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合同捜査チーム

大事おおごとになってるな」

 そうつぶやいたアデルに、向かいの席に座っていたロバートがかくんかくんと首を振って答える。

「マジすごいっスね。こんな大勢……」

「しかもこの車輌1台、丸ごと俺たちの貸し切りだぜ。

 その上、経費も向こう持ちだってさ。局長が喜んでた」

「太っ腹っスねー、流石お役人って感じっス」

 騒いでいた二人の脚を、エミルが蹴りつける。

「いてっ」「あいたっ!? ……なにするんスか、姉御」

「みんな、こっちにらんできてるわよ。騒ぐんなら客車の外でやりなさい」

「……おっとと」

 慌てて口を手で押さえるが、それでもアデルは会話をやめない。

「しかしさ、特務捜査局も本気出してきてるよな、これ」

「そりゃそうよ。かなりの凶悪犯だもの、トリスタンは。

 むしろこれくらいの人数でかからなきゃ、返り討ちにされるわ」

 そう返し、エミルも客車の中を一瞥する。

 客車にはアデルたちを含め20人ほど乗っていたが、その全員が連邦特務捜査局の人間である。

 さらには拳銃や小銃、散弾銃と言った物騒なものを軒並み装備しており、その光景は「捕物」と言うよりも、軍隊の遠征を彷彿とさせるものだった。

「奥に2つある木箱、何だか分かるか?」

 尋ねたアデルに、ロバートは、今度は首を横に振る。

「何スか?」

「ガトリング銃だよ。どうしても逃げられそうになった時の、最後の手段らしいぜ」

「が、ガトリングっスか!? 無茶苦茶じゃないっスか」

「あんたらねぇ」

 もう一度、エミルが二人の脚を蹴る。

「いってぇ」「あうちっ!?」

「あんまりぐだぐだしゃべってると、あたしがあんたたちをガトリングで撃つわよ」

「わ、分かった、分かった」「すんませんっス……」

 二人が黙り込み、ようやくエミルがほっとしたような表情を見せる。

「あ、そう言や」

 が、すぐにロバートが口を開き、エミルがまた、目を吊り上がらせた。

「まだ何かあるの?」

「あ、いえ、あのー、……ちょっと質問っス、はい」

「どうぞ。短めにね」

「そ、そのっスね、何でこんなに厳重警戒なんだろうなーって。

 トリスタン・アルジャンって、そんなにヤバいヤツなんスか? いや、俺も一回遭ったし、ヤバさは何となく分かるんスけど、相手は弟含めて、たったの2人っスよ?

 ガトリングまで用意するなんて、やり過ぎなんじゃないかなーって思うんスけども」

「やり過ぎとは思わないわね、あたしは」

 一転、エミルの顔から険が抜ける。

「聞いた話じゃ、あいつには猛火牛レイジングブルだなんて大仰な仇名があるらしいけど、実態はそれどころじゃないわ。

 その野牛と、それから獅子と灰色熊を足して、そこへさらに3を掛けたような、屈強かつ異様な肉体の持ち主よ。その上、一度こうと決めたら絶対に曲げない、まさに鋼の如き精神をも兼ね備えてる。

 そんな人間重機関車みたいなバケモノが真っ向から襲ってきたら、あんた勝てると、……いえ、生きてられると思う?」

「う……」

 トリスタンの人物評を聞き、ロバートは顔を青くする。

「犯罪歴も凶悪よ。局長が調べた範囲だけでも、5つの州と準州、30近い町で殺人と強盗、州や連邦政府の施設に対し不法侵入および破壊工作。さらには東海岸沖でも船を沈めたり積荷を奪ったりの海賊行為、……と、やりたい放題。

 その存在が政府筋に知られて以降、懸賞金は右肩上がり。でも検挙しようとする度、捜査官や保安官は重傷を負うか、殺されるか。軍隊まで動かして捕まえようとしたこともあったらしいけれど、それもことごとく失敗。

 実は今回も、局長からA州州軍へ働きかけたらしいんだけど、断られたって話よ。局長曰く、『派遣できるほどの余裕が無いとの返事だったが、失敗して恥をかきたくないと言うのが本音だろう』、……ですって」

「そんな、……軍まで尻尾巻いて逃げるようなヤツ相手に、……俺たち、大丈夫なんスか?」

 恐る恐る尋ねたロバートに、エミルはぷい、と顔をそらしつつ、こう返した。

「大丈夫ってことにしなきゃまずいわよ。そうじゃなきゃ死ぬんだし」

 どことなく弱気そうなエミルの様子に、アデルも不安を覚えていた。

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