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天才ディミトリの傑作拳銃

「にしても」

 横たわるトリスタンを引き気味に見下ろしつつ、アデルがうなる。

「これじゃまるで、鉄製のまゆだな」

「当然の配慮さ」

 隣に立っていたダンが、苦々しげに返す。

「エミルの姐さんから再三、忠告されたからな。『こいつはここまでしなきゃならない相手よ』っつってな」

 トリスタンが気を失っている間に、どうにか生き残った局員たちが総出で周囲から鋼線や鎖を集め、彼をがんじがらめに縛り上げたのだ。

 当然この際に、トリスタンの武装も解除されており――。

「こんなデカい弾で撃ったら、そりゃ頭もブッ飛ぶっスよねー……」

 隣の部屋では、エミルたちが彼の所持していた武器を検分していた。

「11ミリって言うと、えーと、何口径くらいなんスかね?」

「44口径相当ね。人どころか、それこそ野牛でも一撃よ」

 エミルの言葉に、依然拘束されたままのディミトリが嬉しそうにニヤついている。

「傑作だろ? ウフ、フフ、フフフ」

「ふん。……それよりあたしが気になるのは、こっちの銃の方ね」

 そう言いながら、エミルはシリンダーの無い、奇妙な形の拳銃を手に取った。

「そもそも、どこに弾込めるのかから、良く分からないわね。今時、先込め式ってことも無いでしょうし」

「ああ、そいつ?」

 半ば一人言にも聞こえるエミルの問いに、ディミトリが喜々として食いつく。

「それはものっすごぉぉぉい発明さ。銃の常識が変わるくらいのね。

 左横のボタンを押してみな。弾倉が出て来る。ガトリング銃みたいなアレさ。ただ、あんな落下式の、安っぽい作りじゃない。バネで持ち上げて機関部に弾を押し込めるようになってる。で、弾倉を入れたら上のトグルレバーを引いて……」

「ふーん……?」

 説明もそこそこに、エミルはその奇妙な拳銃をかちゃかちゃと操作し、引き金を引く。

 次の瞬間、パン、と音を立てて、弾丸がディミトリのすぐ右にある壁に突き刺さり、彼は顔を真っ青にした。

「あ、あ、あわっ、あっ、……あんた、マジで僕を殺す気か!? 死んだらどうすんだよ!?」

「へぇ、次の弾が自動で装填されるのね。空になった薬莢まで勝手に出してくれるみたいだし。なかなか便利ね」

 ディミトリの抗議に耳を貸さず、エミルはその拳銃をあれこれといじってみる。

「弾倉にはいくつ弾が入るの? 7発?」

「……ああ、そうだよ」

 憮然とした顔で答えたディミトリに、エミルがまた、拳銃を向ける。

「な、や、やめろって、マジで」

「心配しなくても、もう弾、入って無いわよ」

 そう言って、エミルはかち、かちと引き金を引いて見せる。

「言うなれば自動装填・自動排莢拳銃? ……言いにくいわね。縮めて自動拳銃オートマチックってところね」

「ああ、僕もそう呼んでたよ。

 使い方に慣れりゃ、ガンファイトが劇的に変わること、間違い無しさ。弾倉を複数持ってりゃ、リボルバーとは比べ物にならないくらいの速さで再装填リロードできるからね」

「そうみたいね」

 エミルは弾の入った弾倉を手にし、自動拳銃に弾を装填する。

「これ、あたしがガメちゃおうかしら」

「ダメだって」

 ダンが苦い顔のまま、エミルに振り返る。

「そいつもM1874も、特務局が押収する。トリスタン・アルジャンおよびディミトリ・アルジャン兄弟の、犯罪行為の証拠の一つとしてな」

「残念ね。……っと、そう言えば」

 エミルが辺りを見回し、首を傾げる。

「さっきから見てないと思ったけど、やっぱりいないわね」

 その一人言じみたつぶやきに、アデルが応じる。

「誰がだ?」

 そう言いつつも、アデルも部屋の中を確認し、アーサー老人の姿が無いことに気が付いた。

「ボールドロイドさんか?」

「ええ。ま、元々局長経由で無理言って、こっちに来てもらってたんだもの。イクトミと一緒って言ってたし、これから二人でギルマン確保に向かうんでしょうね」

「イクトミと、か。……しかし、何でボールドロイドさんとイクトミが、一緒にいたんだろうな? って言うか、いつの間に知り合ったんだか」

 首を傾げるアデルに、エミルも手をぱたぱたと振って返す。

「あたしにもさっぱり。

 でも、思い当たる節は、あると言えばあるわね。こないだ局長とイクトミがカフェで二人っきりで話してたでしょ? あの時に紹介してもらった、とか」

「なるほど、そうかもな。……ま、経緯はどうあれ、もう彼がいなくても大丈夫だろう」

 そう言って、アデルは部屋の隅にいるディミトリとローを指差す。

「二人はあの通りだし、トリスタンも鎖でぐるぐる巻きって状態だ。後は移送場所が決まり次第、そこへ送るだけだ」

「そうね」

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