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赫蒼の殲滅者  作者: 怪奇怪獣魔爾鴉男
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第13話「死角なき刺客」

ガバガバ百合能力バトルの本作品も13話目、やったぜ。

A.


いま目の前にいる軍服姿の女には見覚えがある。黄衣に仕えていた部下の一人、ヴォルフト....いや今の名は百狼牙盟か。



「何でこんな事したの!」



「緋美華、こいつは話を聞いても無駄な相手。ただサディスティックな欲求を満たす為にしたに決まってる」



彼女は服装が乱れてるとか靴下の長さが同じでは無いとか難癖を付けて鞭で部下をしばき倒していた。


その際の表情がまるでドラッグ中毒者みたいにイカれてて気持ち悪かったからサディストなのがバレバレだった。



「えっ、知り合いなの!?」



「知り合いたくて知り合った訳じゃない」



こんな変態と関わりたい人間がいるならマゾヒストかコイツを逆に屈服させたいと思う上位のサディストぐらいだと思う。



「サディスト呼ばわりとは心外だな。冷血なる死神よ」



「うるさい、その名前で呼ばないで!」



確かに昔はそう呼ばれていた、死の恐怖に負けて黄衣の命令に従い、感情を圧し殺し殺戮を繰り返す姿が、周りには冷酷な殺人マシンに見えていたのだろう。


そんな過去を緋美華だけには知られたくない。知られたなら嫌われてしまうに違いない....もしかしたら戦う事態に発展してしまう可能性もある。



「....そんなの嫌だから。気にしないで」



「うん、何か良く分かんないけど分かった!気にしないよ」



即答してくれた緋美華の透き通った海みたいな青い眼には疑いの色も一点の曇りも見られない。


彼女の丸い顔も明るい声も花畑みたいな香りも優しさも好きだけど、此の純粋な眼が一番わたしの心を惹き付ける。



「春野は貴様の過去を知らんと見た。貴様を倒した後じっくりと教えてやろうではないか」



「安心したよ」



「何故だ?」



「あなたじゃ私を倒せないから緋美華が私の過去を知ることは無い」



「傲慢だな....今は同胞の命令違反により気が立っている。貴様をなぶり殺してストレスを発散してやる」



態度はデカイ癖に器は小さい、私が最も嫌いで最も多いタイプの人種。こんな奴等ばかりだから世界は平和にならない。



「ヴァオオン」



「わわわっ!?」



「....っ」



今いる保健室の四隅から悪臭を発しながら黒い狼が出現、素早く私と緋美華の脇腹を爪で引き裂き血を噴き出させる。


だけど緋美華の傷は直ぐに塞がった、ここへ辿り着く前に濃厚な接吻を終えていたから。


その儀式から三時間は緋美華は不死身、どんな攻撃でも死なない....痛みは感じるけど。



「焔張塗、 相手は狼さんだから焔には怯えるはず!」



「馬鹿な奴だ」



「きゃあああ、痛ーい!!」



全身に白い焔を纏った緋美華にも黒狼は飛び掛かり太腿に噛み付く、焔が体に燃え移って焼け死んだけど。



「こいつら狼の皮を被ってるけど中身は全く違う何かだよ」



「ふふふ、百“狼“牙盟とは我が配下を狼と違えた貴様等のような節穴どもの付けた呼び名に過ぎん!」



「きゃあああああ、また噛まれたあああ!」



「痛っ....死ね、畜生」



今度は二匹の黒い狼が部屋の角から出現し、一匹は焔を纏った緋美華の肩に噛み付いて一匹目と同じく焼死。二匹目は私の脚に噛み付いて来たけど錫杖で頭を叩き潰してやった。



「動物なのに火を怖がらないなんて....」



「猫とかヒグマとか、火を怖がらない種類の動物もいる」



「そうなの!? 水無ちゃんのお陰で頭が一つ良くなったよ!」



緋美華に誉められると自然と口角が緩んでしまう、お世辞などではなく本心で言ってくれていると分かるから。



「なら今度は頭が一つ無くなったよと言わせてやろう」



「頭が無くなっちゃったら言いたくても言えないよ」



「言えてる」



狼....の皮を被った化け物は酷い悪臭を発しながら現れる故に察知するのは容易い。


けど回避するのは困難、此処に来るまでに遭遇した黒狼どもの何倍も素早く攻撃して来る!




