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赫蒼の殲滅者  作者: 怪奇怪獣魔爾鴉男
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第30話「機怪な偽物」

舞台を沖縄にする勇気はなかった。

A.


ここは亜神町から二十キロ離れた白神村、緑豊かで穏やかな風景とは裏腹に数年間で何人もの住民が発狂し精神病院へ収容されている曰く付きの場所だ。



「確かこの辺りでみんな狂ったんだよな」



「ああ、本当に大丈夫かなあ」



「弱気になるなよな、俺達で原因を突き止めるって誓っただろう!」



この短パン姿に麦わら帽子の少年ふたりは、故郷で多発する狂人化事件の謎を解かんと学校をサボって、田んぼへ調査に訪れていた。


好奇心は愛くるしい猫でさえも無慈悲に殺してしまう時があると言うのに。



「お化けの仕業だったらどうすんだよぉ」



「昼間に出ねえって」



「幽霊って夜だけじゃなく朝でも昼でも出るらしいよ、テレビで言ってたもん....って聞いてる?」



「オイなんだよアレ、見えないか!」



少年の一人が指差した方には白い蛇のようにニョロニョロと気味悪く動く十本の触手。


そしてそれは人間を狂わせる力を持つ千戦狂叫の物、彼女は服装とは不釣り合いな田んぼの中に立っている。



「見てしまった以上は仕方ないねェ」



「あはははははははははは見ろよ! こんなにいっぱい死体があるぜ、超こえー!!」



「こっちは毛虫と百足の大名行列だぞ!」



白い触手を見てしまった彼らは、有りもしない死体や蟲の群れという幻覚を狂気により魅せられてミイラ取りがミイラになってしまった。



「喋られると面倒なんでねェ、悪いけど狂って貰ったよォ」



そう言って白衣の悪魔は触手と共に田んぼの中へと沈んでいった。海底にある研究室へと向かう地下トンネルになっており、知られては面倒だと、近寄る者を発狂させて人払いをしていたのだ。



「ふふふ、遂にこの時が来た!」



海底トンネルを抜け自分の研究室に辿り着いた千戦狂叫は、厳重に保管されたソレに、月夜を改造する際に春野たちのデータ採集のため入れておいたチップを埋め込む。


そして邪悪な笑みを浮かべると保護ケースごと黄色いスイッチをガラスごと叩き割った。



「出番だ....私の最高傑作よ!」



彼女の言う最高傑作は、海を割り、ジェット噴射で空中に浮かぶと亜神に向かい始めた....!



「搭載したカメラで私はここから見物と行こう」



白き悪魔は既に勝利を確信し、彼女らの処刑風景が楽しみだと余裕の素振りでコーヒーカップを手に脚を組んで鉄製の椅子に座るのだった。




第30話「機怪な偽物」



B.


山火事の消火を終えて戻って来たら火事の張本人と緋美華が会話していた、どういうつもりなの。



「あ。お帰り!お疲れ様だよ」



「そいつと何を話してたの」



昨日に刺された針の後遺症なんだろうか、敵の癖に緋美華と馴れ馴れしく話してた月夜に無性に腹が立つ。



「何で私を狙ったのかを訊いてたんだよ」



成る程、確かにそれは気になるよね、命を狙われた本人なら余計だろうし。



「で、答えは」



「春野 紅鴉。つまりコイツの姉が私を拾ってくれた家族とも言える人達を捕らえて、妹を殺さなければコイツらを殺すと言いやがったんだ....!」



それが本当なら春野紅鴉は妹の緋美華とは真逆に悪質な奴、しかもかなり強いから厄介だな。



「お姉ちゃんが....ううん、信じたくないけど前に会った時の事を考えると有り得るよね」



「つまり貴女の姉が生きている限り貴女の危険は去らない」



例え実の姉でも緋美華の命を危険に晒すのなら容赦はしない、前に会った時は勝てる気がしなかったけど、今の私なら!



「私だけじゃないよ、罪の無い無関係な人達も....」



「今日でそんな憂いも必要なくなる」



連続で敵襲とか面倒だな、でもまだ体力には余裕がある....毎日、緋美華と一緒にランニングしてる甲斐がある。そう思いながら振り返った私が見た敵の姿は驚くべき物だった!



「嘘みたい、私が私を見つめてるよ!?」



緋美華が驚くのも無理はない....



「ついに出しやがったか、あのクソガキめ」



現れたのは緋美華と瓜二つ、いや、体格も髪や目や肌の色も全く同じ姿をした何かだからだ。


けど本物との区別は容易い、本物はこんな冷たい眼差しをしないしオイル臭くもない!!



「どういうこと?」



「さっき私と一緒に白衣のガキがいただろ。そいつが開発していた対お前ら用の最終兵器だよ」



ならば敵だ、緋美華の姿をしているからやり辛いけど倒さなければならない!



