僕が産まれた日/幸せと信じたい女の子/白/青
子供というのは小さな塊である。
幸せというのはこういうことなのだろう。
まだ、子供の頃の僕は何も知らない。
知ってはいけない。
(白の国)
「ねぇママ!!!今から産まれる子は僕が名前付けていい!?」
僕はママに抱きついて言った。
「ジン、ママはね?ジンのこともお腹にいる我が子のことも私が名前をつけると決めていたのよ?」
その後、僕が名前を名付ける前に子供が産まれ「ラフト」と名前をつけられた。
父親が久しぶりに帰ってきた。ただし、母親は死んでいた。
「なんで、帰って来なかった!!!ラフトが産まれた時にママは!!!ママは!!!」
お腹が膨れすぐ帰るといった父は帰って来なかった。
ラフトを育てたのは僕だった。
「ジン、悪かったな」
父はラフトを連れて帰ってくることは無かった。
母も父も弟もいないまま僕は物を盗むことしか生きることを知らなかった。
店の店主から逃げる時に小さな籠に入ったラフトを見つけた。
でも、僕は逃げることに夢中でラフトを助けることが出来なかった。
なぁラフト……僕、悪いお兄ちゃんなのかな?パパと同じなのかな?
違うよね?僕、悪くないよね?ラフト……
「ダメ!!!ラフトは……僕の!!!」
黒い影がラフトを持ち上げて消えていった。
干し草はいつもより温かかった。
シトラスと話した時よりも物を盗んだ時よりもラフトを抱きしめた時よりも母に抱きしめられた時よりも
涙は温かかった。
(青の国)
私は幸せな子だ。
みんなに好かれるし一通り悩める悩みだってある。
こないだなんて初めて妹ができた。
妹と言えど近くに住んでいた子だったが私は幸せな子だ。
ただ、時々思うことがある。
『幸せとはなにか?』
父が帰ってこないことが幸せか?母の存在を知らないことが幸せか?妹と言えど人を殺したのかもしれない子だ。
一般的に幸せとはなにか?
私が望む幸せとは?二ルアーナの幸せとはなにか?
父とイズナとまだ、見ぬ母と一緒に暮らすこと?
そうだ。幸せとは死ぬことだ。
私は私が人並みの幸せを経て死ぬ事が幸せなのだ。
だから、寿命まで生きよう。私がおばあちゃんになるまで生きよう。
そのためにはこの手で……
『あの子を』




