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敵地目前の作戦会議

 特務局の人間とすっかり打ち解けた頃になって、列車は目的地であるスリーバックスの2つ手前の駅、ジョージタウンに到着した。

 と、ここで一人が立ち上がり、全員を見渡す。

「皆、聞いてくれ」

「どうした、リーダー?」

 尋ねたダンに、リーダーと呼ばれたその男――ローランド・グリーン捜査長はこう続けた。

「明日にはスリーバックスに到着するところまで来たわけだが、このまま全員でなだれ込むのは得策じゃないと、俺は考えている」

「って言うと?」

 別の一人に尋ねられ、ローはもう一度、周囲を一瞥する。

「考えても見てくれ、こんな大人数で押しかけてきたら、間違い無く騒ぎになる。となれば明日スリーバックスに来るはずのアルジャンが警戒し、引き返す可能性が高くなる。

 わざわざ20人で乗り込んでおいて、何の成果も挙げられませんでした、……じゃあ、バカみたいだろ?」

「ま、そりゃそうだ」

「だから提案として、ここで半数が列車を降り、もう半数が次の駅で降りる。

 そして明日、3~4名ずつで一日かけてスリーバックスに逐次進入し、目的地であるレッドラクーンビルをじわじわ囲み、翌日に訪れるはずのアルジャンが来るのを待ち構える。

 こう言う作戦はどうだろうか?」

 この提案に、何名かは同意した。

「同じことは俺も考えてた」

「確かにな。いくらなんでもこんな大人数で陣取ってちゃ、コヨーテだって寄って来ねえよ」

「同感」

 一方で、渋る様子を見せる者も少なくない。

「いや、そしたら後ろのアレとかどうすんだよ」

「誰かにガトリング抱えさせて、明日まで一緒におねんねしてろって言うのか?」

「俺は嫌」

 ダンも反対派に回る。

「俺はまずいだろうって方に一票だ。

 相手をナメてかかってないか、リーダー? あの『猛火牛』なんだぜ? もしも俺たちの予想よりちょっとでも早くアルジャンが到着して、明らかに政府筋の俺たちとかち合ったりでもしてみろよ。

 無茶苦茶やるので有名な暴れ牛が、いきなり拳銃ブッ放したりなんかしないって保証は、どこにも無いんだぜ。

 いざそうなった時に頭数が無いってんじゃ、どうしようも無いだろ。エミルの姐さんだって、あいつは『人間重機関車』だっつってるんだしさ」

 ダンの意見に、賛成派だった者も次々、意見を翻す。

「だよなぁ。早撃ち・暴れ撃ちでも有名だし」

「もし撃ち合いにでもなったら、逮捕どころの騒ぎじゃないぜ。

 下手すりゃ一般人に被害が出て、新聞社に抗議の手紙が押し寄せ……」

「最悪、特務局は取り潰し、俺たち全員懲戒免職ってことにもなりかねんぞ」

 意見が割れ、皆はローへ異口同音に尋ねる。

「で、結局どうすんだ、リーダー? 全員で行くか? それとも逐次か?」

 皆に囲まれ、ローは思案する様子を見せる。

「反対派の意見も確かに考慮すべき点はある。ダンの言う通り、相手は西部最悪と言っていいくらいの凶悪犯だ。ちょっとやそっとの人数で囲んだとしても、突破されるかも知れない。その点だけを考えるなら、確かに20人全員で押しかけた方が確実だろう。

 だがまず、大前提として、俺たちはアルジャンを町におびき寄せ、罠の中に飛び込んでもらわなきゃ困るんだ。現状でそれ以外に、あの凶悪犯を可能な限り平和裏に逮捕する手立ては無いんだからな。

 となれば俺たちの目論見、即ちアルジャンの逮捕を確実に達成することを第一に考えるなら、俺たちがそこにいると、相手に気取られるわけには行かないだろう?

 だから、……反対してる皆には済まないが、逐次案を採る。繰り返すが、より確実を期すための決断だ。どうか納得して欲しい」

 そこでローが帽子を取り、深々と頭を下げる。

 リーダーにそこまでされては、皆も首を縦に振るしか無い。

「分かったよ、リーダー」

「あんたがそこまで言うんなら、従うさ」

「ありがとう、皆」

 ほっとした顔を見せたローを、皆がやれやれと言いたげな顔で囲む。

「それじゃ早速、ここで降りる奴を決めるとするか」

「そうだな」

 特務局員らが話し合う傍ら――アデルたち3人はずっと、その成り行きを冷ややかに眺めていた。

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