第18話「ありのまま今まで体験してきたこと」
仕事行きたくねえだりいあああ!!
A.
何の目的か風見ひよりを探す幽輪、彼女が次に寄ったれコンビニも先ほどの居酒屋と同じく血の海に沈められていた....!
「風見さんは前に此処でバイトしていたから知ってる、言うから殺さないでくれ!」
「なら吐け、今ヤツは何処に居やがるのかをな」
「ここから五キロ行って右に曲がって暫く行くんだ、そこに彼女の家がある」
幽輪に首を捕まれたまま質問に答える店長は、目の前で店員や警官達を爆殺された恐怖で声が震えている。
この自分に怯え恐怖する様に幽輪は何時も心地良さを感じずには居られない為、怒っているような口調でも顔は笑っているのだ。
「遂に此の時が来たか。待っていろ....必ず貴様に復讐してる!」
コンビニの店長は正解を答えたにも関わらず無慈悲にも顔面を爆破されてしまった。知らなくても知っていても、答えても答えなくとも幽輪に出会った時点で死は免れない!
「へっへっへ俺達も手伝わせていただきやすぜ」
「くくく....なら付いてこい貴様ら、奴をぶっ殺したらテメェらの好きにさせてやる」
「マジすか!? あんな上玉を好きにできるなんてよ」
部下たちはコイツが殺す目的だと、幼馴染に抱き付かれ、頬を赤く染めている風見ひよりの写真を、幽輪から見せられたことがある。
その時、彼らはみな可愛い娘だと思った....彼女を憎む幽輪も容姿の良さは認めている程だ。
「幽輪様が負けることは有り得ねえ、今から楽しみだぜ」
悪党どもの歪で品の無い高笑いが深夜の街に響き、風見ひよりの元へと近付いて行く....安らぎの時間は刹那なのか。
第18話「ありのまま今まで体験してきたこと」
B.
「....以上で話は終わり」
水無ちゃんが話をしてくれた内容は聞いてるだけで辛くなるものだった。眠気も疲れも飛んで行っちゃった代わりに悲しみがやって来たよ....!
「水無ちゃ〜ん!!辛かったね!!でも、もう大丈夫だよ!」
話を纏めると、親友に裏切られいじめられて人間不信になり、孤独になったあと森で暮らし始める。
そんな黄衣として現れた須田に捕らえられて毎日、殺戮を強要され嫌だと逆らえば爪を剥がされるなどの拷問。
与えられる食事は虫や雑草、お風呂にだって入れてくれない、そんな毎日を過ごしてく内に強くなったから逃亡を決行。
それで須田の部下....幹部達を倒しながら逃亡して私の家に隠れていたみたい、やっぱり過酷な人生だよ....!
「抱き着くのって習性なの、嬉しいけど」
これからは幸せな人生を送らせてあげたい、今までの辛い記憶を忘れちゃうくらいに、いっぱい可愛いがってあげないと、そんな気持ちを込めて強く抱きしめる。
「習性って犬かコイツは、まあ、癖みたいなもんね」
「嘘、私ってそんなに抱き付いてる!?」
「自覚有りませんの?」
無くて七草って言うもんね、意外と自分の癖って人から見れば目立つのに自分じゃ気付けなかったりするんだよね。
「正しくは無くて七癖よ」
「うう、心を読まれた!」
ひよりは私の考えてる事を何時も当てるんだよ、いくら長い時間を一緒に過ごして来た幼馴染でも凄いよね。一方の私はひよりの考えてる事が全く分からないのでした。
今はアニメとか漫画とかゲームのこと考えてるでしょって言ったら、趣味ではあるけど四六時中考えてる訳じゃないから!との答えが返ってきたこともあるし。
「読心術も会得されてるだなんて、流石ですわ風見さん!!」
「緋美華は単純で分かりやすいってだけよ」
「確かに単純というか、本当に脳味噌が入ってるのか分かりませんからね」
「二人とも酷いよぉ!」
頭は良くないのは本当だけどさぁ....一生懸命勉強しても赤点ギリギリだし....でも運動なら割りと自信が有るから別に良いもん!
「....」
あれ、水無ちゃんが鳩に水鉄砲食らったみたいな顔して呆然としているよ....? どうしたのかな?
「豆鉄砲ね、もうコレ態とでしょ!」
「どうしたの水無ちゃん?」
あんたスルーしたわね、ってひよりが睨んでるけど今は水無ちゃんの事を優先しないと。具合が悪いんだったら大変だし!
「いや....想像してたのと違ったから....みんなもっと嫌悪感を現してくるかと」
「アンタのこと元からあんま好きじゃないし」
「いひゃい」
「もう....ひよりってば水無ちゃんを虐めたら、めっ、でしょ!」
ひよりが悪態をつきながら、水無ちゃんのぷにぷにで柔らかい頬っぺを引っ張り始めたので、脳天に軽くチョップを食らわせて辞めさせた。
「い....痛い、別に虐めてないわよ」
あれ....軽ーく脳天チョップしたのに涙目になってるし予想以上に痛がってる。力な加減を間違えちゃったかな?
「ごめんね、痛いの痛いの飛んでけ〜」
「あっえっははははは恥ずかしいから辞めなさいよ」
「マッチポンプ戦法ですわ!!」
まっちぽんぷって何だろう、マッチを発射する戦法? うーん想像したら滅茶苦茶シュール....絶対に意味違うよね。
「違うと思う....くすっ」
あ....いま水無ちゃんが今までに無いほど良い顔でニコって笑った。居心地いい場所じゃなきゃ、こんな顔は出来ないよね。
よーし水無ちゃんにとって、もっと居心地良くて楽しくて幸せな場所にして行くぞー!!
