表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

103/186

102.見つけた!!(色々な意味で)

 イルダーとエルマンが国立図書館へ向かっている時まで時は遡り、ニールはその最上階の3階にある機密書物庫への潜入を果たしていた。

 封印がどうのこうのと言われていたが、入り口のドアの取っ手に手を掛けて引っ張ってみれば、それだけで簡単に何の苦労も無く開いてしまったのである。

(うわ、こりゃ機密書物庫って言われるのも当然かもな……)

 思わず口に出てしまうだけの事はある程に、年月の経った独特の本の臭いがする部屋がそこにはあった。

 機密書物庫の部屋自体は、自分が本棚を倒した図書館の3階とは比べ物にならない位に狭いがそれでもなかなかの広さである。

(この広さだと……25mプール位って言えば良いのかな?)

 その25mプール並みの広さの部屋の天井に向かって本棚が壁に沿う様に設置され、自分が蹴り倒した3階の本棚と同じくぎっしり本が入れられている。

 天井や壁には何個ものオレンジ色のランプが埋め込み式で設置され、窓が申し訳程度に部屋の奥の突き当たりにある以外には、光が差し込まない設計のこの部屋でも視力の低下を防げる様に出来ている。


 その部屋の奥には椅子とテーブルがセットで何脚か置かれており、どうやらゆっくりと調べ物が出来たり本を読む事が出来る様にスペースを造っているらしい。

 奥の方だけにしかそう言うスペースを作っていないのは、機密書物庫と言う事で立ち入る人間の数が少ないせいもあるのだろうか。

(ともかく、ここに何も無かったら今までの全ての作戦が全部水の泡だな)

 それだけは何としてもあって欲しくない事態だ。

 幸いなのは、先程自分が本棚を蹴り倒した3階のフロアに比べれば本棚の数が随分少ない事。

 なので、ニールは本棚に挟まっているジャンル別の札を参考にしながら何処に何があるのかを探し始めた。


 だがその本棚をずっと部屋の奥まで辿って行くと、この部屋にある大量の書物よりも明らかに重要な物が置いてある事に気が付くニール。

 それこそ美術館や展覧会等で見かける、四角くて透明の展示用のケースがあるのだが、その中に妙な物体が飾られているのだ。

(何だこりゃ?)

 何かの破片らしき、いびつな形状の黒い金属片の様な物体。

 金属加工の工場から出るゴミと間違われても仕方無いシルエットと色だが、何でこんな物がここに置いてあるのだろうかとニールは首を傾げる。

(でも、意味ありげにこうしてここに置かれているんだったら何かのヒントにはなりそうだけどなぁ?)

 既に帝国を敵に回している訳だし、ヒントになりそうな物なら回収しておこうと透明なケースを上に持ち上げた。


 ……が。

「そこまでだ」

「……!?」

 聞こえて来た声のする方にバッと顔を向けて見れば、そこにはニールが初めて見る若い男2人が臨戦態勢で立っていた。

「どうやってこの封印を解いたか、じっくり僕達にもギルドで聞かせて貰おうか?」

「もう逃げ場は無えぞ? 大人しくここで観念するんだな、ええ? 魔力が無いって言われている人間のオッサンよ?」

 既にロングソードを抜いて構えるイルダーと、不敵な笑みを浮かべつつ愛用のロングバトルアックスを取り出すエルマンは、ニールにゆっくり近付きながら2人とも鋭い目つきで彼を見据える。


「……ギルドの連中だな」

 ニールにはその2人と面識こそ無いものの、彼等のセリフや武器を構えるその様子を見て即座にギルドの手先だと察しがついた。

 1人は銀髪の若い男で、太陽の光が当たったらかなり暑そうな黒いマントを羽織っているロングソード使い。

 もう1人はロングバトルアックスを持っている赤髪の男で、銀髪のロングソード使いよりも背が高いのだが、自分と恐らく背の高さは変わらないだろうとニールは考察する。

 だがそんな事よりも、問題はこの2人をどう退けてここから逃げ出すかだ。

 早く脱出しなければあの倒した本棚の修復が終わり、図書館の職員やら帝国騎士団員がこっちに来てしまうかも知れないからだ。


 展示ケースが置いてある場所から少し戻った、出入り口側の広い空間で両側から挟み込む形で、武器を構えたギルドの冒険者コンビに逃げ場を無くされるニール。

 だが、勿論彼もここで捕まる訳にはいかない。

「悪いが、俺の仕事はもう終わったんでな。別に俺はこれ以上あんた等に迷惑かけるつもりは無いし、後はここから出させて貰うだけだ」

「迷惑は既に十分掛けているでしょ。その言い分は通用しないからね……だから大人しく捕まって欲しいよね」

「う……」


 イルダーの何処と無く子供っぽい、それでいて怒気を含んだそのセリフに思わずニールもたじろぐが、気持ちを何とか持ち直して2人を睨み付ける。

「そんな睨まれたんじゃあ、どうやら大人しくする気はないみたいだな?」

「そう来るか。だったらこちらも実力行使に出させて貰うよ!!」

「気をつけろよイルダー……話を聞く限りじゃあ、このオッサンはかなりやるらしいからな」

「分かってるよエルマン。そっちも油断しない様にね」

 2人がお互いの名前を呼んだ事で、ニールにも銀髪の男の名前がイルダーで赤髪の男の名前がエルマンだと判明。

 しかし2人の実力は判明していないので油断出来ないと思い、ニールもカラリパヤットの構えを取った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