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屋上にて

彼女登場(微妙)

若い人は最悪とよくいうけど本当に最悪な場合は最悪って言えないと思う。


なぜなら僕が今、まさにそういう状況だからだ。


縛られて、友達を人質に取られて、どんなマンガの話だよ。


でもあえていおう。最悪だ。どうしようもない。どうしよう。


これから僕、どうなるんだろう。



「そこまで心配することもない。君はそんななりでも、歩く不幸と呼ばれた男。

 たとえチビでメガネで冴えなくても君はなんとかするのだろう。

 だが俺は、それを凌駕するがね。」



生徒会長はようやく気味の悪い笑いを止め、また僕に話しかけてきた。


ちなみに僕の視界には会長はいない。


敵に心配されるなんて、僕って奴は。・・・ってあんまり心配されてないから。


しっかりしろ自分。



「で会長はこのまま僕を縛っていてどうするつもりなんですか?」



「うむ。俺の考えでは、君ならこの程度の縛り、簡単に解いてしまうに違いないと

 思っていたのだが、どうやら買い被りすぎたらしい。これはペナルティ1だな。」



僕はただの高校生だって。人よりちょっと不幸でちょっと不運なだけのね。


なのにペナルティってペナルティ?ペナルティ、某検索サイトで調べると最初に


サッカーが好きなお笑い芸人が出る。やっぱりって思った人、凡人だね。



「ペナルティって何ですか。そんなことをされる覚えはないんですけど。」



もちろん縛られる覚えもないし、友人を人質にとられる覚えもないけど。



「いや、君にではない。俺にペナルティだ。今からゲームをしようと思っている訳だが

 その前におと君と賭けをしていてね。彼は見事に賭けに勝ったという訳だ。

 だから彼との約束どおり君を縛っている縄を外そうと思う。」



「なるほど、絶対有利な状況が覆されるからペナルティですか。」



「そういうことだ。まあこの程度は全然問題ない。むしろ計画どおりだ。」



「で僕は縄が解かれたら帰ってもいいんですか?」



「別にかまわないよ。君が逃げれるならな。さてゲームの内容は簡単だ。

 この校舎のどこかにいるおと君を救い出し、学校内から脱出するだけだ。

 実にシンプルだろう。ちなみに君ひとりで逃げたときおと君の命は無いと

 思って構わない。」



「なるほど、罠がどっさりあるってことですか。」



「いや、君の友人の前で君を壊してあげようと思って、罠は用意していない。

 つまらない罠に引っ掛かって君が死ぬのは忍びない。」



「そうですか。ところで何時、縄は解いてもらえるんですか?」



「もうすでに解いているよ。それではゲームスタート。」



いつの間に縄を解いたんだろう。全然わからなかった。


こっちは警戒していたにも関わらずだ。いくら僕が鈍いとはいえ、


縄に触れずに縛っている縄を解くことが可能なのか。


そんなことを可能にする会長は多分、かなり、いや、絶対危険だ。注意しなきゃ。


ともかくおとを助けて逃げよう。ドアに手を掛ける。


その刹那の時間に僕は悟った。このドアはまずいと。


だが僕は思っても行動することができなかった。


そして本日二度目の気絶をした。感電で。罠がないって嘘かよ。


人は簡単に信じないほうがいいと悟った僕だった。


まあ、敵の言葉は簡単に信じるなってこと。







当然、起きたときに、僕の部屋のベットで夢オチということでもなく学校の屋上だった。


現実はどこまでいっても現実だった。せめて夢オチだったらよかったのに。



「目が覚めたかい。まさか引っかかるとは。また俺は君を買い被りすぎたらしい。

 これは彼との賭けの有る無しではなく、自分にペナルティだな。」



すぐに自分を罰したいところをみるとどうやら会長はマゾらしい。


どこにも姿はみえない。マゾにいたぶられるって。



「罠がないと言っていたように思いますけど。嘘だったのですか?」



「敵を騙すにはまず味方からという言葉があるがやはり敵を騙すのはまず敵ではない

 といけないと思わないか?」



「いや、そんな当然なことを言われても、だいたい一般の高校生ならどっちにしろ

 あんな罠から逃げれるわけないでしょう。」



「まあ君が仮にあの感電ドアを抜けたとしても校舎内には睡眠ガスを充満させておいた。

 なのでどんなに頑張っても無理だ。どんまい。」



敵にどんまいされてしまった。無性に泣きたくなるのはなんでだろう。


僕がどんなにがんばっても絶対屋上ルート直行じゃん。



「すべて会長の掌の上ってわけですか。」



「まあそういうことだ。それにしても君は余裕だね。今回は屋上から吊るされている

 というのに。」



「ええ、どうせ暴れてもどうしようもないですから。」



「君はすごいな。本当、買い被って正解だった。ああ。最高だ。

 ちなみにおと君なら既にこの世界にはいない。残念なことに君が殺したんだ。」



「どういうことですか。」



「簡単なことだ。あのドアがスイッチでそれが彼の命綱だった。ただそれだけのことさ

 助けようとして殺すなんてなんて滑稽。君さえこなければ彼は今日も生きていたのに。

 彼の最後の顔を教えてほしいかい。えっ。俺、死ぬのかって顔だったよ。

 そこには喜びも怒りも哀しみも楽しみもなかった。ただ疑問。疑問を感じた顔だったよ。」



楽しそうに。嬉しそうに。愉快そうに。まるでついでほんのおまけみたいに音の死を語る。


だからひさしぶりに怒ることにした。たった唯一の友達のために。


でないと友人であった彼は報われない気がした。



「てめぇ。ふざけやがって。」



「おお。やっと本性が現れたか。そっちが君の素の顔か。同一人物とは思えないほどの

 変わりようだな。雰囲気も声の質も明らかにちがう。」



「それがどうかしたか。てめぇだけは殺す。この名にかけてな。」



「ハッ、ハッハッ。その状況でどうするっていうんだい。歩く不幸くん。」



「たしかに屋上に吊るされてはいるが、それだけだ。たったそれだけのことなんだよ。」



「なにを」



言ってるんだと最後まで声は続くことはなかった。


なぜなら僕の目の前をたった今、通り過ぎって言ったからだ。


屋上から地上に真っ逆さまに。最後に聞こえたのはグシャという鈍い音だった。


屋上から引き上げてくれたのはおとではなく見知らぬ女だった。


僕と彼女の物語がいま、はじまりを告げたことをこのときの僕は当然知る由もなかった。


感想、誤字、脱字などあればよろしくお願いします。


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