第6話 「命短し恋せよツンデレ娘!」
名作と言われている作品だって序盤は退屈だったりするしこの作品も段々面白くなって
いけるかなあ
A.
キラキラしたドレスに髪色と同じ金の扇と言う兎に角派手な格好のこの女....金城 沙雅。
彼女の自画自賛にも程がある自己紹介に緋美華は苦笑し、津神はジト目を向けた。あ....後者は常にジト目だったわ。
「アンタねぇ、自分で言ってて恥ずかしくならないわけ?」
「真実を言って何が悪いのかしら?」
こいつの事はやっぱり好きになれない....確かに勉強も運動も完璧で大金持ちで、認めたくないけど美人の部類に入る。でも完璧超人とは言え性格に難が有りすぎんのよ。
「わたくしに任せなさい、結界を張って春野家と風見家を直接狙えなく出来ますのよ」
「結界って....アンタまで能力者なの?」
「私も吃驚だよ」
緋美華や私が寝てる間に襲われる心配は無くなる訳ね。なかなか役に立つことしてくれるじゃないのよ、ホラじゃなくて本当に出来るのなら感謝するわ。
「さあ、先に帰って結界を張ってきなさーい!わたくしは徒歩で帰りますわあああああ!」
....と、金城は滞空している自家用ヘリコプターに乗っているメイドの椋椅さんに向けて鼓膜が破れそうになるくらい馬鹿デカイ声で伝えた。
「分かりましたー!お気をつけてお帰り下さいませ」
ヘリコプターからも大声で返事が返って来る、まあこんなに大声ならプロペラ音とかあっても聞こえるわよねぇ。
「てかさ....」
「自分がやるんじゃないんだ」
緋美華がいま私の思っていた事を代弁してくれた、やっぱり彼女も私と同じ事を考えたみたい。
「メイドも主人の力のうち、剣豪が使う剣の様なものですわ」
「また意味の分からない例えを....」
「とにかく私に感謝なさいな」
こいつと一緒に帰らなくちゃならないなんて絶対疲れるじゃない。それと気絶していた私はともかく、戦った直後で既に疲れ切っている緋美華が倒れないか心配だわ。
「ねえ、アンタ疲れてるでしょ?」
「うん、ちょっと疲れてるかな。あれ....」
緋美華が私の肩に凭れかかってきた、サラサラの赤髪が擽ったくて気持ちいい。
「ちょっと大丈夫?」
返答の代わりにすぅすぅと安らかな寝息が聞こえてきた、それは毎朝春野家のベッドから聞こえてくるものと同じものだ。
「良かった、寝ただけか」
「私が背負って帰るわ。なにも出来なかったし」
相変わらず軽いわね....それに普段から良い匂いするけど、こんな近くで嗅ぐと一層堪らない。香水を使ってる訳でも無いのに一体どういう事なのかしら?
「軟弱ですわね、あの程度で疲れうっ!?」
「黙ってなさい、また騒いだら今度は顔面殴るわよ」
「暴力反対ですわ....」
緋美華が出来るだけゆっくりと寝れるよう、沙雅を膝蹴りで黙らせて静かに帰路についた。
第6話「命短し恋せよツンデレ娘!」
B.
鋭い目付きと茶色に染めたショートヘアが特徴的なわたし、風見ひよりは恋する女子高生。
その恋の相手は今ベッドの上ですぅすぅと寝息を立てている、もう朝の七時だってのに!
「こら、いい加減起きなさい!」
「うーん....もう少しだけ寝かせて」
昨日は色々な事があって相当疲れているのは知ってるけど、アンタが寝たのは昨日の夜八時くらいだから....もう十一時間は寝てるじゃないの!
「ったく布団剥いじゃうからね....きゃあああああああ!」
布団の中に居たものを見てつい悲鳴をあげてしまった、どう言うことよ、津神が緋美華の腕に抱き付いて寝ているなんて!
「わわわ、どうしたの!?」
私の悲鳴でバッチリ目を覚ましてくれたのは結果オーライだけど、何で二人が同じベッドで寝てるのよ。
まさか....ゆうべはおたのしみでしたね的な淫行をしたんじゃないでしょうね!?
「嘘でしょ....いつの間にアンタらそんな関係になったわけ」
嘘だと言ってほしい....でも昨夜如何わしい事をしてたから起きられなかった。それが理由なら納得出来ちゃうじゃない!
