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赫蒼の殲滅者  作者: 怪奇怪獣魔爾鴉男
31/39

第31話「銀髪幼女 戦慄の本性!」

能力バトルとは何だったのか

A.


信じられない、私の最高傑作が負けるとは....と、白衣を着た銀髪の幼女は海底の研究室で悔しがっている。



「お前の最終兵器も倒されたな、流石は我が妹だな」



研究室に置かれている場違いな鷲の剥製、その眼が赤く点滅すると喉元にあるスピーカーから春野 紅鴉の声が流れてきた。



「紅鴉様、何用でしょうか」



「次はお前が行くのだ狂気の究明者、九頭竜・イワン・カリマール」



それが千戦狂叫の真の名前!! だが長いので基本的に呼ばれることはなく、呼ばれてもイワンと略されることが多い。



「私がですか?」



「そうだ、私の妹を倒せ。容赦はいらんぞ」



「殺すにも色々有りますが」



紅鴉や一般人の言う殺すは、基本的に生命活動を停止させることだが、イワンの殺すにはそれともう一つ、気を狂わせ元の人格を消してしまうというのを意味する殺すもある。



「やってみるが良い、我が妹の精神力がお前の能力に打ち勝てるかどうか見物だな」



「使う間でもなく敗北されないか心配ですけどねェ」



口封じでなら、彼女は一般人にも容赦なく能力を使用するが同じ能力者との戦闘であれば能力を使う間もなく倒してしまう。


それほど九頭竜は頭脳だけでなく素の戦闘力も高く、この世でただ一人の紅鴉に傷を付けられた能力者でもある。



「戦ってみなければ分かるまい、さあ行くのだ!」



「仰せの通りに」



春野 緋美華と津神 水無にとって最大の危機が訪れる時は近い....!!




第31話「銀髪幼女 恐怖の本性?」



B.


今日は新しい洋服を買いに行くつもりだったけど、前にひよりが拾って来た子犬の餌を買いにペットショップに行く事になった。



「子犬じゃなくて、ふぇんりる!いい加減に覚えなさいよね」



「はーい....」



八月頃には金城さんが出した金で風見家は無事リフォームされ、ひよりは居候生活を終えていた。


よって私はあんまり、ふぇんりると最近は一緒に過ごせて無かったので名前を忘れちゃうのも仕方ないんだよ。



「にしてもふぇんりるって、厨二?」



「ゴスロリ着てる奴に厨二とか言われたくないんだけど」



「趣味なの」



前にお洋服を買いに行ってあげた時にも水無ちゃんは、ゴスロリ服がないって言って結局は通販で新しいゴスロリ服を注文したくらいだからね。



「もうまた....あ、ペットショップ見えてきたよ」



看板にはワンちゃんと猫ちゃんの写真。そして店名だよね、ふれんどって書いてあるよ!



「いらっしゃいませー!」



「あ」



「あ」



私たちの来店に満面の笑顔で挨拶してきた店員は、私の命を狙い数日前に戦ったばかりの女の子、月夜だった。



「あーっ....ああーっ!!」



「あああ五月蝿いわねってああーっ!」



私もひよりも大袈裟に驚いてしまう、まさか残虐な彼女がよりによってペットショップの店員をしているなんて。


いや機械的な見た目のまま普通に店員やってるのが一番ビックリなんだけどさ。



「月夜。あなた此処で働いてたの」



数日前、私の偽物を倒したあと月夜をどうするか考えた結果、月夜の恩人である人達を私達が助け出すまで誰も殺さないことを条件に時間をあげることにしたんだよ。



「まあ、な。この前は見逃して貰ってありがとよ」



「あなたの恩人を助け出すまでの命。あなたは罪のない人たちを少なからず殺したんだから」



「分かってる。だからさ、それまではやられないでくれよ」



当然だよ、お姉ちゃんから月夜の恩人さん達を取り返さなくちゃならないし負けるわけにはいかないもん。



「言われる間でもないよ、絶対に負けないんだから!」



「そろそろ、ふぇんりるの餌を買いたいんだけど」



コホンと咳払いしてひよりはそう言った。勿論だよ、その為にここまで来たんだからね!



「犬の餌ならこっちの....」



月夜が棚からドッグフードの袋を下ろした時、ゲージの中でさっきまで大人しくしていた犬や猫が入り口に向かって威嚇しはじめた!



