第32話「南極の大決闘!」
何か凄い眠たいです。
A.
わたくし金城 紗雅、彼女である風見さんに最新の防寒着を着せて南極デートに参りましたわよー!!
「誰がアンタの彼女よ、デートでもないし」
「ワタクシはそう思い込んでるので!」
「あのねぇ....」
冷やかな眼もゾクゾクさせてくれますわ、他の人間なら殺意が湧くだけですのに風見さんはやはり特別ですわね。
本当のことを言うとデートではなく、南極で観測調査をしている知り合いから春野 緋美華たちが敗北したと聞き助けに来たのですわ。
「ねぇ、本当にあの娘たちはやられちゃったの?」
「信じたくない気持ちは分かりますが、残念ながら事実ですわ」
「そうよね、ごめんなさい。疑うようなこと言って」
風見さん....今にも泣きそうで見ていて心が痛みますわ、早く春野 緋美華を助け出して笑顔を取り戻さなければ。
「謝らないで下さいまし」
「ダメね私、気を遣わせちゃって」
「そんなこと....それより寒くありません?」
「ええ、平気よ」
寒さは大丈夫みたいですけれど、精神的には大丈夫じゃ無いみたいですわね。ああもう春野 緋美華、これも貴方が負けたりなんかするからですわよ!
「大丈夫、心配しなくても良いですわ。ワタクシが絶対に助け出して見せますもの!!」
風見さんの笑顔を取り戻すのが一番の理由ですけど、叱ってやらないと気が済まないのも有りますし、絶対にやり遂げますわ。
「ありがと」
無理してぎこちない微笑みを浮かべる風見さん、心配しすぎたから逆に気を遣われてしまいましたわ。
「やらせはしません!」
突如、椋椅がパラシュートで降下しながら私たちの眼前にナイフを投げて来ましたわ!
「馬鹿な気を読まれるとは....」
そう言ってナイフが頭に刺さった状態で、潜水服の人間が氷の下から槍を持って飛び出してきました。
「この槍で私たちを地面、いえ海中から一突きするつもりでしたのね」
敵は私達が捕らえた二人を救出へ訪れることも考慮していましたのね。強い上に用心深いなんて厄介ですわ!
「椋椅さん何時から居たんですか!?」
「お嬢様とはずっと一緒に居ますよ」
まるで忠犬ですわ、しかし入浴中やお花を摘んでる時にまで一緒に居る必要は無いと思うのだけれど。
「それよりお嬢様、風見さんを連れて来たのは何故です、相当に危険なのは分かってるでしょう!?」
「私がどうしてもって頼んだんです」
私も最初は春野 緋美華たちが敗れたことを伝えるだけのつもりでしたし、風見さんを危険な目に遭わせる訳にはと思いました。
頭を下げられて連れていってと頼まれてしまっては断れず、つい連れて来てしまったのですわ。一緒に居る時間が増えるならそれも善きですし!
「大丈夫、ぜーったいにお守りしますもの」
「でも今アンタ気付かなかったでしょ」
ぎくぅ....!
「き、気付いてましたわよ、椋椅に先を越されただけですわ!」
「本当かしら」
「ま、お二人には結壊を張って居るので大丈夫ですけど」
「それを早く言いなさいな....」
暫く歩くと白い世界には不釣り合いな黒い鳥居が眼前に現れました。いつの間に作ったのかは分かりませんが悪趣味ですわ、どうせなら金色にすれば宜しいのに。
「なんだ貴様ら、ここは通さんぞ」
「きゃっ化け物!」
門番の如く仁王立ちで行く手を阻むは、エラが張り目が死んでいて四肢に水掻きが備わっている筋骨隆々な魚臭い怪物。
「白衣の幼女の部下ですわね」
「奴等の元へは行かせんぞ」
怪物は私を殴り付けますが、椋椅の結界に守られているので傷ひとつ付けられず驚嘆の表情を浮かべました。
「ムニエルにでも調理してあげますわ!」
結界から出て、ゴルアクストで一撃!!
「ぬおおおおおお!」
頭部を叩き落として差し上げましてよ。まさに瞬殺、他愛もないですわね!