「硬い....」



私の錫杖が全く通用しない、どころか逆に先っぽが曲がってしまうとは。



「ワタシのブキの方ガ素晴シイ」



「それは私の....!」



いつも私が武器として使用している錫杖に、偽緋美華の腕が変形しただと....?



「とりゃあ!!」



横から緋美華が飛び蹴りを入れてくれなければ、油断した私は危うく錫杖に貫かれていたところだった。



「ごめん一瞬、油断した。緋美華、前後から挟み撃ちにするよ」



「うん、分かった!!」



私が前方、緋美華が後方に移動して偽緋美華を挟む。そして高圧水流と灼熱の渦の前後攻撃をまともに受けた偽物は大爆発!



「よし、勝った....!?」



ミサイルが煙の中から襲ってきた....かわしながら良く見ると緋美華の方には黄色の熱線が放たれている。



「ワタシにシカクはナイ」



「信じられない」



あれだけ高威力の技を前後から受けて傷ひとつ付かないだなんて。月夜は最終兵器と言ったが一体なにで作ったんだろうか?



「でも機械だし攻撃し続ければいつかは壊れる筈だよね!」



さっきの爆発音で異変を察知して近隣住民も避難してくれたみたいだし、思い切りやらせて貰おう。



「せやせやせいやーっ!」



「データでミキッテイル」



機械の癖に緋美華のパンチやキックに素早く捌いている、緋美華のデータを取っているだけあって互角。



「きゃっ....!?」



いや、互角どころか上か。攻撃を全て無効化した偽物は本物の胸元に水平チョップを叩き込んだ。



「母なる愛の影、産むならば死に沈めるも一滴の選択か....」



緋美華が時間を稼いでくれたお陰で呪文を唱え終えられ、私が持つ最上級の技を放てる。核シェルターすら破壊できる威力とも言われる超高圧水流!!



「深淵螺旋海砲!」



「サスガにコレをクラエばヤバいかナ」



偽緋美華は自分自身を青い水の壁で覆い、私の深淵螺旋海砲を防いでしまった....!



「これも防がれてしまうなんて」



マズい、深淵螺旋海砲を使用したせいで魔力がもう僅かしか残っていないな。



「力ヲ使イスギテ動ケナイヨウダネ」



「水無ちゃんをやらせはしないよ!」



背中に放たれた緋美華の熱線も硬いボディに跳ね返され、逆に放った緋美華本人にダメージを与えてしまう。



「うわーっ!」



「コチラはモウウゴケナイみたいダカラ、キサマをヤルか」



偽物は本物に攻撃対象を切り替えた。



「えいえいえいえいえいやーっ!」



「キカぬナ、別二クラッテモ問題ナカッタネ」



緋美華の焔パンチ連打にも微動だにしない偽物は、逆に虹色の焔を纏った腕で本物の腹を貫く。



「がはっ」



偽物は本物が倒れることも許さず人差し指を回転させて発射、それは緋美華の脚に刺さると水蒸気爆発を起こして彼女の下半身を吹き飛ばしてしまう!!



「あ、ああ....」



「緋美華....!」



「なんて火力だよ」



緋美華の眼から生気が消えてバタリと残された上半身だけでうつ伏せに倒れた....まだ死なないし再生はするけど、それまでは戦闘不能。



「このおおおおおおっ!!」



私は怒りの侭に偽物に殴り掛かるが、偽物のお腹がパカリと開いて、そこから巨大な焔の玉が放たれる。


これを水の障壁で防ごうとしたけど火力は予想以上で水の障壁は蒸発し、私も吹き飛ばされてしまった。



「....あうっ!」



倒れた私の脚を凄まじい怪力の両腕が掴む。



「何をする気なの....」



私の問いに偽緋美華は本物が決してしないような下衆な笑みを浮かべると、何度もコンクリートの地面に叩きつけ始めた。顔中から血が流れる、痛い....!!



「うあああああ!」



最終的には放り投げられて路駐していた黒塗りの車に後頭部をぶつけてしまい、体の限界を迎えた私は仰向けに倒れた。



「フフふ」



「あがっ!?」



鉄臭くて油臭い指が私の口に侵入してくる、こいつ今度は何をする気なの!?



「んっ、んんんん!!」



凄まじい怪力で上下に口を引っ張られると、ついに私の顎は裂けて大量の血が口から噴き出す。



「〜〜〜〜〜!!」



痛みに転げ回る私を偽物は青い瞳で見下す、本物の青い瞳は穢れなき純粋さを感じさせたがコイツの眼は人の命を容赦なく引きずり込む残酷な海の青....!



「このままでは再生するな。連れて帰り三時間後に改めて処刑する」



「〜〜〜〜!!」



偽緋美華が気絶している緋美華の頭を掴んで持ち上げる、私は無視して彼女だけを処刑するつもりなのか。


助けたいのに今度こそ体に力が入らず全く動けない、もう駄目だと諦めかけたその時、緋美華の体が焔に包まれた。


しかも今までみたいに白ではなく、薔薇の様に燃え上がる深紅の焔に....!!




