第3話 「蜘蛛の糸、妹の意図」
月曜日からp○4でネット接続出来ないんすけど、LANケーブルのが悪いのかモデムが悪いのか
A.
とある森の中で女が地図と睨み合いをしていた、彼女の名前は佐祁 頼亜。結婚詐欺により私腹を肥やしている悪女である。
頼亜は野鳥の観察が趣味で、都会から珍しい野鳥を求めて田舎町の森に訪れたものの迷ってしまったのだ。
「迷っちゃったぁ、どうしよう....ん。洞窟?」
佐祁がふと見つけた洞窟に興味本位で近付いてみると、中から野太い悲鳴や、助けてくれ。辞めてくれ。という声が聞こえてきた。
「こんな昼間から幽霊....?」
そういえば昼間にも幽霊は現れると結婚詐欺のターゲットの男が言っていた事を思い出して、佐祁の脚はガクガクと震え始める。
「逃がさないよ」
背後からそう聞こえてきたので思わず振り向くと、年端のいかない少女がいた。しかし皇帝を思わせる程に豪華な格好は幼さよりも威圧感を強調している。
「うわ、あなたは誰!?」
「答える必要は無いかな、どうせ死ぬんだし」
「なっ!」
いつの間にか佐祁は二メートルもある巨大な黒い蜘蛛達に囲まれていた。しかも彼らは皆前脚を上げて威嚇している、非常に危険な状態だ。
「あはははは、私のかわいい下僕達!食事の時間だよ」
「きゃああああああ!」
佐祁の身体に蜘蛛達が一斉に毒液を噴射すると、彼女の体は全く動かなくなってしまう。
そして容赦なく蜘蛛達は佐祁の体に群がり、鋭い牙で皮膚に穴を空けて臓物を露出させて啜り始めた。
「たまには女の悲鳴もいいね」
佐祁の絶叫と、少女の高笑いが深く暗い森中に響き渡り、動物達を戦慄させた....。
第3話「蜘蛛の糸、妹の意図!」
B.
「水無ちゃんの妹、アイツが!?」
女帝蜘蛛アトナクア、それが水無ちゃんの妹であり男子達を拐い、先生を殺した少女の名前....。
「本名は津神 無苦だけど色々あってそう呼ばれるようになったの」
姉妹だけあって本名は似てる。でも水無ちゃんは良い子なのに妹の無苦は凄く悪い子だったし性格は似ているどころか真反対だよ。
そもそも無苦があんな事をした理由は何なんだろう、てか水無ちゃんは何か知ってる筈....知りたい。
「その色々を聞かせなさいよ」
ひよりがそう言うと水無ちゃんの表情が曇った。そうだよね....誰にだって知られたくないことはあるよね。
「良いよ水無ちゃん。話したくないなら無理して話す必要なんて無いんだから」
我ながら何を都合の良い事を言っているんだろう、さっきまでは心の中で早く真実を話して欲しいと思っていた癖に。
「ありがとう。男の子達が連れて行かれた場所も分かるよ」
「本当に分かるの!?」
ちょっと大袈裟に反応しちゃったかな、希望が見えてきてテンションが上がったから仕方ないよね。
「案内はする。その前に」
「えっ、ちょっ....んんっ!?」
一瞬頭が真っ白になった、私の唇が水無ちゃんの柔らかい唇に塞がれたのだ。しかも舌まで絡んで....ディープで熱いキスを、こんな小さい娘とするなんて倫理的にマズイ気がするよ。
「こら、なにやってんのよ!!」
「痛い」
「ぶはっ....なんでこんな」
ひよりが水無ちゃんに拳骨を食らわせた事により、ディープキスから解放された。でも抵抗しようと考えれなかったのは何でだろう。
窒息するかと思うほど苦しかったし、苦しいのが好きって趣味を持ってる訳じゃないのに何で....それよりも。
「今のファーストキスだったのに酷いよぉ、水無ちゃんの馬鹿馬鹿!」
「私もだよ....ごめんね。でも必要な事なの」
「あうぅ、仕方ないなぁ」
子猫みたいに潤んだ瞳が可愛すぎて怒る力が抜けていく、もう許しちゃうしかないよ、それに必要な事らしいし....。
「全くアンタは甘いんだから、というか何でキスが必要なのよ」
「そんな事より、一刻も早く助けに行かないと」
「....危ないわよ、敵は人間離れしてる」
分かってる、学校で見た無苦は人間とは思えない事を平然と遣って退け、私とひよりの二人がかりでも....それどころか警察でも敵わなかったもん。
そんな相手に挑もうとしている、無謀なのは分かってる、だけど男の子達を見殺しには出来ない!