「ちょっ、なに、怖いんだけど」



「何時もはみんな人なつこくて優しい奴らなんだが」



「いやはや、大切な商品を怯えさせてしまったみたいで申し訳ないねェ」



そう言って彼女が店内に入って来た瞬間に動物たちは威嚇を辞め縮こまっちゃった、みんな怯えてるんだ!



それも仕方ない、入って来たこの人物はこの前に会った時と違って凄い不気味さと殺気を放っているんだから。



「何しに来やがった」



だいたい予想は出来る....この白衣の女の子は、私を月夜の代わりに殺しにきたんだ!



「君の代わりに我らが主の妹を殺しに」



生憎だけど殺されたりなんかしないよ、私は前よりずっと強くなったんだから....返り討ちにしてあげる!!





C.


「はっ、テメエの能力を貰ってやる」



「君は面倒だから置いてくよ、まあ能力を使わなくとも殺せる訳だがね」



女の子が白衣のポケットからスイッチを取り出して押すと、さっきまでペットショップにいたハズなのに、今は冷たい氷の上に立っている。



「南極だね、ここ」



南極か、道理で寒いわけだね、お肌が荒れちゃうよ、本来なら肌荒れどころか凍死だろうけど能力者だからセーフ!



「でも寒いものは寒い〜!!」



ワンピース姿で手脚の露出が多めだから余計にだ、責めて靴下くらい履いて来れば良かったなあ。



「寒いだろう。あ、能力を奪われては厄介なんで月夜と、安全のために君の親友も置いてきてあげたよ」



本当だ、ひよりも月夜もいない。気を遣ってくれたのかな?



「そ、それはご丁寧にどうも....あ、ペンギンさんだ!」



本物のペンギンを間近で見れるなんて、水族館でしか見たことないけど近くで見ると百倍かわいいじゃん!!



「緋美華、今はそんな場合じゃない」



「っとゴメン、んん」



不意討ちの口づけにビックリ、でもこうして置けば三時間の間に死んじゃうことは無いから安心して戦えるもんね。



「ふっ、準備は済んだかね。私のことはイワンと呼んでくれたまえ」



「自己紹介まで丁寧に、本当に悪い人なの?」



「数百人は罪のない人間を実験体(モルモット)として殺してきたよ。私はただ趣味を楽しんでるだけだが君から見たら悪党かもね」



「じゃあ倒させて貰うよ!」



相手は背が小さい、だから急所である頭部を狙いやすい....!!



「お前が考えている事はお見通しだ、背の低い相手の頭を狙うのは容易いが我が同胞たちは何故に津神の頭を狙わないか」



「きゃっ」



「それは本人も弱点を考慮し、頭部を狙ってきた時の対処法を他の部位よりも深く考えているハズだからだ」



イワンは腕を白い触手に変えて伸ばして来た、それを私はバク転で回避する....!



「中々にすばしっこいな」



「切り裂け、水刃」



水無ちゃんがイワンの触手を切り落とし、怯んだイワンの脚を掴み上空へ放り投げる。



「やあっ!」



落下してくるイワンの背中を、水の刃が貫く。やった!! 早速勝っちゃったよ....!



「ぐうっ、ふふふふふふ」



「なに....!?」



切り落とされたイワンの触手が再生した、それだけじゃない、水の刃が体を貫通したのに全く効いてない。



「私の触手は何度でも再生するのだ!」



再びイワンは触手を水無ちゃんに叩き付けてくる、それを水無ちゃんは避けて錫杖を手にイワンの懐に飛び込んでいく!



「なら触手は無視して本体を今度こそ....」



「効かんなァ?」



今度は貫かれるんじゃなくて叩き付けられるイワン、それでもさっきと同じで全くのノーダメージだよ!!



「再生能力や不死身とは何か違う」



「能力は別にある、これらは全て私の科学力によるものだ!!」



「てやあああああ!」



水無ちゃんに触手が伸び始めたのを見て、私はジャンプから焔を纏った拳によるパンチをイワンに浴びせてぶっ飛ばす。


イワンは体が軽いからか凄い勢いで氷山の一角にぶつかりズルズルと海の中に滑り落ちた。



「はぁはぁ、やったかな!?」



「その程度でやられるか、我が科学力は日本一、いや世界一なのだ」



イワンは海の中から勢いよく出てきて、触手を振るって来たので、私は火焔弾で撃墜する。



「詠唱完了、水神螺旋神海....!!」



立ち上がったイワンに向けて水無ちゃんが超高圧水流を発射した!!



