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赫蒼の殲滅者  作者: 怪奇怪獣魔爾鴉男
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第14話「小都市さらう竜巻嵐」



A.


ダロスが撃破され捕まった事を知らせる為に薄汚れた黄色の衣を纏いしその者の居る湖へ、フィエーアと千戦狂叫は来訪していた。



「ダロスちゃんが負けたんだって、そんな奴と戦うなんて面倒になったから退くよ」



「私も同じく。イグの奴も戦う気が失せみたいだぞい、理由は解らないけどねェ」



「私が直接、手を下す時が来たか....」



ダロスとイグ、この二人は黄衣に|食糧と研究材料と暇潰し《人間たち》の提供して貰う代わりに協力していたに過ぎない。恐怖や力で支配していた者どもとは違うのだ。


その為この四人....いや今はダロスが居ないので三人、を強引に使おうとすれば戦闘は免れない。


そうなると幾ら圧倒的な強さを持つ黄衣といえど無傷では勝てず、目標との戦闘時に支障を来してしまう。もはや黄衣が直接、戦う他に選択肢は無いのである。



「まあ兎に角、頑張ってね〜バイバーイ」



「君の勝率は九十パーセント、サンプルにもならない戦いになるだろうし私も去るョ。健闘を祈っておるぞ」



手を振りながら二人は場を去り、静寂に包まれると黄衣は写真を取り出す。そこに写って居たのは黄衣自身と隣で青いサイドテールの幼女が笑っている姿。



「ゆくぞ、ロイ、ツァ」



黄衣が暫く写真を見つめて懐にしまい、二つの名前を呼ぶと同じ顔をした二人の女が黄衣を間に挟むように現れた。



「遂に来た」



「我ら双子が主の為に戦う時が!」



黄衣は双子を引き連れ、緋美華たちの居る亜神町へと風と共に向かい始めた。決着の時はすぐ其所まで近付いている....!





第14話「小都市さらう竜巻嵐」



B.


今日は色々な戦いが有ったなぁ、遊園地に行って金城さんやにん気付けばもう夜の八時。三日分の出来事を無理に詰め込まれたみたいな一日だったよ。



「ふう、ヴォルフトは檻に閉じ込めて来たよ。疲れた」



「黒狼も街から居なくなったから、避難してた皆も帰ったみたい」



まさか石堀さんと三尋木さんが悪い能力者を捕まえる警察だったなんて吃驚したよ。全然そんな素振り見せなかったし。



「なら何故、私達が倒すまで出て来なかったの」



「そうだよ手伝ってくれても良かったじゃん!」



そうすればもっと楽に倒せたかも知れないし、鞭で叩かれたり身体中を刺されたりしないで済んだのに。


今までの戦いで一番痛かったかも、水無ちゃんとキスして三時間は不死身だし治るとは言え痛覚が無くなる訳じゃないんだよね。



「君たちが戦ってる間に黒狼が校内の至るところに現れ、その対処で忙しかったんだ」



「そうだったんだ、知らなかった....ごめんね」



「二人で? 組織なら仲間に支援要請すれば良かったのに」



「いやはや、対悪の能力者警察はいま現在、私と三尋木ちゃんしか居ないのです。組織力は一点!」



....だ、駄目じゃんか!!



「それ組織って言わないよ、ただのお笑いコンビだよ!」



「珍しくツッコミに回る緋美華も可愛い」



「えへへ、私は美少女だからね。でも水無ちゃんほどじゃないよ!」



珍しくって何時もボケてる訳じゃないんだけど、可愛い水無ちゃんに可愛いって言われて嬉しいから気にしない!!



「ラブラブだね、二人とも」



えへへ....ラブラブだよ私と水無ちゃんは、それはもう実の姉妹みたいに仲良しなんだから!!



「キスまでは済ませた」



「そうそう、キスまでってあわわわわわ!」



流石にキスしたのを人前で言われちゃうのは凄く照れちゃうよ、勘違いされちゃうかもしれないし、キスは恋人同士でする行為なんだから。


水無ちゃんと私は姉妹みたいなもので恋人とかじゃ....でもこの娘の恋人になら....って何考えてるんだろ。私は高校生で水無ちゃんは小学生くらいの年なんだから、法律的にヤバいよぉ!



「あははは女の子同士だもんキスくらいするよ、そんな事で恥じらっちゃうなんて」



「私達はした事ないぞ」



「じゃあ三尋木ちゃんも私とキスする?」



「なっ」



「私の三尋木ちゃんへの好感度は四十八点だからね、して良いよ」



「低いな!!」



さっきまで死闘を繰り広げていたとは思えない楽しい雰囲気....悪い能力者が存在する限り此の明るさは脅かされちゃうんだね。



「あ、ひよりに電話しとこ!」



きっと心配してるだろうしね、ひより....って安否を確認するメールが八百十件も来てるし! もうひよりってば心配し過ぎだよ。



「....なにあれ!?」



ひよりの電話番号に掛けようとした瞬間に三尋木さんが窓の外を指差して叫んだ。其所にはクエスチョンマークみたいな形の変な竜巻が三つ、それらは軈て人の姿へと変貌を遂げた。



「敵襲か、闘いが続くね」



「アイツが....黄衣が遂に直接、殺しに来た」



「水無ちゃん?」



確か前に水無ちゃんは黄衣がどうのって呟いてたなぁ。もしかしたら真ん中に居るボロボロに汚れた黄色いフードが黄衣?