「誤解だよぉ....ベッドは一つしか無いんだから一緒に寝るしかないんだから、それに二人で寝るとあったかいもん」
それもそうよね....この娘は優しいからお前は床で寝ろなんて言わないもの。私ならきっと、泊まりに来たならともかく居候させてやってんだから床かソファーの上で寝なさいって言っちゃうわね。
「紛らわしいんだから」
「というか今日は先生や男の子達が殺されちゃったから休校だよ、なのに何でこんな早く起こしに来たのさ」
「学校が無くても、早寝早起きは健康に良いもの」
恥ずかしくて言える訳が無い、本当は一秒でも早くアンタの顔が見たかっただけなんて。
「ひよりは何時も通りなんだね、凄いなぁ。私なんてまだ落ち込んでるのに」
私にだって男子が殺されて辛いって思う気持ちは勿論ある、みんな気の良い奴等だったから。
でも心の何処かで緋美華を狙う奴が減って安心してる私がいるなんてこと知ったら、あの娘は私の事を見損なうわよね。
それに男子だけでなく私の様にあの娘を狙ってる女子とか居るかも知れないし完全には安心出来ない。
「私だって少しは辛いわよ。それより津神を起こして」
昨日は疲れてたみたいだから聞かなかったけど、今日こそは詳しい話をして貰わなくちゃ。
「もう起きてる」
「いつの間に起きてたの?」
「ずっと起きてたよ、一晩中緋美華の顔を見つめてた」
「て、照れちゃうな」
まるでカップルみたいという言葉が脳裏に浮かぶ....って違う!姉妹みたい、そうこれは姉妹みたいって言うのよ!
姉妹....「水無さん可愛いわ」「いけませんお姉様!」....何て妄想してんの私は。
「イチャイチャしてないで、良い加減詳しい事教えなさいよ!」
「....なに、そこに居るのは!」
いきなり津神が叫ぶと天井裏から物音がした、ネズミか猫でも入って来たのかしら。
「ネズミさんか猫ちゃんでも入って来たのかな」
また緋美華が私と同じ事を考えていた。これは波長が合うって事よね、お似合いって事よね!?
「違うよ、居たのは多分人間」
「何ですって!?」
何で人間が天井裏に居んのよ!....そう言えば津神も押し入れの中に隠れてたわね。
「水無ちゃんみたいな良い娘なら良いけど」
「捕まえないと!」
「駄目、もう気配が無い」
チッ....確かにさっきまで閉まっていた窓が開いてるわ、既に逃げちゃったみたいね。
「うぅ....気味が悪いよ」
「また戻って来たら、捕まえるから大丈夫だよ」
「心強いよ〜〜〜〜!」
ぎゅっと緋美華が津神を抱き締める、羨ましい、私も緋美華を抱き締めたいし抱き締められたい....!
「実年齢と精神年齢が逆じゃないの」
「はわっ、私がお姉さんなんだから水無ちゃんを守ってあげないと駄目だよね!」
「私も緋美華を守るよ」
「えへへ、この会話ってまるでしま」
「ふーふみたいだね」
緋美華はまるで姉妹みたいだねって言いたかったんだろうけど、津神が巫山戯た事を抜かすから一瞬場の空気が凍る。緋美華なんてバカみたいな表情のまま固まってるし。
「み、水無ちゃん。そんな夫婦だなんて!」
唖然とした表情がパッと出の女に幼馴染が負けるとか良くある展開にならないように頑張らないと。
「でもおかしい....結界が張られてるから能力者も入れないのに一般人が入って来られる訳無い」
「それじゃあ!」
緋美華の手を引っ張って庭へ向かうと帽子、サングラス、マスク、コート、ズボン、ローファー....身に付けている物が全て黒という見るからに不審な人物が首を傾げてるじゃないの。
「なにしてるのよアンタ!」
「!」
私が怒鳴り付けると不審者は指をパチンと鳴らす、すると一瞬にして姿を消してしまった。
「ふぇっ、消えちゃった!」
「何処に行きやがったのよ」
きょろきょろと周りを見回してみるけど何処にも不審者の姿は見当たらない。ちっ、逃がしたか。
「なんだったのかな、ちょっと怖いよ」
「大丈夫よ私がついてるから」
「ありがとう、ひより」
服装が変わってたりするかも知れないけど体格や雰囲気で分かるし、今度見付けたなら捕まえてやるんだからね、緋美華の不安を取り除いてあげる為にも絶対に。
「でも大丈夫だよ、私もう強くなれたもん。ひよりに守って貰わなくても」
「あ....」
元からそこそこ強かったのに、超人的な能力を手に入れて更に強くなった。
その上同じ様に強力な能力を持つ居候まで味方にいるし、もう私が緋美華を守る必要は無いのよね。
「ひより?」
「なんかさ、私が居なくてもアンタはもう大丈夫って考えたらちょっと寂しいってか」
「そんな事ないよ、ひよりが側に居てくれたらね。私なんだかほっとするもん」
私もアンタがずっと近くに居てくれたから嫌な事があっても我慢できたの、お互い様なのよ。
「それに今まで守って貰って来たから次は私がひよりを守りたいの....ううん、守らせて?」
こ、これって実質告白じゃないの....?
幸せにしなさいよねとか言っても大丈夫なのかしら、私の想いを伝える時が遂に来たってワケ....!?
つづく
ツンデレもクーデレも百合が似合う