「怖いなら待ってても良いんだよ」
「は?ついて行くわよ、アンタは私が居ないと駄目でしょ」
もう....ひよりは私を何時も子供扱いするんだから、でも一緒に居てくれると心強いし、なんか安心するんだよね。
「じゃあ水無ちゃん、お願い」
「分かった」
無苦は女の子は狙わなかった....もしかしたら女の子である私達なら勝てはしなくとも男の子達を取り返す事は出来るかもしれない。臆病な心にそう言い聞かせながら出発した。
C.
水無ちゃんの案内通りに、先ずは電車に乗り隣町の隣町である駿都町まで向かい、そこで降りてから東に三十分くらい歩くと森林の入り口に到着した。
「ここにいるよ」
「随分気味の悪い所じゃない」
「お化けとか出そうな雰囲気だよ」
今はまだ夕方四時だと言うのに、まるで夜の様に暗く、カラスや蛙、黒猫の鳴き声まで聞こえる。
やっぱりお化けが出ても不思議じゃないよ、入ったら二度と出てこれないと言われたとしても納得しちゃう。
「まあ序盤のダンジョンが森ってのは有りがちね」
「ダンジョンって....ゲームのやり過ぎだよ」
ひよりはゲームやアニメが大好きなんだよね、恥ずかしがって皆には隠してるけど。私にバレちゃった時も凄く慌てて可愛かった、なんて楽しい回想しながら進んでると怖くない。
皆で会話しながらならもっと良いんだけど、無苦に気付かれなら厄介だから静かに進まないと。
「きゃっ!」
「あわわ!」
私とひよりが何かに足を引っ掛かけて転倒してしまう、すると巨大な蜘蛛達が次々と木から落下してきた。
「きゃあああああ、蜘蛛だよ蜘蛛気持ち悪いよ〜〜〜〜!」
「ちょっと抱き付かないで!」
「だって〜〜〜!」
ひよりに抱き付いたら怒られた、でもでも本当にビックリしたんだもん。それとひよりだって目を丸くしてた癖に、水無ちゃんは平然としてるけど。
「嬉しそうだね」
「そ、そんな訳無いでしょ!」
蝶々以外の虫は苦手なのに、こんなに大きな蜘蛛に囲まれるなんて生き地獄だよ。しかも前脚を上げて威嚇しているし怖い!
「吸い上げなさい、吸粋水」
水無ちゃんがそう呟くと、巨大蜘蛛達は木乃伊みたいに干からびてしまった。どういう理屈なのかは分からないけど助かった....。
「水無ちゃん、今のって?」
「相手の水分を奪い自分の魔力に変換したんだよ、相変わらず怖い能力だね」
水無ちゃんの代わりに説明してくれたのは幼くも人を小馬鹿にした様な声....間違いない!
「糸を張り巡らせて獲物を待つなんてあなたらしいね、無苦」
「まさか生きてたとはね、お姉ちゃん」
津神 無苦....水無ちゃんの妹であり、殺人犯であり誘拐犯、こいつから絶対に男の子達を取り返してみせる。
「男子達を返して!」
「男子ぃ?ああ、この中だよ」
無苦が指差した洞窟に近付くと、凄い臭いがして吐きそうになる。腐った牛乳すら目じゃないくらい酷い臭いだ。
中がどうなってるのか、皆無事なのか気になるけど鍵のかかった鉄の扉で入り口が塞がれて入れない。
「おぇええ、何なのこの臭い!」
「百聞は一見に如かず。レッツ感動のご対面〜〜」
「なっ!」
無苦が指を鳴らすと洞窟の扉が消滅し中が見えた、見えてしまった。拐われた男子達の首吊り死体が....いや、見知らぬ男性の姿もある。
「惨すぎるわ、これが人間のやる事なの!?」
「無苦ならやるよ。昔から冷酷な奴だった」
よく見ると吊られてる全員が汚物を垂れ流して苦悶の表情で息絶えている。酷い悪臭の原因はこれだったんだ....よくもこんな酷い事を!
「手遅れだったようだね?」
何故こんな事をしたか理由は分からない、いやそんなのどうでもいい。津神 無苦....お前だけは絶対に赦さない!
つづく
この前散歩中に山羊が繋がれててビックリしました、田舎とはいえ...