「やこれならきっと勝てるよ!!」



「ぐうあ!」



超高圧水流は南極の寒さで固まって氷の柱と化し、イワンの全身を貫いた。さっきは体だけだったけど今度は全身を貫かれたんだし流石に死んじゃうよね!?



「ふふふふ、詠唱の声が聞こえていたが、貴様の邪魔をしなかったのは全く脅威ではないと判断したからだ!」



「嘘でしょ、不死身だとでも言うの!?」



不死身どころか全く通用していない、全身を氷で貫かれても。だけど諦める訳にはいかない....ん?



「うわああああああああなになになに?!」



いきなり海の中から十本の巨大な触手が現れて一斉に叩き付けて来た!私たちはギリギリで全部かわす。


けれど逃げ惑うアザラシやオットセイ、ペンギンさん達が氷の大地ごと潰されて海に沈んでしまい、自分が助かるのに精一杯で動物を守れなかった罪悪感が襲ってくる。



「ごめんね」



「仕方ないよ。あの触手、ただデカいだけじゃなくて本能で触れたらヤバいって感じるから」



「流石だな、察しがいい!」



イワンはビュッと口からイカやタコが吐く墨みたいなものを飛ばしてきた。お気に入りの桃色ワンピースを汚れちゃったよー!



「これがイワンの能力!?なにが起こるの」



「能力ではない、自身を改造する際に設置した墨溶解液だ」



溶解液って....ひよりが見てたアニメだと服だけ溶けてたし、大丈夫だよね?



「緋美華!!」



「うっうああああ!!」



服だけどころかお腹まで焼け爛れる....治ると言っても凄く痛いし自分の肉体が溶けるっていうのは精神的にも来るよ。



「ふふふ!美少女の顔が歪む顔はいつ見ても良い」



「このマッドサイエンティストめ」



水無ちゃんが水の刃で切り刻むも、イワンにはやっぱり通用しない!



「ふふふ、この体は不死身だ!」



「あっ、がはっ」



水無ちゃんは触手で全身を滅多打ちにされた挙げ句に、頬を殴り飛ばされてしまう。



「このこのこの....!!」



「痛くも痒くもない」



酷い痛みを御腹に感じながらも赫い焔で纏った拳を、背中に全力で連打したのに小さな体は微塵も動じない。



「だったら、これでも食らってよ!」



もうこの技に賭けるしかない、いくらノーダメージでも私と水無ちゃんみたいに痛みによる疲労は蓄積するはず。これを受けて傷つかなくても疲弊で倒れてくれたなら!!



「せやああああああ!」



「貴様のキックは私には通じん!」



「イワン、こいつの弱点は何処にあるの!?」



更に強力になった焔神力キックも弾き返してしまうだなんて、一体どうすれば倒せるっていうの....?!



「きゃっ!?」



しまった、触手に巻き付かれちゃった。ぬるぬるして気臭くて持ち悪い....それに何だか力が入らない!?



「緋美華を離して!」



「効かんと言ったはずだ!」



水無ちゃんが錫杖ごと弾き飛ばされ倒れたところに、彼女にも触手が伸び首を絞め始める。



「あうっ!? 水分が吸い取られていく....」



「貴様のエネルギーともいえる水分を吸い尽くしてやるわ」



そんなことさせな....だ、駄目だ力が入らなくて能力が使えない。触手に締め付けられたまま身動きが全く取れないよ!