「行きますわよ風見さん、恐らく彼女たちはこの鳥居の先に!」
「待ってなさいよ」
鳥居を潜り、一気に冷たい氷の大陸を駆け抜けると軈て目的の者が見えてきました。
「全く無様な」
「くっ....」
そこにあったのは体が所々凍りつき、生気の感じられない状態で十字架に磔にかけられた春野 緋美華と津神 水無の姿でした。
第32話「南極の大決闘」
B.
春野 緋美華と津神 水無を磔にしている十字架の下には、お互いに殺し合ったとしか思えない死体が二名。片方は観測員の知り合い....これも奴の能力ですの?
「なんて惨いの」
「どうしてこんな!?」
っ....背後に気配が。幼いながらも殺気、いえコイツの場合は狂気が滲み出ていて陰鬱な気分になりますわ!
「やっぱり処刑の邪魔をしに来たようだねェ。しかし転移能力で南極まで来て大分お疲れの様子だ」
「だからこそ自分の脚で此処まで来たんですわ」
遠すぎてこの南極へ転移してきた時点では体力を大幅に削られ、戦いに備え転移能力を迂闊に使えませんでしたの。
それを察してか、風見さんも椋椅さんも能力を使えとは言わなかったんですわね。
「ふっ、面倒だ。我が兵器ダコンよ現れたまえェ!」
魚の様な顔に水掻きのついた手足を持つ怪人が海から氷を割って現れました。
さっきの番人と特徴は似ていますが、こちらは小柄であり骨のように細い体つきであると言う違いが有りますわ。
「狂い殺しあえ」
仲間同士で殺し合ったとしか思えない隊員たちの死体、それはコイツの能力によるものでしたのね。
「イワン様ご報告に....」
いきなり現れたイワンの部下と思われる男が顔を上げると、ダコンと目が合い、その瞬間に彼は豹変!
「あひゃひゃひゃ、殺してやるうどいつもこいつも、も!」
気が狂ったのか、男は上司であるイワンにナイフを持って突進しましたわ!
「馬鹿者めが」
「ぐあああああ」
男はイワンの触手で首を落とされてしまいました。ダコンの目を見てしまうと発狂してしまいますのね、それなら見ないよう目を閉じて戦いますわ!
「風見さん!椋椅!目を閉じてくださいまし」
「ええ!」
「承知しました」
「バカな!目を閉じたまま俺に勝てるつもりか」
「勝てますわよ」
気配で場所を読み取りますの....あっ、ダコンが背後に来ましたわ!
「はあっ!」
「ぎょえええ」
目を閉じたままダコンの目を潰してやりました、もう目を開けても良さげですわね。
「いきますわよ、覚悟なさいな!」
目を潰されて転げ回るダコンの脚を掴み、海へと放り込んでやりましたわ!!
「やるじゃないか」
「次は貴方の番でしてよ、お二方を大人しく解放すれば命だけは助けてあげても宜しくてよ」
....さもなくば幼いとは言えど、容赦しませんわ!
「命乞いをすることになるのは君の方だよォ」
「なっ!?」
椋椅の結界が消えた....まさか月夜と同じく能力を奪う能力を持っていたりしますの!?
「私の新発明さ、月夜の能力からヒントを得て能力を奪う....までには至らないが打ち消すことは出来るんだよォ」
「本当に子供ですの!?」
「体は子供で頭脳は大人ってわけ?」
....何処かで聞いたことあるフレーズですわね。
「お褒めに預り光栄だが、春野 緋美華たちとの戦闘中に部下が完成させてくれたのだ」
「能力が使えなくても技量で勝ちますわ!」
ゴルアクストでイワンの小さな体を切り裂きますが、全くの無傷....どう言うことですの!
「痛くも痒くもない」
「っ!?」
脚にヌメヌメした何かが巻き付いたので見てみると、それは氷を割って海中から伸びて居た触手でした。
「あ、あら?」
....体から力が抜けてゴルアクストを落としてしまいました、立って居るのもきつくなって来ましたわ。
「なにボーっとしてんのよ!」
「恐らくあの触手の仕業です」
椋椅が私の美脚に巻き付いた触手を投げナイフで切断し、解放してくれました。
「助かりましたわ」
「お給金アップをお願いしますね」
「考えときますわ....」
解放されたは良いですけど、体に力が入らずふらっと倒れてしまいましたが椋椅が支えてくれました。
「お嬢様!大丈夫ですか?」
「ふっふふふ、またエネルギーを貰ったぞ。この二人よりはショボいけどねェ!」
「あの触手に気を付けなさい」
「はい!」
不甲斐ないですけど、ここは椋椅に任せる他有りませんわ。
「お前許さない!」
椋椅がナイフを構えたかと思うと、目にも止まらぬ速さで全ての触手をバラバラにしてしまいました!