「二人とも休んでて、私たちが行くから」



「駄目、逃げて」



「見る目が三十点くらいしか無いなー、私たち結構強いんだから!!」



水無ちゃんの制止も振り切って石堀さんと三尋木さんは校庭へと出て行っちゃった。



「私達も行こう、水無ちゃん?」



「....」



青冷めた顔、小さな体は震えている。水無ちゃんは怯えているんだ、幼い乍も冷静で肝の座ってる此の娘が怯えるなんて!



「ぎゅうううう」



「わっ!?」



強く優しく水無ちゃんを抱き締める。ゴスロリ服が冷や汗でビッショリ....今回の敵は彼女がこんなに怖がるほど手強いのかな。



「怖かったら言って良いんだよ。私一人でも戦うから」



「やだ、貴女を失うのはもっと怖い。アイツが一人で勝てる相手なら怯えたりなんかしないよ!!」



「水無ちゃん....」



こんなに水無ちゃんが弱気になるなんて、何か因縁が有るのかな? 過去に戦った事が有るとか....!



「大声出してごめん、貴女は幾ら説得しても戦うんだよね。なら私も戦うよ」



「良いの?」



そう訊いたら水無ちゃんはこくりと力強く頷いた。なるほど此が無言の返答って奴だ!!



「そっか....行こう、水無ちゃん。私達ならどんなに強い相手でも絶対に勝てるよ」



「不思議。根拠は無いのに、貴女が言うとそう思える」



「だって本当の事しか言わないもん!」



そう言ってウィンクすると、水無ちゃんは私の手を握った。この手の温もりは一層強くしてくれる気がする!!




C.



「邪魔者は去れ、我が処刑するのは二人のみ!」



「わ〜〜〜〜〜吹き飛ばされるゥううううう!」



「瞬殺とかああああああああああああ!」



校庭に出てきた時には石堀さんも遠くに吹き飛ばされちゃった!! 二人とも仇は取ってあげるからね、多分あれぐらいなら死なないとは思うけど。



「邪魔者は消えた....行け、奴らを倒し我の処刑を楽なものにせよ!!」



「ハッ!」



「我が主の仰せの侭に....フッ」



黄衣の指令で両脇に居た同じ顔の女二人が同時に、私達を上空から吹き矢で狙ってきた!



「うわわ、危なっ」



「遅過ぎて欠伸が出るよ」



「ナイスキャッチ、アンドリリース!」



飛んできた二本の矢を水無ちゃんは瞬き一つせずに掴み取り、敵二人の片眼を狙って投げ返した。凄いカッコいい!



「リリースと言うよりはリターンのが近い」



「おっと危ない危ない!」



「貴様の方こそスローな投擲だな」



向こうも凄いよ、水無ちゃんの投げ返した矢の速度は近くを飛んでいた燕よりも遥かに速いのに難なく受け止めてしまうなんて!



「我らが姉妹の力は疾風の如し」



「並の速さでは勝てぬぞ」



と、自己紹介をしている同じ顔の二人が、いきなり地面に激しい勢いで落下し爆音を響かせた。駆け寄って見てみると後頭部が叩き割られてる....グロくて吐きそうだよぉ!



「おーっほほほ、油断大敵ですわ!」



「金城さん!」



高飛車な笑い声に天を仰ぐと、血塗られた巨大な金の斧を持った金城さんが空中に立って余裕の笑みを浮かべていた。



「お二人からの連絡が中々来ないと、風見さんが嘆いていらしたので、様子を見に来たのですわ」



「ありがとう〜〜〜〜!」



「フン、飽くまで風見さんの為ですわ。あなたに何か有ればあの人は悲しい顔をしますからね」



何時もは意地悪してきて苦手な金城さんだけど、こう言うの見ると根は優しい人なんだって思える....いつか仲良くなりたいな。



「幾ら助っ人が参上した所で無駄だ」



「我らが主の言う通り」



あの巨大な斧で後頭部を割られて平然と立ち上がるなんて....執念というか凄まじい意地を感じる。



「お二方、こいつらはワタクシ一人で十分。あの薄気味悪い仮面を倒して下さいまし」



「ありがとう、無茶しないでね!」



「優秀な私に無茶な相手といふ者は存在しませんわ」



金城さん特有のドヤ顔と自信はかなり頼もしいな。戦った時も手強かったし、勝つことを信じて任せるよ!!