「あっ、あああ、あああ!!」



やがてビクンと体を大きく震わせた水無ちゃんを見て、 は触手から彼女を解放する。


それと同時に水無ちゃんは生気を感じられなくなった目で冷たい氷の大陸上に倒れて動かなくなった。



「う、うそ....まさか水無ちゃん!!」



「先ほどの儀式で死にはしない、ただエネルギーを全て吸収され行動不能に陥ったのだ」



「きゃあああああああああ!」



力が入らない状態のまま今度は全身に電流でも流されたみたいに苦痛が走った。



「そして次は貴様だ、同じ様に物言わぬ人形となれ」



「あっ....」



エネルギーを全て吸収されたのか、ビクンと体が痙攣する。それを見てイワンが触手を引っ込めると、力をすべて抜かれた私は水無ちゃんの真横に倒れた。



「お前が私が触れることすら出来ず敗北を喫した紅鴉様の妹とは信じられんなーっ!」



「....」



背中をヒールで踏みにじられても悲鳴すら出てこない、完全な敗北だ。


こんな極寒の極地には誰も助けには来ないだろうし、きっと捕らえられて三時間後には殺されちゃうんだ。



「実験台にしてやろうと思ったが紅鴉様の妹であることに免じて処刑で済ましてやる。あと約三時間の命だ、ゆっくりと絶望するが良イーッ!」



もう何も考えられない、頭の中が真っ黒に塗り潰されてやがて私の意識は黒一色の闇の中へと沈んでいった。




D.


「置いてかれたんだけど!」



いきなり来店した白衣のロリがスイッチを押したら、そいつも緋美華とあのツインテールも何処かへ行っちゃった。


お陰で平然と人を殺してた悪いことしてた危ない奴と二人きりになっちゃったじゃない。



「いや、それが正解かもな」



「....」



警戒しないと、緋美華たちが居ない間に人質として利用する為に拘束してくるかもしれないし。



「構えるなよ、私はもう何もしないからな」



「本当でしょうね!?」



「奴は私の恩人を助け出してやると約束してくれたからな、その友人であるお前を殺したりなんかしねーよ」



どうやら嘘を吐いてる様には見えないし、本来の目的を果たすためドッグフードの袋をカウンターに置こう。



「取り敢えずは信じてあげるわ、で、正解ってどういう意味? 私は能力持ってないから居るだけ足手まといなのは分かってる」



「ああ」



相槌を打ちながら月夜はバーコードを読み取り百五十円を出せと言ってきた。私は別に良いけど凄いクレーム来そうな接客態度ね、てか安っ!!



「けど、アンタが言いたいことは他にあるんでしょ」



「見抜いてたか。もし連れていかれてたらお前は愛する人の死を目の当たりにするかもしれないんだ」



「ちょっ、誰が緋美華のことなんて愛してなんか!」



「名指ししてないんだが、まあ秘密にしといてやるが」



ヤバ、私としたことが墓穴を掘ったわ、でもコイツ意外と良いとこ有るじゃないの。



「殺されたりなんかしないわよ、あの子は前よりもずっと強くなったんだから」



「それは分かってる、私もあのガキと直接は戦ったことない

けど聞いたんだ」



「誰に何をよ」



「紅鴉の部下たちに、白衣のガキ....千戦狂叫の兵器が我らが主の妹に勝てねば彼女が直々に戦うこととなると」



緋美華の偽物ってさっきのロリが作ったわけ!? 頭が滅茶苦茶いいのは分かった。


でもそういうタイプってだいたい直接戦闘は大したことないイメージなんだけど。幼女だし余計に....あ、津神も一応は幼女でも強いわね。



「そして奴等は言った、九頭竜が出るなら主の妹も終わりだと」



見た目の割に強そうな名前なのね、いや話を聞く限り実際に強いのかしらね。



「だから何よ、大丈夫に決まってるんだからあの娘は....」



例えあのロリがどんな強い奴でもアンタならきっと大丈夫よね、いつもみたいに勝って帰ると信じて待ってるんだから。



「さあ早く帰ってふぇんりるに餌をあげないと」



会話を終えたしそろそろ帰ろう。ふぇんりるに餌をあげたいし、緋美華たちも何とか無事に帰ってくるでしょ!



「ああ、また来いよな」



「安いし財布に優しいから常連になってあげる」



こうして買い物を終え、約三十分も歩いて帰って来たら自分の部屋のベッドの上で金髪でドレス姿の派手な女が正座してるなんて頭が痛くなるわね。



「金城....何でアンタがここにいんのよ」



しかもふぇんりるを膝の上に乗せてるし!



「お邪魔しておりますわ。とにかく春野緋美華たちが大ピンチですの!!」



へえ、あの娘が大ピンチね....って、な、なんだってー!!



つづく





戦う女の子の敗北回ってよくない?

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