表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/16

bewitched by the "F"ox

「そんで、だ」

 と、ダンが真面目な顔になり、こう続けた。

「あんましマトモなもんじゃないが――こっちの情報を教えたんだ。今度はあんたらの持ってる情報を教えて欲しいんだがな?」

「って言うと?」

 そう返したアデルに、ダンはまた、ニヤっと笑う。

「今回の件について、だよ。

 いや、大体のことは俺も把握してるつもりだ。凶悪犯トリスタン・アルジャンと、その弟を逮捕しようって話だろ?」

「ええ、そうよ」

 うなずくエミルに、ダンは肩をすくめて返す。

「だが、そこに至るまでの経緯がよく分からん。

 そもそも俺たち『実働部隊』に通達が来たのが、ほとんど出発前のことだ。うちの局長からいきなり『トリスタンの居場所をつかんだ。弟にも容疑がかかってる。すぐ向かってすぐ拘束しろ』、って言われて装備ポイポイ渡されて、そんで汽車にダダっと乗り込んだわけさ。

 だが、それまで俺たちも――多分あんたたちもだろうが――トリスタンの居場所どころか、奴についてのろくな情報も持っちゃいなかった。

 悪名ばかりを轟かせ、我々捜査当局を嘲笑う、実体無き凶悪犯ってわけだ。そんな幽霊ゴーストみたいな奴の情報をつかんだのが、あんたらんトコの局長だって言うじゃないか。

 東洋のことわざじゃ、何が何だか分かんねえって状況を、『狐につままれる』って言うだろ? まさに今回、それなんだよ。『フォックス』パディントンに首根っこつままれて、振り回されてるようなもんさ、俺たち特務局側は。

 だもんで、いまいち『やってやるぞ』って気分にならん。実際、ミラー局長だって半信半疑って感じで説明していたしな。

 だからさ、あんたらが知ってること、教えてくれないかなーってさ。これは俺だけじゃなく、今ここにいる全員が思ってることでもあるんだよ」

 ダンの言う通り、いつの間にか客車内にいた特務局員全員が、エミルたちに視線を向けている。

 そのプレッシャーに圧されたのか、エミルがふう、と息を吐いた。

「分かったわよ。でも知ってることと言えることだけよ? こっちも業務上の守秘義務があるから、言えないことは絶対に言わない。

 それでオーケー?」

「おう」

「まず、今回とはまったく別件の捜査を依頼してた人間から、リークがあったのよ。それもズバリ、『自分はトリスタン・アルジャンの居場所を知っている』ってね。で、その別件の解決と引き換えに、居場所を教えてもらったってわけ。

 ただしあたしたちがその依頼者から直接聞いたわけじゃない。その依頼者からパディントン局長に電話で伝えられて、それがあたしたちや、あんたたちの局長に伝えられたのよ。

 あたしから言えることはそれくらいね。それ以上は、これ」

 そう言って人差し指を口に当てたエミルに、ダンは苦い顔を見せる。

「あんまり有力な情報じゃないな。想像の範疇はんちゅうを超えない、ってくらいだ」

「でしょうね」

「正直、それじゃ納得しきれん」

「同感ね。でもあたしからはこれ以上、何とも言えないわ」

「……じゃあ」

 がた、がたっとあちこちから音を立てて、特務局員たちがエミルの周りに寄ってくる。

「到着まで一旦、仕事のことは抜きにしてさ、何かさ、あれだ、話でもしようや」

「な、いいだろ? いや、下心なんかありゃしねえよ? たださ、こう言う稼業やってるとさ」

「何と言うか、あれだ。女と、いや、レディと、ほら、真っ当に親しくなるチャンスってのが、なかなか、あれで、うん」

「って言うかお嬢さん、普通に、いや、普通以上に綺麗だし、こりゃ話しかけなきゃ男じゃねえって言うか、な?」

 揃って助平顔でニヤつく特務局員たちを一瞥いちべつし、エミルは頬杖を突きつつ、はぁ、とため息をついた。

「サムの印象があるから、あたし、もっと特務捜査局ってお堅いイメージ持ってたんだけど、そうでもないのね」

「だけどさ」

 と、アデルが肩をすくめる。

「俺たちが一番最初に会った特務局員って、結構乱暴なクソ野郎だったろ? マド何とかって言ったっけか」

「それもそうね。じゃ、本当にあの子が特殊なのね。何かと」

「だろうな。……ん?」

 アデルはうなずいて返そうとしかけたが、その途中、違和感を覚える。

「エミル、『何かと』ってどう言う意味……」

 尋ねようとしたが――既にエミルは特務局員たちから質問攻めに遭っており、アデルには答えられないようだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