「邪魔をするな、我らが役目は....」



「よい。その金髪女を血祭りにあげろ、さすれば冷血なる津神は水無は捨て置き春野 緋美華は絶望と憤怒に呑まれよう」



黄衣の指令に双子は真顔の侭、御意と頷いた。なにかが変だよ、良く分からないけど今まで戦った悪い能力者とは何かが違う。


今さそれよりも水無ちゃんを冷血呼ばわりした事に怒ってるんだけど。ヴォルフトも冷血なる死神とか言ってたけど、水無ちゃんは冷静だけど根は優しい娘で決して冷血なんかじゃないのに!



「水無ちゃんは冷血じゃないよ、貴方たちと一緒にしないで!」



「緋美華....」



「ふん。貴様らを倒し、仲間を皆殺しにしてから処刑してやるといふのもまた一興!」



「そんなこと....絶対にさせない!!」



もう何回目か忘れちゃったけど、本日最後の戦いが始まる。その相手は水無ちゃんの反応と私の勘からして今までで最強の敵!!




D.



「来い愚者どもよ、処刑してくれよう」



圧倒的な威圧感、殺意、余りに冷酷な指示に心を殺し切れず逃亡を測るも失敗した際の残虐な仕置き。全てが私にとっての “恐怖“ その者と言う相手、だけど!!



「水刃!」



「えええいっ!」



緋美華と出会ってから、前よりも確実に強くなったんだから。抱き締めれて勇気と力を貰ったんだから!勝てる!!恐怖を乗り越える時が来た....!



「甘いわ、その程度の強さで我に刃向かうなど!」



バカな、周囲の地面が抉られる程の水の刃と緋美華の火焔弾の直撃を受けて傷一つ付かないなんて! 奴も前より強くなって居るというのか!!



「触手百連激〜〜〜〜!」



「えーい獲ったど〜!」



「なぬぅ!?」



凄まじい速さと勢いで繰り出される触手による連撃を、緋美華は幾つか喰らいながらもその内の一本を掴んでぶんぶんと振り回し、黄衣を地面に叩き付けた!



「ほう、流石にやりおるか。だが今のは我が技の中で最も遅い技、言わば微風(そよかぜ)に過ぎぬ」



「きゃっ....」



黄衣は突風を起こし、捲れそうなスカートを緋美華が押さえた瞬間に彼女の胴体を疾風のごとき速さで貫き



「見えなかった」



「がはっ....ちょっと水無ちゃん、油断しちゃ駄目だよっ!」



「未熟者めが!」



しまった....緋美華のねこさんパンツ、じゃない余りの速さに見えない黄衣の技に驚愕し油断した隙を突かれ背後を取られてしまった!



「水無ちゃん!!」



「むっ!」



液状化しなければ、私の心臓が無数の触手に貫かれて居たところだった。元の状態に直ぐに戻って見ると黄衣の胴体に緋美華の焔の拳がめり込んでいる!



「津神 水無。貴様の最も愛する者を消してやろう!」



「いけない。離れて」



私が警告した時には遅かった、黄衣が両手の中に竜巻を発生させて緋美華を飲み込んでしまった。


バラバラになってしまったかもしれない。再生はするけど緋美華が死ななくても酷い目に遭うだけで辛いの。



「春野 緋美華よ、その竜巻の中で焔を使えば逆に焔の渦巻きとなり自身を苦しめるぞ」



「貴様!」



「まだ抗うつもりか....ぬぅうううん、鎌鼬!」



「くっ....」



痛みも感じぬ早さで私の腕を斬り落とすなんて。つ、強い....やはり私一人じゃ勝ち目は薄い!


けど緋美華は竜巻の中に閉じ込められてどうなっているか、あの中からじゃ幾ら叫んでも外に声が届かないから分からない。



「諦め受けよ、我に刃向かい、我の手から逃れた報いを」



「報いならあなたが受けるべき、罪なき人々を殺戮した罪の!」



黄衣の触手と私の錫杖が空中で交錯、衝撃でゴールポストやコーンが吹き飛び砂塵が巻き上げられる!!



「くはははは」



「っ....!」



肩から血を吹き出しながら地面に叩き付けられた私と対象的に、黄衣は無傷で着地に成功....やはり私じゃ奴に勝てないのか。



「むっ、我が仮面に皹が!」



すれ違い様に仮面を破壊できるくらいには戦闘力の差を縮められた、今まで緋美華と戦って来た事は無駄になっていない!!



「我が仮面を破壊するまでに成長するとは、流石は私が愛した者の姉だけ有る」



「何てことなの、お前は」



仮面が割れ遂に露出した黄衣の素顔、それは嘗て私を裏切り、無苦を引き取った女....



「須田....!!」



鳴り響き始めた雷鳴は、残酷なる運命の神が嘲笑う声だと言うのだろうか!!



つづく



サブタイ詐欺やんけ!


風といえば厨二に人気な属性ですね、昔は主人公に多かったイメージです。強いし格好いいですし、ワンパンで瞬殺された風キャラもいますが

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