C.


「すげえ、あの鋼鉄の腕が一瞬にしてドロドロに溶けちまったぞ!!」



水無ちゃんと月夜、偽物も目を丸くしている。だけど一番驚いてるのはたぶん私だと思う。


白い焔が赫い焔になってるし、さっき吹き飛ばされた下半身も赫い焔で形作られて本物の肉体みたいに動かせるし!



「マダ立テルとは驚キだ、ナラバ、フレアミサイル、アクアミサイル発射」



「はあっ....!」



私は水色と赤色のミサイルを回し蹴りで打ち返し、逆に私の偽物に食らわせて溶けていた片腕を奪う!



「ナラバ」



偽物は水無ちゃんの物を模した錫杖に残った腕を変形させたけど、赤い焔を纏った手刀でへし折った。もうコレは使えないね!



「はああああ! 赫 龍(ロートラゴン) !!」



「アクアシールド展開....」



「真っ赤に燃えちゃええええ」



水の障壁も私の灼熱の焔の前には蒸発し、本体も黒焦げになって流石に脂汗ならぬ油汗が流れてる。



「バカな....!モハヤコノ技シカナイヨウダ」



私の偽物はジェット噴射で飛び上がって右脚に焔を、左脚に水を惑いドロップキックを繰り出してきた。



「返り討ちにしてあげるよ!」



たぶん喰らえば敗北は免れない、こいつの一番強力な技だ。それでも今の私なら、紅蓮の拳を一発だけ浴びせれば十分....!



激熱鉄(げきあつてっ)パンチ!」



「損傷九十パーセントオーバー!」



キックとパンチがぶつかり合い、衝撃波を発生させ周囲にある建物の窓ガラスを全て割る。あちゃー弁償しないとダメかな?



「あ、ぎえあ」



でも私の勝ちみたいだね、ま、偽物が本物に勝てる訳ないんだよね....!



「とどめだよ!」



偽物の首があらぬ方向に曲がっていたので力いっぱい捻り切ったら、ついに起動停止してくれたみたい。



「スリー....」



「あれ?」



首を落としたんだから流石にロボットでも起動停止する筈だよね? あれれ....?



「緋美華、そいつ自爆する気だよ!伏せて!!」



「トゥー....」



最期の悪足掻きってわけか、でもそうはいかないよ。



「まだ明るいけど花火になっちゃえ!」



私は偽物を持ち上げると、そのまま空高くへ全力で放り投げた。ふぅ、間に合って良かった....!



「ワン....good-bye」



爆音が空に響き、金属片が落下してくる。人に当たったら大変だ、私は火焔弾により上空で次々とそれらを消し炭にし、這いつくばったまま水無ちゃんも水流を放ち消滅させてくれた。



「水無ちゃん、大丈夫....じゃないよね」



勝利を確認した私は直ぐに倒れている水無ちゃんの元へ駆け寄る。視界がぼんやりしてて音だけしか聞こえなかったけど、それでも酷い目に遭わされたことを私は理解していた。



「ううん、もう回復したよ」



「ゴメンね、わたしもっと強くならなきゃいけないよね。そうしたらあんな目に遭う前に」



「ぎゅーっ」



いきなり水無ちゃんが抱き付いてきた、やっぱり良い香りするなあ。シャンプー良いの使ってあげてるのとは別に、素で爽やかな匂いがするんだよねえ水無ちゃんは。



「お盛んだな」



もう茶化さないでよ!



「私の責任だから、貴女が気に病む必要はないの」



「でも....」



「遅いから様子を見に来てみれば、アンタらこんな公共の場所で随分と熱いことねぇ?」



げっ、安全の為に家に居るように言ってたのに何で来ちゃったのひよりー!!



「あ、あのー....コレはですね」



誤解されちゃうよね、うん。いや誤解と言うんだろうか、端から見れば何イチャついてんだこいつらってなるよね。



「なんで風見ひよりは私が緋美華と良い雰囲気になった時に限って現れるのか」



「現れちゃ悪いわけ?!」



「悪くないよ〜、あとね二連戦だったから遅くなっちゃったんだよ」



まあアンタが簡単にやられるわけないとは思ってたわよ、とひより。本当かなあ、でも心配してくれて嬉しいな!



「なあ、お前ら私のこと忘れてない?」



「あ、居たんだ」



私たち三人の声が重なった。私含むみんなに忘れられてたなんて敵だけど少し可哀想かも。



「....」



月夜をどうするか考えて置かないと、それに何で白い焔が赫い焔に変わって強くなれたんだろう....? 素直に喜びきれないのは何でかな。



つづく


書き終えて気付いたけどこれ勝ち方が強引やな、え、今までも?知りません(口笛)

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