第13話「死角なき刺客!」


B.


「防ぐだけじゃ駄目だよ、えええい!!」



実際は化け物で狼じゃないけど分かりやすいから黒狼と呼ぶ、に噛み付かれ引っ掛かれ乍も、緋美華は握り締めた拳に焔を纏い、ヴォルフトに殴り掛かる。



「白き焔を纏った拳、当たれば私は一巻の終わりだが。やれ、我が僕たちよ!」



「グゥオオオ」



次々と黒狼が現れヴォルフトの前に重なり壁となった、緋美華の拳は本来の標的では無く、その生きた黒い壁を粉砕する結果に。



「我が配下は百を超える。再び私に飛び掛かって来ようとも同じ結果になるだけだぞ?」



「酷いよ、仲間を盾に使うなんて!」



「常日頃から人間や家畜の肉を餌として与えている。その恩を返して貰ったに過ぎん」



生きる為に餌を貰っても恩返しに死ぬんじゃ本末転倒。でも数多くの黒狼(ペット)に、毎日エサをやっていたのには少しだけ感心できる。



「はあああああああ」



「遠距離攻撃だろうと同じ手段で防ぐのみ!」



火焔弾も先ほどの焔の拳と同じく、壁を粉砕するもヴォルフトには当たらずに終わった。



「火事になったらお願いね、水無ちゃん」



緋美華はスプリンクラーを破壊して部屋の四隅に焔を盛らせる。成る程これならば....!



「これなら出てきた瞬間に我が配下は焼け死ぬな、まあ良いが」



「あなたは大量の餌を与える手間を掛けてまで育てるのに何でこんな!」



「愚問。戦いの際、この様に使う為に飼育しているのだよ」



冷酷な答えに緋美華の表情が険しくなる、彼女の甘さに愚かさと愛しさを感じずには居られない。



「わわ、上からっ!?」



今度は火の届いてない天井の四隅から黒狼が落下してきた、さっき襲い掛かって来た個体よりも遅いから対処は容易だけど。



「あらゆる角度から狼擬き(猟犬)を出現させる喰らわせる此の戦法を得意とする為に私はティンダロスと呼ばれるのだ!」



「角度から現れるのなら」



時計の針や消しゴムなど、目に付いた出来るだけ角度がつく物を水の刃で消滅させた。あとは....!



「わわっ!?」



「む?」



水で出来た球体、言わば巨大なシャボン玉の中に保健室全体を包みこんだ。これならヴォルストに黒狼の壁を築かれようとも彼女ともども窒息して死ぬ!



「うわっ、息が苦しっ....!?」



「これで少し我慢して。アイツが窒息死するまで」



酸素補給の為に緋美華にキスをすると、その髪よりも彼女の顔が赤く染まっていく。(うぶ)で可愛いらしい反応だ。



「甘い考えだな」



ヴォルフトが薬品戸棚を鞭で叩き割って私達の足元に投げたと思うと、その破片から銀の弾丸と黒狼が出現し緋美華の腹部が撃ち抜かれ私は首筋を噛み付かれた。



「が....はっ...」



「あう....」



私が大ダメージを受けた事で水の球体は霧散、黒狼の水死体ともども床に叩きつけられた。駄目だ....体が動かない。



「くくく、かのアトナクアを倒した二人も私の前では無様な物だな!」



「きゃあああああああああ!」



「緋美華!」



ヴォルフトは倒れた緋美華の頭を掴み上げると鞭を取り出して執拗に顔面を叩き始めた。あの薬物中毒者が薬物を接種する時みたいな表情で!