「触手を全て切り裂くとは、再生するんだけどさ」
「そうなる前に貴方を殺す!」
「出来ないことは言うもんじゃない、さっきも見たはずだが」
触手は再生するし、本人にも攻撃が通用しない相手に能力は使えない....正直もう勝てる術が見つかりませんわ!
「だからと言って逃げるわけにはいかないんだよ!」
「くぁ、な、なんてナイフ捌きだ!」
ゴルアクストですら無傷だったイワンの体に傷を付けるなんて、いつの間にこんなに強くなりましたの....もしかしたら主である私を超えているのでは!?
「お前メイドみたいだが主である金髪より強いね」
「主を守る身であるなら、主より強くならなくてはならない!」
「三人分のエネルギーを吸収した私を圧倒するとは、凄く欲しくなったぞ研究材料として!」
「黙れ....!!」
ナイフが曲がってしまってますわ、それでも椋椅はナイフを捨て掌底でイワンを攻撃しました!
「はぁはぁ、能力も無しで良くやる....」
「トドメっ....!」
よろめき白銀の地に膝を突いたイワンに殴り掛かる椋椅、やりましたわ!!
「私の台詞だよ」
勝利を確信したのも束の間、椋椅の拳にイワンが口から墨を吐き掛けて溶かしてしまいました!
「ああああああああ....」
「モルモットに此処まで手こずるとは、能力無効マシンも壊れてしまってるじゃないか」
溶ける拳を抑えるのでやっとな椋椅をイワンは無情にも蹴り飛ばして南極の海へ沈めてしまいましたわ!
「椋椅まで敗れるなんて」
「い、いや....」
近付いてくるイワンに風見さんが怯えてますわ、ワタクシが守って差し上げねば、約束したのだから....!
「風見さんに手出しは!」
だ、駄目ですわ体に力が入らず立てません....万事休すとはまさにこのこと!
「お前らも一応は材料にするか!」
「ううっ、ああああ!」
ならば責めてと風見さんを抱き締めて庇うわたくしの背中に激痛が走ります、ギコギコと肉が裂かれているような。
「見えないだろうし教えてやる、私の触手を変化させたノコギリで貴様の肉を裂いているのだ」
「がはっ....」
「金城....」
風見さんが指を畳み、手を組み合わせ目を閉じました。まるで神に祈るかのようですわ....!
「お願い二人とも、目を覚まして!」
残念ですが無駄ですわ、それが無理みたいだから私たちは助けに来たんですもの。
「二人は研究材料にするとして、こいつはどうしようか」
泣きながら春野 緋美華の名前を叫び続ける風見さんに迫る白衣の悪魔。無駄とは分かっていますけど、お願いだから目を覚まして無力な私の代わりに私の愛する人を助けて下さいな!
C.
声が聞こえてくる。毎朝、聞いてる声で....“何時まで寝てんのよ、早く起きなさい“ って言ってる。
その後、雫が地面に滴る音がした....これはもしかして涙? 泣いてるんだ、私の大切な幼馴染は....私の為に!
「さあ、お前はどうしようかなァ?」
「こうするんだよ!」
磔にしていた鎖を引きちぎり、ひよりと彼女を血塗れで抱き締めている金城さんの背後に立つイワンに飛び蹴りを浴びせて吹き飛ばす!
「緋美華!....もう、寝坊助なんだから」
目が覚めたよ、ひよりの涙が私を起こしてくれたんだ....力は吸い尽くされたハズなのに何処からか力が湧いてくる!
