りんご/有り難き命を/白黒
昔
ある女の子に会った。
綺麗な瞳で綺麗な髪で……
そして……
「王女様……」
(白の国)
ー数年後ー
「王女様……」と白い息と共に吐いた言葉をりんごで詰め込み甘い汁が口の中に『ジュワー』と流れてきた。
「……って誰だっけ?」
昔から国民の前に出てくるのは王だけで姫は噂では2人いると言うものだった。
「ジン!!!休憩は終わりだ!!!働け!!!」
この国では親がいない者は子供だろうが大人と同じように働かされる。
小遣いは5ディアナぐらいだった。
それ以外は馬小屋の干し草の上で寝ていてご飯は温かいスープとパンぐらいだった。
でも、1回だけ「王女様」と呼ばれた。その同じ歳ぐらいの女の子は俺に笑顔を見せた。
ー君は1人で寂しくないの!?ー
そう言われて俺はその女の子を追いかけようとして女の子が乗っていた馬車を追いかけた。
「ジン!!!なにをボーとしてるんだ!!!」
運んでた麻袋を落とした。
「驚いた。大きな声を出さないでくださいよ……大将」
飽きれた大将が「驚いたのは俺の方だ……住む家も食う物も無いのならば働く!!!お前も知ってるだろ?」
そう言われ俺はその事を忘れ落ちた麻袋を持ち上げた。
(黒の国)
ーお父さん!!!お母さん!!!出して!?出してよ!!!ー
僕は最後、親に言った言葉がその言葉だった。
その後、一週間ぐらいたって僕の力では立つのが精一杯だった。
「マル!!!どうしたの?大丈夫?」
ノアだ。やっと助かる……いや、こんな要らないやつ捨てられるか……
「マル!?大丈夫?パンでも食べるかい?」
そのパンで僕の命は救われた。
でも、ノアが来る前に誰かの声が聞こえた気がする……
ーお前の命は俺の掌で動かされている。お前は死ぬことを許さない。生きろ……必ずー
そんな言葉だった。怖くて怖くて逃げ出したかったが逃げるのも体力がいるもんだ。
その言葉を思い出しながらパンを一口ちぎって食べた。