「良い悲鳴だ!聖歌(コラール)よりも耳の保養になる」



「痛いよ辞めて、辞めてええええ」



ヴォルストにとっての緋美華の悲鳴は聖歌に勝るらしいけど、私は聞きたくない!! 愛する人の苦痛の声なんて!



「辞めろ。やるなら私をやれ」



「心配しなくとも直に貴様の番だ。見ていろ」



「うあ....」



「きゃあああああ!」



鞭で束縛された緋美華を、狼たちが取り囲み一斉に注射針の様に鋭い舌を突き刺す。激しい痛みに悲鳴を上げると彼女は頭をかくんと垂らして動かなくなってしまった。



「....あ、ああ...」



「貴様の過去を教えるの忘れてたな」



勿論、死んだ訳じゃない....けれど首、腹部、両腕両足、背中、を同時に刺された痛みは想像を絶する。今は気絶してるけど起きた時に戦う事が怖くなっていたら困るな。



「う、うう....」



「どうした大事な仲間を倒されて絶望....ぎゃああああああああ!!」



ヴォルフトは断末魔の悲鳴を上げて倒れた。実は戦いながら密かに薬品棚に置いてある薬品を調合し、あらゆる物質を溶かす溶解液を作っていた。


そして完成したいま、溶解液を残った力を振り絞りヴォルフトの背中にぶっかけて倒す事に成功したのである。



「作成成功」



「えへへへ、すっごーく痛かったけど。時間稼ぎは成功したみたいだね」



緋美華が何喰わぬ顔で起き上がって微笑んだ、彼女は私の意図に気付いていたのか。風見ひよりには何時もバカ呼ばわりされているが本当は頭が良いのでは。



「あの拷問から逃れられたのに、時間稼ぎの為に敢えて耐えていたの?」



「うん、私の焔は激熱だし本当ならあんな鞭すぐにドロドロだよ!」



「凄い」



いくら敵を倒す為とは言え逃れられる筈の苦痛から逃げずに耐えるなんて我慢強い娘。もしかしたら辛い事が有っても我慢してしまわないか心配になってきた。



「ヴォルフトは倒したんだ。じゃあ確保させてね」



「お疲れ様」



そう言いながら制服から見て此の学校の生徒と思われる女子二名が手錠を持って入って来た。



「石堀さんに三尋木さん!?」



「誰?」



「クラスメイトで友達だよ!お家が遠いから学校以外じゃあまり遊べないけどね」



緋美華の友達なら悪人じゃないと思うけど、何の用だろう。怪我でもしたのだろうか。



「えー元カノって紹介してよぉ。これは十点ですね」



石堀と呼ばれた女子の台詞に、わたしのあたまのなかはまっしろになった....と言うのは大袈裟だけど胸の内がモヤモヤする。



「嘘つかないで、信じちゃったらどうするの! 水無ちゃん、石堀さんは友達で元カノとかじゃないからね」



「良かった」



ホッ、心臓が止まる気分を提供して来るなんて石堀は警戒して接しないといけない人間に認定だ。



「ゴメンね、石堀は馬鹿なんだよ」



「これでもテストは毎回ぜーんぶ九十点代だからバカじゃないよーだ、三尋木ちゃんの私の紹介は五点ね」



石堀とは反対に三尋木は真面目、なんだか緋美華と風見ひよりの関係性に少し似ている気がする。



「ところで二人ともヴォルフトを確保って」



「ああ、それはつまりこういうこと」



三尋木が気絶しているヴォルフトに手錠をかけ、縄で縛り始めた。ドラム缶に詰めて日本海にでも沈めるつもりなの?



「三尋木さんがヴォルフトを逮捕しちゃったよ!?」



「えへへ....実は私たちはぁ、対悪い能力者専門の警察官なのです。知らなかったなんてマイナス十点!」



....知るワケ無いだろ、そんな事。



つづく




一昨日くらい、雑魚にしてはなんかpv数凄いあっててテンションがー!!これも皆様のお陰です!

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