C.
「あーんもう、水無ちゃんってば笑顔がかわいい〜!」
「嬉しい」
「ぐぬぬ....いつも私にばっか抱き付いて来る癖に!」
「春野さんが貴女に振り向かなくとも、ワタクシが何時でも抱き締めて差し上げますわよ!」
「絶対諦めないんだから、まだ負けてないし....って振り向くて違うわよ!別に緋美華のことなんて好きじゃないんだからね!!」
えー!!私はひよりのこと大好きなのに、でも素直になれないだけって事は分かってるんだからね〜!!
「なんて不自然なまでに典型的なツンデレ台詞」
「アンタ何時そんな言葉を覚える機会があったわけ....?」
「二人が学校行ってる間に風見の家、漁ったから」
ひよりの家のベッド下には変わった本やゲームが隠されてるもんね、それを見つけて読んで覚えたに違いないよ!
「不法侵入じゃない....きゃ!?」
ひよりが水無ちゃんに拳骨すると同時に爆発音がした、それも近くから....まさか爆発したのって、ひよりのお家じゃ....!?
「今度は何ですの?!」
みんなで外に出てみると黒い服の男達が、予想通り粉々になった風見宅の前に集まっていた....その先頭で仁王立ちしているのは、見覚えのある女の子....幽輪ちゃんだ!?
「アンタ帰って来たの!?」
「そっちに居たのか、相変わらずムカツク面だぜ」
小学生時代の同級生、浅見 幽輪ちゃん。中学生になる前に引っ越しちゃったけど控え目な性格だったのがこんなに変わるなんて!
「風見さんに対する暴言は私が赦しませんわ! それに風見さんの家も爆破するなんて!!」
「ハッ....テメェも風見ほどでは無いが、イラつくぜ!!」
「きゃああああああ!!」
幽輪ちゃんが背後に立った金城さんの腕を掴んで爆破し、その様子を見た黒服の男達が流石は幽輪様だと拍手喝采。
何でこんな奴らを仲間にしたんだろ、幽輪ちゃんの最も苦手なタイプだったのに....そんなこと考えるのは後、今は金城さんをどうにかしなきゃ!
「金城!!」
「ひより、救急車呼んで!」
「え、ええ!!」
タフな金城さんを一撃で戦闘不能にするなんて凄い攻撃力だよ....これでひよりの家も破壊したんだね。
争いを避ける性格だったのに攻撃的な能力を発現して....一体何が有ったの?!
「来たところで救急車も破壊してやる。無駄に死人を出す気か?」
これじゃ迂闊に救急車を呼べないよ、金城さんの全身は火傷だらけで汗の量も半端じゃない!
「アンタ、良い加減にしなさい!」
「そうだよ幽輪ちゃん、何でこんな酷い事をするの!? 」
「風見ひより、お前に対する復讐だよ」
「復讐って....私アンタに何かした!?」
「自分は知った事じゃねぇよなあ、まあお前のせいでその女は死ぬ事に変わりは無いがよォ!」
「大丈夫ですわ....じ、自力で病院まで転移を...風見さんと一緒に」
「させるかあッ」
「がはっ」
私の腕が届くより先に、幽輪ちゃんの手下が金城さんの金髪を掴み上げる。間に合わなかった....!!
「良くやった」
「ハッ、お褒めに預り光栄です」
「相変わらず卑怯な手を使うね、狂爆暴燻」
「げっ、なんだ!?」
金城さんを捕らえていた黒服の体内から声が聞こえたかと思うと、彼の体は破裂。中から水無ちゃんが現れて金城さんを私達の方へ放り投げた!!
「ちょっと乱暴ね!」
「ひより、ナイスキャッチ!」
今は気絶しているけど、ひよりに抱き抱えられてるんだから金城さんは起きていたなら激しく喜んだに違いない。
「テメェ!!」
「幽輪様の邪魔をするんじゃねェ!」
大勢の黒服たちが一斉に銃口を水無ちゃんへ向けるも、地面から勢い良く水が噴き出て、彼らは水圧で破裂し血と肉片の雨を降らせた。
「両方の技、魔力の消耗が激しい」
「さすが水無ちゃんっ!」
「クソっ....人質を!!テメエこそ変わらず澄ました顔してよ」
あれ、相変わらずって水無ちゃんはさっき言ってたけど、幽輪ちゃんと知り合いだったの? 意外なところで繋がりが有るんだね、世界は広いのか狭いのか。
「こいつは須田の仲間の一人だった女」
「何すって!?」
「姿は余り現す方じゃ無かったから、風見ひよりに対する復讐心も緋美華の仲間だとも知らなかったけど」
嘘、昔に転校した友達が水無ちゃんの仇敵である須田の仲間だったなんて....信じられない偶然だよ。
「くくく、俺はヤツとは格が違う、人質が無くとも部下が全滅しようと貴様ら如きに俺は負けんぞ!」
「ひよりは金城さんを病院まで運んであげて!」
「任せなさい、私のせいで巻き込んじゃったみたいで責任有るしね」
「チッ、逃げ足の速い奴だぜ。だが邪魔な奴等を殺してから必ず追い付いてぶち殺してやる!!」
「そんな事は絶対にさせないよ!」
何が有ったのかは分からないけど、言葉遣い、態度、目付き、なによりも心が歪んで変わってしまった曾ての友達....お仕置きして目を覚まさせてあげないと!
つづく
楽な仕事無いんすかね?