「馬鹿な、想定外だ!」
「火焔チョーップ!」
イワンが指を十本の触手に変化させ伸ばしてくる、私は焔を纏ったチョップでそれらを切断しながらイワンの懐に入り頭突きを喰らわせた。
「ふふふ、触手を切り落としても再生すると....!?」
「それじゃ再生してもその瞬間にまた死んじゃうね」
触手は再生した瞬間に焔に包まれ、火は触手から本人に燃え移った....!
「熱い、これはたまらん!!」
消火する気なんだろう、イワンは海へ飛び込んだ。それじゃ今のうちに水無ちゃんを解放するとしようかな!
「水無ちゃん....」
磔にされ力なく項垂れている水無ちゃんの顔をそっと上げて、唇に唇を重ねる、唾液からでも水分を得て復活を!
「なっ、な、な、な!」
「仕方ありませんわよ」
金城さんの言う通り、仕方ないことだから怒ったりしないでよね、ひより!
「緋美華....」
やったぁ、水無ちゃんが目を覚ましてくれたよー!
「リベンジ出来る?」
「うん。今度は負けない」
力強く頷き、液体化し拘束を抜ける水無ちゃん。この技を自由に使えたら無敵に近いかもだけど魔力の消費が大きいんだっけ。
「任せましたわよ二人とも!!」
「任されたよ!」
「何度来ても無駄だァ!この私に勝てるものか!!」
消火を終えたイワンが海から飛び出してきて、空中一回転着地。頭脳だけでなく身体能力までも子供とは思えないレベル!
「勝つよ、緋美華と私は」
「そうだよ!最強なんだから私達は!!」
「デカい口を叩きおって」
イワンは再生した触手を合体させ、鋸状に変化させた。こんな器用なことまで出来るなんて!
「引き裂いてやる!」
「もう、負けない」
「ぐぬぬぬ」
水無ちゃんが振り下ろされる触手鋸を錫杖で受け止め、その隙に背後へ回って....
「華焔チョップ!」
....後頭部にチョップ攻撃、火の粉が花弁のように散る!!
「ごふっ、再び吸い尽くしてやるわ」
イワンは触手を鋸状から細長い状態に変化させ、物凄いスピードで伸ばしてくる。
「ロッソード!」
今度はやられない、私は炎で剣を形成し、触手すべてを切り払う。怯んだイワンの脚を水無ちゃんが掴んだ!
「な、なにをする気だ!」
「沈水頭!!」
水無ちゃんが渦と共に放り上げたことで宙を舞うイワンの体、そこに今までの数十倍の焔を纏った全力を込めたキックを決める!
「バイオレッドキック....!!」
「ぬああああああああああああああ!!」
イワンは燃えながら落下し、氷の陸が溶けて海と一体化していく....!
「おのれ、ならば能力を使ってやる。今までのは科学の力に過ぎん!私の能力を味わうが良いわ....!!」
嘘ぉ....まだ倒れないって反則じゃん。でも諦めないんだから、どんな能力が来ようとも乗り越えて見せる!
「ぐふうっ」
突然イワンが血と泡を吹いて倒れた。もしかして既に限界だったとか....?
「チィっ、貴様....」
「かなりの数の兵器に邪魔されたが、何とか来れたぜ」
よく見るとエジプトって感じの服を着た目付きの悪い女性が、鼻息荒く倒れたイワンを見下ろしている、助けてくれたの?
「一億の兵器を一日で殲滅するかイグ」
「お前にも出来ることだろ、なら俺に出来ない筋はねえわな」
「一億!? 何者ですの!」
「一騎当千どころじゃないわね」
イグと呼ばれた彼女はとても強い人で能力者であることは何となく分かったよ、それに味方だってことも。
「こ、ここまでか....春野 緋美華、冥土の土産に教えてやろう」
「良いこと?」
....じゃあないよね。
「お前の家族を殺した人間は近くに居るぞ....せいぜい、気が狂うほど怯えることだ!」
そう言い残してかつてない強敵だったイワンは遂に消滅した。勝てたものの素直に喜べないよ、あんなこと教えられたら。
「私のお母さんとお父さんを殺した犯人が近くに居るなんて!」
「何ですって....」
「緋美華の家族の仇が....」
色々なことがあって忘れていた、忘れられると思っていた過去の悪夢が再び蘇ろうとしている!
つづく
ゴスロリは良いぞゴスロリは、しかし能力バトルとは何だったのよ。




