゃんと話を聞いて」

「……くっ……」


 身構えるのを止め、ニールは立ち上がり掛けた自分の身体を再び草地の地面に置いた。

「僕達はあの図書館の町から離れて、わざわざこうやってワイバーンを飛ばして来て追っ手が来ないのを確認してまで話しているんだから大丈夫だよ」

「そうそう……それにこの辺りの原っぱだったら見通しが良いから、そうそう簡単に魔物に襲われる心配も無いぜ」

 イルダーとエルマンからも説得を受け、ニールは黙ってまた話を聞く態勢に戻る。

「それでえーと……ユフリーから情報を流して貰っていたのは事実なんだけど、それはこっちの作戦だったんだよ。この国が不穏な動きをしているって言うから調査をしてくれって、僕達の国……アイクアル王国のギルドと騎士団から命を受けて、こうやって5人でやって来たんだよ」


 それを聞き、ニールは自分の記憶からピンと来るものを思い出した。

「不穏な動き……か。そう言えばユフリーもギルドの統一がどうのこうのって話をしていたけど、それの話か?」

「そうだね。多分その話だと思う。その話に関して僕達はその3人とこっちの2人でグループを分けて、西方面と東方面でそれぞれ調査を進めていた。元々は僕等も本当に冒険者だったから、その時の実績を武器にして依頼を請け負っていたら運良くエジットと接触する機会があってね。その時に、魔力を持たない不思議な男の伝達係を俺の彼女と一緒にやってみないか……と言われて行動していたのさ」

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